ストレートなロックに乗って弾けるハスキー・ヴォイス
" 向こう見ず "な瞳の青年は、時代に応えるべく傑作を世に放った
Bryan Adams…誠に天真爛漫
思い切り伸び伸びとした環境をフルに生かして前作" カッツ・ライク・ア・ナイフ "以上のアルバムを
創ろうという意欲に満ちていた
その" カッツ・ライク・ア・ナイフ "のアメリカでのヒットで、ブライアン・アダムスという若手の
シンガー・ソングライターは一躍ロック・シーンに浮上してきたわけだが、状況的にはまさに今これから
飛び立たんとする若者特有の精気と野心を、小柄な身体いっぱいに漂わせていた
1980年代初頭、ロック界全体が不振といわれていた時期でもあり、特のアメリカのロック・シーンには
目立った新人もなく、新しいムーヴメントの息吹も感じられなかった時期、さらに世を挙げてテクノ・
ポップ時代とかで、俗にいう" ピコピコ・サウンド "が音楽界を席巻していた時期でもあった
そんな時代にギミックのないブライアン・アダムスの歌いっぷりに好感が持てたのではないかと思う
§ Recorded Music §
1 One Night Love Affair - ワン・ナイト・ラヴ・アフェアー
2 She's Only Happy When She's Dancin' - いかしたダンシン・ガール
3 Run to You - ラン・トゥ・ユー
4 Heaven - ヘヴン
5 Somebody - サムバディ
6 Summer of 69 - 思い出のサマー'69
7 Kids Wanna Rock - キッズ・ワナ・ロック
8 It's Only Love - イッツ・オンリー・ラヴ
9 Long Gone - ロング・ゴーン
10 Ain't Gonna Cry - 涙を吹きとばせ
§ Member §
Bryan Adams - ブライアン・アダムス( Vo,G )
Jim Vallance - ジム・ヴァランス( Per )
Kith Scott - キース・スコット( G )
Dave Taylor - デイヴ・テイラー( B )
Pat Steward - パット・スチュアート( Ds )
ブライアン・アダムスのようなタイプのミュージシャンの魅力を、文字で表現するのは実に難しい
" 素朴・素直 " " 飾り気のない " " ストレートな "などという形容を使っても、そのどれにでも当てはまる
ようでいながら、その実にどれも彼の魅力をズバリといい当てていることにならないもどかしさを感じる
し、すぐに記事のタイトルになりそうなスキャンダラスな面があるわけでもないし、さらにとびっきり
ファッショナブルなわけでもない
かといって、横文字言葉を並べ立てやすいアーティスティックな感覚でもなく、詰まるところは使い
古された言葉にしか頼るところがなくなる
だが・彼の魅力は" ライヴ "と言い切ってもいいだろう、ブライアンの魅力は" ライヴ感覚 "にあると思う
生のコンサートという意味のみでなく" ライヴ~生きる "感覚、歌詞の端々、メロディの端々、そして彼の
歌声そのものの中に" 俺は今、生きてるんだぞ! "という当時25歳の青年のそのままの姿が、原寸大で
投影されているように思う
当時のロック・シーン、例えば上等な絹や、人工加工された化学繊維的なものが主流を占めている中で
このブライアンの" 木綿 "の手触りはかえって新鮮に感じられるから不思議だった
このアルバム" レックレス "も従来のブライアン・アダムスらしさを全面に押し出した仕上がりである
どの曲も今すぐ目の前のステージで演奏されるときの情景が浮かんできそうなライヴ感覚を持っていて
その鮮度は100%、やれ音の録り方がどうの、フレーズがどうのと言う前に、自然に流れるままに
彼の歌声に身を任せればそれでいい
シングル・カットされた" ラン・トゥ・ユー "の思い切りの良さ、" ヘヴン "のセンチメンタルなメロディ
" キッズ・ワナ・ロック "のヘヴィなロックン・ロール、そしてティナ・ターナーとのデュエット曲
" イッツ・オンリー・ラヴ "などなど、必要以上に力を入れた気負いがなく、直球をスパッと投げつけて
くるような気持ちの良さ
要するにブライアンの等身大の音楽を、そのまま聴く側もそれぞれ等身大の自分のまま受け止めれば
いいのである
ブライアン・アダムス…屈折した伝説を背負っていなくても、華やかな色彩に満ちていなくとも、彼は
充分に聴く側を満足させることができるロックン・ローラーである
" 自分自身を退屈させないために、常に成長し続けたい "という言葉の通り、彼自信の音楽の中にその時
どきの自分を素直に映し出してくれさえすれば、彼は常に魅力的なロックン・ローラーであり続けるに
違いない