世紀の名作、EAGLES 1976年リリースの" Hotel California "
世界的センセーションを巻き起こしイーグルスの人気を決定的なものにした名盤
" 呪われた夜 "から1年4ヶ月…イーグルスのアルバムがついに姿を現した
" ホテル・カリフォルニア "という何となく郷愁を誘うようなアルバム・タイトル
1972年のイーグルスは" 爽やか "とか" フレッシュ "とか、そんな形容詞がピッタリのカリフォルニア・
バンドだった
明るいメロディ・ライン、ファルセットのハーモニー、青年らしさを感じさせる歌詞、全てが未来に
向かっていた
しかし、このときのイーグルスはどうだろう
あまりに生々しく、あまりに大人であり、成熟した肉体を誇示してやまない5人のミュージシャンの
集まりとなっていた…それは" 呪われた夜 "から始まっていた
さらにジョー・ウォルシュの加入がバンドの姿勢に大きな影響を与えている
オーリアンズ、ドゥビー・ブラザーズ、リトル・フィートなど人気の差はあれど、ほとんどキャリアを
同じくするこれらのバンドの活躍ぶりが、イーグルスの音楽活動に力強い刺激になっていたことは
この" ホテル・カリフォルニア "に明らかに出ている
§ Recorded Music §
1 Hotel California - ホテル・カリフォルニア
2 New Kid in Town - ニュー・キッド・イン・タウン
3 Life in the Fast Lane - 駆け足の人生
4 Wasted Time - 時は流れて
5 Wasted Time ( Reprise ) - 時は流れて ( リプライズ )
6 Victim of Love - 暗黙の日々
7 Pretty Maids All in a Row - お前を夢見て
8 Try and Love Again - 素晴らしい愛をもう一度
9 The Last Resort - ラスト・リゾート
§ Band Member §
Don Henley - ドン・ヘンリー( Vo,Ds )
Glenn Frey - グレン・フライ( G,Key,Vo )
Don Felder - ドン・フェルダー( G )
Joe Walsh - ジョー・ウォルシュ( G )
Randy Meisner - ランディ・マイズナー( B )
ホテル・カリフォルニア:40周年記念エクスパンデッド・エディション
- アーティスト: イーグルス
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: CD
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イーグルスのかつてのあの" 優しさ、爽やかさ "を期待すると多少の不満が出る
しかし、この官能の円熟はアメリカン・ロックの歴史にかつてなかったものだと思う
エルビス・プレスリーが表現した" 性 "とイーグルスが表現する" 性 "は単なる時代の経過というタテの
流れをはるかに超越している
ロックがロックとして成立するために、最低限必要な衝動とテクニックがギリギリの許容範囲で
収められている
もし、彼らの官能の喘ぎがもうひとつ大きければ、イーグルスはロックのリミットを超え、はるか宇宙の
彼方に向かってしまう
そういった意味では、このアルバムは完全にプログレッシブ・ロックと呼べる種類のものだと思うし
ピンク・フロイドが切り開いた" 魂のかたち "を確実に引き継いでいる
デビューからずっとリード・ギタリストとしてイーグルスの泥臭さの部分を受け持ってきたバーニー・
レドンがグループを抜け、代わりにジョー・ウォルシュの加入が発表されたとき、イーグルスの第1期
黄金時代の終焉を知る
" 呪われた夜 "は、その来るべき第2期黄金時代のプロローグといえる
そして、この" ホテル・カリフォルニア "は、その第2期の第1章であった
シングルになった" ホテル・カリフォルニア "の歌詞にはいろいろな解釈がある
" spirit "解釈
主人公がホテルのボーイ長に対して注文した自分好みのワインがなく
We haven't had that spirit here since nineteen sixty nine…
( そのようなお酒はこちらにはご用意しておりません、1969年以来… )
と返答された、という一説が有名であり" spirit "という言葉を"(蒸留)酒 "と" 魂 "との掛け言葉に用いて
当時のロック界を揶揄したものであると解釈されることが多い
これは、ウッドストック・フェスティバルなどの大規模なコンサートが1969年以来行われるようになり
これ以降のロック界はいわゆる産業ロックといわれる商業至上主義に転向していき、アーティストの
スピリット( 魂 )など失われてしまった…と暗喩していると解釈するものだ
また、ドン・ヘンリーは" ワインはスピリット(蒸留酒)ではないのでは "のインタビューに" あなたが
最初でもないが、完全に歌詞に解釈を間違って比喩を見落としている…歌詞のその部分は酒とはまったく
関係がない社会政治的メッセージである "と述べている
ラストの解釈
歌詞の最後は、こんな環境に居続けると自分がダメになると気づいた主人公が出口を求めてホテル館内を
走り回っていた際に警備員にたしなめられ
We are programmed to receive.You can checkout any time you like,but you can never leave!
( 我々は客を受け入れるように仕向けられているんだ 好きなときにチェックアウトはできるが決して
立ち去ることはできないんだ )
という印象的な言い切りの言葉で終わり、直後に続くフェルダーとウォルシュのギター・ソロと、
そのフェード・アウト効果により聴き手に深い余韻を与える構成になっている
また" checkout "は、北米口語でしばしば" 自殺する "の遠回しな表現で用いられているので、この一節は
" 死ぬまで逃げられない "と掛け言葉になっていると解釈することもできる
" ホテル・カリフォルニア "…男と女の人生ホテル
いつでもチェックアウトできるんだけど、一度足を踏み入れたら逃げ出すことができない男と女の
愛憎の監獄
甘酸っぱい退廃を感じさせるトータル・コンセプトは、あのプロコム・ハルムの名作" グランド・
ホテル "を連想させる…ヤシの木が高くそびえ立つカリフォルニアの石造りのホテル
イーグルスは、そこに閉じ込められた乾いた心を知っているかのようだ
このアルバム全体にいえることだが、非常に象徴的だけれどイギリスのロックと共通する何かが
イーグルスの中で大きく燃え上がりつつあるようだった
曲全体の構成が起伏に飛んでおり、しかも単純なものにだけ許された素朴な感動を素直に呼び起こす
ことのできる名盤である