1969年にフランク・ザッパに触発されて、前身であるホワイト・クローヴァー・バンドが結成される
しばらくはメンバー・チェンジを繰り返しながら、カンザス州を拠点に活動、1972年ごろにフィル・
イハートがイギリスに音楽留学へ行った際、全盛期のプログレッシブ・ロックを目の当たりにして衝撃を
受けプログレッシブ・ロック路線に転向、1973年にバンド名をカンサスと改名し活動を始める
1974年に1stアルバム" カンサス・ファースト・アルバム "でメジャー・デビュー、翌年には2ndアルバム
" ソング・フォー・アメリカ "、3rdアルバム" 仮面劇 "を発表した
これら3枚はいずれもゴールド・ディスクを獲得している
1976年には" 永遠の序曲 "を発表、" 伝承 ( Carry On Wayward Son ) "のシングル・ヒットも生まれ
アルバムは同年中に100万枚を売る大ヒットとなった
1977年発表の" 暗黒への曳航 "からは" すべては風の中に ( Dust in the Wind ) "が大ヒットし、アルバム
そのものも同年中に100万枚に到達している
また、ライヴ活動も積極的に行っており、毎年のように100本以上のツアーをこなしている
1978年には、1977から1978年の3本のツアーで収録した音源をもとにライヴ・アルバム" 偉大なる
観衆へ "を発表、翌年に100万枚到達
1979年には" モノリスの謎 "、1980年には" オーディオ・ヴィジョン "とコンスタントにアルバムを発表
している
1981年、ソロとして活動することを決意したスティーヴ・ウォルシュがバンドからの脱退を表明する
バンドは新メンバーのオーディションを行い、新人のジョン・エレファンテがヴォーカル&ソング・
ライターとして加入する
新生カンサスとして1982年にアルバム" ビニール・コンフェッション "を発表、先行シングル" プレイ・
ザ・ゲーム・トゥナイト "が17位まで上がり、久々のヒットとなった
1983年の" ドラスティック・メジャーズ "は、よりポップでコンパクトにまとめられたアルバムだったが
売り上げの面では成功しなかった
バンドの象徴的存在だったヴァイオリンのロビー・スタインハートとケリー・リヴグレンが脱退、翌年に
バンドは、ベスト・アルバムの発売と同時に活動を停止する
1年後の1985年、スティーヴ・ウォルシュが復帰して、リチャード・ウィリアムス、フィル・イハートの
3人が中心となり、ギタリストにスティーヴ・モーズを迎えるなど新たな編成で活動再開、翌年に復活
アルバム" パワー "を発表、以降はオリジナル・メンバー以外、流動的なメンバーで活動を継続する
2000年にはオリジナル・メンバー全員でリユニオンも成し遂げ、14thアルバム" サホエア・トゥ・エルス
ホエア "を発表、2008年未発表音源を大幅に加えた発売30周年記念盤の" 偉大なる観衆へ "をリリース
2009年にはオーケストラと共演したライヴDVD" ゼアズ・ノウ・プレイス・ライク・ホーム "をリリース
これには旧メンバーのケリー・リヴグレンと、スティーヴ・モーズがゲスト参加した
2013年、旧メンバーが客演したオリジナル・ラインナップで、結成40周年記念ライヴを開催、2014年
には中心メンバーのスティーヴ・ウォルシュが再度脱退をする
2014年、ウォルシュの後任にロニー・プラット(Vo)とデヴィッド・マニオン(Key)が加入、2016年
16年ぶりの15thアルバム" 暗黙への序曲 "をリリース、ザック・リビ(G)が加入し7人編成に移行、また
この年、往年のアルバム" 永遠の序曲 "の発売40週年を記念し、同作品を完全再現したライヴ・ツアーを
開催した
∈ 音楽性とその影響 ∋
曲作り・サウンドの傾向としてはロックン・ロール志向の強いスティーヴ・ウォルシュと、プログレッ
シブ・ロック志向が強いケリー・リヴグレンの2人が中心である
スティーヴとロビーのツイン・ヴォーカル、リチャードとケリーのツイン・ギター、ケリーとスティーヴ
のツイン・キーボード、そしてロビーのヴァイオリンを加えた斬新なメンバー構成で、デビュー当時から
独自の音楽性を展開した
プログレとしてはイエスやジェネシスといったシンフォニック・構築的なバンドの影響を受けており
それらの先達との差別化として、ハード・ロック的でアグレッシブなリズム・セクションやバラエティに
富んだヴォーカル、マルチなリード楽器による重層的なアンサンブルなどを武器とした
また当時世界的に隆盛していたハード・ロックを中心として、フォーク、ヘヴィ・ブルース、カントリー
ラテンなど非常に雑多なアプローチを盛り込んだ、洗練されていながら泥臭いというアメリカン・ロック
の両端が同居するサウンドも大きな特徴である
デビューが同年だったカナダのラッシュや、本国の後続であるドリーム・シアター、スポックス・
ビアードのように、変則的なリズムを自然に聴かせるアレンジも先進的であった
アメリカにおけるプログレッシブ・ロック、ことにブリティッシュ・プログレの模倣ではない音楽性を
確立したパイオニアとして、スティクス、ジャーニー、ボストンらと" アメリカン・プログレ・ハード "
のバンドとして並び称され、後世に与えた影響は少なくない
例えば" 伝承 "をカバーしているイングヴェイ・マルムスティーンは" 偉大なる観衆 "を聴いて大きな
衝撃を受けたといい、「 それまではアメリカのバンドではスティクスをよく聴いていたんだけど、
カンサスを知ってからは僕の中でスティクスはかなり小さな存在になってしまったよ 」と述べている
そのほかにもドリーム・シアターが" 伝承 "を、サラ・ブライトマン、スコーピオンズが" すべては風の
中に "をカバーしている