A&Mレコードが自身を持って送り出した" Ali Thomson "
1980年のデビュー作" Take a Little Rhythm - 恋はリズムにのって - "
アコースティック・ギターの歯切れのいいリズムに絡むソプラノ・サックスのイントロダクションで
始まるタイトル曲" 恋はリズムにのって "は、当時少年時代の面影を残した21歳の青年があらゆる面で
ただならぬ才能の持ち主であることをはっきりと示していたし、派手な話題や写真などの助けを一切
借りずに人の心を掴んでしまえる魅力の持ち主であることを理屈抜きで物語っていた
21歳という若さながら、センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドがいたマウンテン・
レコードでの下働きの仕事から数えると、丸5年は音楽業界で暮らしてきたアリ・トムソンは、その
キャリアを充分に生かし、とてもこのアルバムが初めてのレコーディングとは思えないくらいに
完成度の高い音楽を作り上げた
§ Recorded Music §
1 Take a Little Rhythm - 恋はリズムにのって
2 Saturday Heart Breaker - 土曜日の恋人
3 Fools' Society - 誘惑の街
4 We Were All in Love - みんな恋してた
5 African Queen - アフリカの女王
6 Live Every Minute - 今日この日を
7 Jamie - ジェイミー
8 Page by Page - 人生は夢のキャンパス
9 The Hollywood Role - ハリウッド・ロール
10 A Goodnight Song - グッドナイト・ソング
" イギリスの新聞に出ていた記事をもとに書いた "という" ジェイミー "のメロディとサビの部分の
コントラストの付け方、リズムの作り方がアリ・トムソンの実兄のタギー・トムソンがベーシストで参加
スーパートランプを思わせる" みんな恋してた "
また、アリがセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドのギタリストとしてイギリスでは高い
人気を博していたヒュー・マッケンナと3年半ほど前に書いた" 宗教について歌ってる "という" ハリウッド
ロール "は、アリの大好きなスティーリー・ダンに通じる高度なアレンジがなされている
女性コーラスの使い方や、ピアノからギターにソロが引き継がれていくときに被ってくるシンセサイザー
のウラメロなど、21歳の新人とは思えない卓越したセンスを感じる
イギリス・スコットランド・グラスゴーで生まれ、5歳のころから兄タギーたちと一緒に歌い始め、
10代の初めごろにはアマチュア・バンドの花形ギタリストだったという
アリ・トムソンが真面目に曲を書き始めたのは4年くらい前のことで、グラスゴーからロンドン、
カリフォルニア、ロンドンと4年足らずのうちに居を転々とした
当時、" 1980年の今、周りに何が起きているのかを知らなくちゃいけないと思う、古くはなりたく
ないし、新しいものでありたい "と答えていたが、きわめてオーソドックスなサウンド作りでありながら
新鮮な輝きがあるこのアルバムは、そのアリの答えをすでに現実のものとなっていることを理屈抜きで
教えてくれた
また、アリ・トムソンが" アフリカを想像して書いた "という" アフリカの女王 "などは以降のサウンドの
ひとつの方向性を示しているようでもあった
アリ自信とエンジニアのジョン・ケリーによってプロデュースされたこのアルバムでサックスやフルート
の卓越したプレイを展開、サウンド作りの上で大きな役割を担っているデイヴ・ロシェのブラス・
アレンジもいいし、ほかの曲でもそうであるがアコースティック・ギターが本当に上手く使われている
アリ・トムソンは今後の成長、活躍が楽しみなアーティストだった
常に" 動 "を求めてやまない若者のスピリットを持っていたアリは、いいと思うのはどんどん吸収し、
自分のものとして取り込んでしまう力を持っていた
また、これはきわめて重要なことだが、アリ・トムソンは音楽の何たるかを完璧に知り尽くした
アーティストでもあった
ニュー・ウェイヴ系のアーティストとは違った意味で、ポピュラー・ミュージックの世界の" ニュー・
ジェネレーション "であったことに間違いはなかった