どこまでも続く地平線、満天の星空の中にひときわ輝く南十字星
オーストラリアを舞台にSebastian Hardieが奏でた幻想のシンフォニー
シドニー出身のオーストラリアン・ロック・グループ、セバスチャン・ハーディがこのアルバム" 哀愁の
南十字星 "をもってデビューしたのは1975年、それから間もなく日本でも発売された
デビューしたころの1970年代半ばのオーストラリアは、まだまだ国に対す関心が薄くそれこそ昔イギリス
の植民地だったという大陸国という印象しかなく、せいぜいコアラやカンガルーなど珍しい有袋類動物が
生息するといった程度の知識しか一般的には持っていなかった
もちろん音楽という点に関しても、過去にビージーズやオリビア・ニュートンジョンといったいくつかの
大スターが生まれ育った国という以外は、これといった話題はなく全くと言っていいほど未知の国という
イメージでしかなかった
そんな時代のオーストラリアからデビューしたセバスチャン・ハーディは、当時はいかなるグループで
あるかその実体は殆どわからず、日本でもスター扱いを受けるほど脚光を浴びたわけではない
ただ、一部のマニアから異常なまでに熱狂的な支持を得たことから、今もなお彼らの名前は伝説的な
存在として語り継がれている
§ Recorded Music §
1 Glories Shall Be Released - グローリーズ・シャル・ビー・リリースト
2 Dawn of Our Sun - 夜明け
3 Journey Through Our Dreams - ジャーニー・スルー・アワー・ドリームズ
4 Everything is Real - エブリシング・イズ・リアル
5 Rosanna - ロザンナ
6 Openings - 哀愁の南十字星
§ Band Member §
Mario Millo - マリオ・ミーロ( G,Vo )
Peter Plavsic - ピーター・プラウジック( B )
Alex Plavsic - アレックス・プラウジック( Ds )
Toivo Pilt - トイフ・ビルト( Key )
おそらくヨーロッパ系移民の子供たちと思われる4人によって、70年代初頭に結成されその後ルー・
リードを始めとする全英アーティストたちのツアー・サポートを経て、アルバム" 哀愁の南十字星 "で
ようやくデビューを飾り、全豪No.1を獲得したという
セバスチャン・ハーディ…彼らは結成当初こそ、どこにでもよくありがちなロックン・ロールを主体に
演奏するグループだったが、デビューを前にして突如変貌" 哀愁の南十字星 "を発表したころには、オー
ストラリアの人気音楽誌『 RAM 』や『 Juke 』の編集者たちがこぞって" シンフォニー・ロック "を
絶賛する存在となり、その後行われたサンタナとの全豪ツアーでは、対等な立場で共演するほどに
なっていといわれる
セバスチャン・ハーディは、まるで4人からなる小編成のオーケストラのようだった
マリオ・ミーロが奏でる艷やかなギターの旋律を主役とする幻想的かつ劇的なシンフォニー・ロックは、
まさに究極的な" 美 "を追求したといえる
しかし、グループはこの" 哀愁に南十字星 "ともう1枚のアルバムを残し、間もなくその姿を消滅している
( 後に再結成、ニュー・アルバムリリースも… )
確かにセバスチャン・ハーディの音楽は、世にプログレッシブ・ロック・ファンの心を刺激するものだが
ここであえて言わせてもらうとすれば、これをそういう人たちのものだけにさせておく手はない
Four Moments - 哀愁の南十字星 -
このアルバムは、音で描かれた美しきオーストラリア大陸だ
オープニングを飾る" グローリー・シャル・ビー・リリースト "を含め、" 夜明け "、" ジャーニー・アワ・
ドリームズ "の3曲からなる18分にもおよぶ組曲を始め、" エブリシング・イズ・リアル " " ロザンナ " 、
そしてクライマックスの" 哀愁の南十字星 "…
そこに存在するのは、自然の恵みに溢れたオーストラリアの朝から昼、さらに夜に至るまでのゆったりと
した時間が流れていく中で、刻一刻と変化していく風景だセバスチャン・ハーディの美しいシンフォニー
は、そんな風景を想像させ、またそんな風景に充分すぎるほどマッチする
まさしくこのアルバム" 哀愁の南十字星 "は、彼らが生んだ、またオーストラリアのミュージック・
シーンが生んだ最も美しい遺産というべき作品だ