The Piper at the Gates of Dawn - 夜明けの口笛吹き -
1967年発表のPink Floydのデビュー・アルバム
音楽性はプログレッシブ・ロックというより、完全にサイケデリック・ロック発売時の邦題は" サイケデ
リックの新鋭 "というタイトルだった
アルバムのタイトルはケネス・グレアムの児童文学作品『 たのしい川べ 』の第7章の題名から拝借した
ものである
アルバム収録曲の11曲中、8曲をシド・バレットが作っている
そのため、後の傑作" 狂気 "や" ザ・ウォール "の音楽性とは大きく異なっている
このアルバムのレコーディングのとき、すでにシド・バレットは過度のドラッグ( LSD )摂取により正常
な状態ではなかったが、バンドはシド・バレットを中心としてなんとか制作を乗り切った
§ Recorded Music §
1 Astronomy Domine - 天の支配
2 Lucifer Sam - ルーシファー・サム
3 Matilda Mather - マチルダ・マザー
4 Flaming - フレイミング
5 Pow R.Toc H - パウ・R トック・H
6 Take thy Stethoscope and Walk - 神経衰弱
7 Intersteller Overdrive - 星空のドライブ
8 The Gnome - 地の精
9 Chapter 24 - 第24章
10 Scare Crow - 黒と緑のかかし
11 Bike - バイク
§ Band Member §
Syd Barrett - シド・バレット( Vo,G )
Roger Waters - ロジャー・ウォーターズ( Vo,B )
Richard Wright - リチャード・ライト( Key )
Nick Mason - ニック・メイスン
童話を基にした幻想的・抽象的な歌詞と、トリップ感漂うサウンドが見事に合致している
" 天の支配 " " マチルダ・マザー "のように独自の世界観を描いた楽曲が並ぶ
また、シド・バレットの才能はコンポーサーとしてではなく、ヴォーカリストやギタリストとしても
実力を発揮している
" 星空のドライブ "は、ライヴでは30分以上にわたって演奏が繰り広げられた
アルバム制作中、ピンク・フロイドのレコーディングの様子を窺いにきて、バンドの演奏を耳にしたポー
ル・マッカートニーが" 彼らにはノックアウトされた "と語ったという逸話がある
それでも、アンダーグラウンド時代から交友のあったピート・タウンゼント( ザ・フー )は、" ライヴ
での本来の力が発揮されていない "と、コンパクトにまとめようとしたプロデューサー側の制作方針
を批判している
シド・バレットが生み出すどこか歪んでいて、ポップな音は唯一無二のものであり、このアルバムは完全
にシド・バレットが主導権を握り制作されたアルバムでもある
向こうの世界へ逝ってしまったシド・バレットが、唯一こちらの世界と繋がっていたときに残していった
アルバム、そしてギリギリの精神状態で生み出した音
表層を流れるメロディは非常にポップで、ともすれば微笑ましささえ併せ持つものだけど、そのことが
かえって曲の底流に流れる病的な本質を浮き彫りにしていて、非常に不気味に感じられる
ロジャー・ウォーターズの手による露骨にサイケデリックな" 神経衰弱 "が一番安心して聴いてられる
バイクのラスト" これで終わりだと思ったら大間違い "とばかりに、襲いかかる破滅的ノイズは、こんな
とんでもない曲を作ってしまうシド・バレット自身の未来を暗示していたのかもしれない
デビュー作としては、上々の全英6位を記録
ローリング・ストーン誌が選んだオールタイム・グレイテスト・アルバム500は347位オールタイム・
ベスト・デビュー・アルバム100においては47位にランクインしている