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Ultimate Music Album - 極 -


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冨田 勲 - Pictuers at an Exhibition:展覧会の絵 -

幻想的なシンセサイザーが聴き手を魅了する
1975年リリース" Pictuers at an Exhibition - 展覧会の絵 -

 

独特の" 創作機能 "に加えて各種楽器音や人声、自然音、人工音などの" SE模倣機能 "を数限りなく

備えた" モーグⅢ "は、" 音の建築物 "であるところの楽器であるよりは、むしろそれを作り出すための

成功複雑な" 工具 "であると考えられていた

従って、それを使いこなす名匠マニピュレーター各人の個人の好みが、実にハッキリと最終的にテープ化

された作品に出てきていた

だから同じモーグⅢを駆使しても、冨田勲のそれは" スイッチト=オン・バッハ "シリーズのワルター

カルロスや" 21世紀のモーツァルト " " ショパン・ア・ラ・モーグ "のハンス・ウールマン、そして" スイ

ッチト=オン・バカラック "シリーズのクリストファー・スコットなど海外のマニピュレーターとはまるで

別物の観があるのも当然で、楽器や人声による冨田勲の劇伴音楽の特徴が" 電気 "の該博な知識と理想的な

結合を遂げ見事に開花したものだった

 

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§ Recorded Music §

ж Promenade - プロムナード
ж Gnomes - こびと
ж Promenade - プロムナード
ж The Old Castle - 古城
ж Promenade - プロムナード
ж Tuleries - チュイルリーの庭
ж Bydlo - ビドロ
ж Ballet of the Chicks Their Shell - 卵のからをつけたひなの踊り
ж Samuel Goldenberg and Schmuyle - サミュエル・ゴールデンベルグとシュミイレ
ж The Market Place at Rimoges - リモージュの市場
ж Catacombs,Con Mortuis in Lingua Mortua - カタコンブ
ж The Hut of Baba Yaga - バーバ・ヤーガの小屋
ж The Great Gate at Kive - キエフの大門

  

展覧会の絵

展覧会の絵

 

 

ロシア5人組の1人、モデスト・ムソルグスキー(1839~1881)の代表的なピアノ作品である組曲" 展覧会の絵

(1874) "は、友人で画家兼建築家ハルトマンの追悼展を観た印象を、10枚の絵とその間を歩く自らの

気分の推移を表す" プロムナード "によって構成して作品化したものだ

下って1892年" 管弦楽の魔術師 "モーリス・ラヴェル管弦楽編曲したものが、ほかに抜きん出た

名アレンジとして定評を得て以来、今日に至るまで世界のオーケストラのレパートリーとして定着し、

極めて頻繁に演奏されている

1971年には人気ロック・グループ、エマーソン・レイク&パーマーがこの" 展覧会の絵 "のロック化を

敢行し爆発的な話題を呼んだ

 

 

当時、奇しくも原曲が書かれてから、ちょうど1世紀に登場したこの冨田勲の" 電子音楽 "ともいうべき

" 展覧会の絵 "は、もちろん先のドビッシューの場合と同じくオリジナルであり、ピアノ曲を素材として

冨田勲の限りなく飛翔する自在なイメージをシンセサイズ( 合成・結合 )し定着したものであり

決してラヴェルオーケストレーションの電子音化ではあり得ない

従って、ピアノ原曲やラヴェル編曲管弦楽版に耳にタコができるほど、これまでに接してきた聴き手に

とっても、このアルバムを聴くと新鮮な" 未知なるもの "の魅力に金縛りとなり、一気呵成に聴き通さざる

を得なくなる

そこには、巧みにコントロールされブレンドされた抽象性と写実性が濃い情報密度で二層塗りされて

いるからである

 

そして単に音そのものの作り方だけではなく、それぞれ変化に富みかつ練り尽くされた" 音楽構成 "が

ピアノやオーケストラの" コンサート・プレゼンス "を忘れさせ、聴き手の想念を、メルヘンの世界を

虚空に乱舞させる

しかも、そこにはサウンド・クリエーター、冨田勲の" 音の哲学 "のみならず" 音による文明論 "さえも

見事に展開されている

例えば" サミュエル・ゴールデンベルグとシュミイレ "である

肥った金持ちの前者と、痩せて貧乏な後者という2人のユダヤ人は、原曲にしても、そして管弦楽編曲

ではなおさら増幅された貧富の力関係がコントラストを似って描写されていた

それが" 金脈問題 "などの追及が厳しく、またプロレタリアートの労働者や市民が団結する御時世とあって

この" 展覧会の絵 "では主客転倒、ゴールデンベルグは" 会社更生法 "適用の申請に踏み切った苦悩の

色濃きダメ社長といった態の頼りなさ、一方シュミイレの方は、高らかにインターを歌って詰め寄る

労働組合の精鋭に見立ててか集団化されているし、お子様向きの傑作は断然" たまごのからのついた

ひな踊り " だろう

" なぜ生まれたばかりのひなが踊りを踊るの? "という素朴な疑問に答えた冨田勲は、諸悪の根源

ドラ猫を起用した…ピヨピヨ騒ぐヒヨコと、それをかばって" ココココ‥ "と大奮闘する牝鶏、そして最後にドラ猫はリタイアし駆逐されてしまう…母は強し!

各プロムナードが、ピアノ原曲はもちろんとして、管弦楽版よりもさらに感情の振幅が大きいのも

モーグⅢの持つ多様多彩な表現力の御利益だと思う