カルロス・サンタナを始めとする豪華メンバー
オシャレなサウンドの中を遊泳するベース・ソロの魅力
スタンリー・クラーク、平べったくいうともっともフュージョンした男である
ジャズ、ロック、ソウル、ポップスの互いに深い融合、という意味でフュージョンという形容詞が
使われてきたがそういう意味では、このスタンリー・クラーク、ミスター・フュージョンと呼んで
ふさわしい人物の最右翼にいたことは間違いなかった
その巾広い感性と表現力、ベーシストではリズム・マンであり裏方、というこれまでの慣例を破った
トータル・アーティストぶりを語ればキリがないが、そうした特性は2枚のアルバムを例にとっても
わかる
ジョージ・デュークとの完全な双頭コラボレーションによる" クラーク・デューク・プロジェクト "では
レニー・ホワイト(ds)、チャカ・カーン(vo)、そしてスタンリーといった若い世代のアーティストにも
こうしたジャズの下地があることに驚いた人も多かっただろう
そして、この" ストレート・ドライヴ "は、そんなスタンリーの第2段ソロ・アルバムである
§ Recorded Music §
1 Straight to the Top - 気分はストレート
2 Let Me Know You - レット・ミー・ノウ・ユー
3 You Are the One for You - 僕だけの君
4 I Just Want to Be Your Brother - ブラザー
5 The Force of Love - 愛の魔力
6 Play the Bass - プレイ・ザ・ベース
7 Secret to My Heart - シークレット
8 New York City - ニューヨークの回想
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アルバムは、ファンク・ナンバーあり、インストゥルメンタルのアプローチあり、ドリーミーなバラード
あり、ハード・ロック的感触あり、またクラーク・デューク・プロジェクトの延長線上にある明るい
ブラック・コンテンポラリー的なナンバーもありで、スタンリーに期待する要素のほとんどが盛り
込まれたエンターテイメントに満ちたものである
そして、かつて率いた" スクール・ディズ "のときのチャールズ・ジョンソン(g)やサイモン・フィリップ
(b)、スティーヴ・バッハ(b)によるレギュラー・バンドのように、固定メンバーを軸にしたコンセプト
ではなく、新旧の友人とのセッションを軸にしているのが特徴だ
その中には懐かしい名前もあれば、カルロス・サンタナのように新しい友人の名もあり、これまで
試していない楽器をスタンリーが手にしているシーンもあって、これはリラックスしたムードの中にも
次のスタンリーのサウンドを垣間みせる実験的要素も盛り込まれたアルバムだった
アルバムのオープニングは" 気分はストレート "で、アルバムと同時にシングル・カットされたキャッチー
なナンバーであり、このアルバムがヴォーカルを主体にした内容であることを代表するナンバーであり
クラーク・デューク・プロジェクトの際にみせた明るいブラック・コンテンポラリー、あるいはAOR的
な曲調にも通じるのでスタンリーは通常のベースのほか、ピッコロ・ベース、ギターも扱っているが
何といっても彼のリード・ヴォーカルが主役
そしてカルロス・サンタナのギター・ソロがよく歌っている
雨と雷のサウンド・エフェクトがイントロとなった" 僕だけの君 "、スタンリー自身のギターもソフトで
メロウな美しいバラード・ナンバーになっている
" ブラザー "ではスタンリーのベース、サンタナのギターがそれぞれに、あるいは交錯してパートを取るが
タイトル通りに" ブラザー "と呼び合っているようにソウルフルに展開する
シングルのB面にも起用された" 愛の魔力 "は、ダンサンブルなディスコ・ビートをもったポップな
ナンバーといえる
マイケル・セムベーロのエフェクティヴなギターが効いているが、このポップなリズムをリードして
いるのは、元サンタナのレオン・'ウンドゥーグ'・チャンクラーのドラミングである
" シークレット "は、もっともロック的なナンバーでスタンリーのベース・ソロ、リード・ヴォーカルも
もちろんだが、ワウ・ワウ・ペダルやヴォイス・モジュレーターまで使ってすべてのギターをアンサン
ブル的に操るプレイも聴きどころ、グレッグ・フィリンゲインズのシンセサイザーとレオン・チャン
クラーのドラムスが好サポートだがこの2人、グレッグのソロ・アルバム" 処女航海 "でもチームを
組んでいた
さまざまなプロジェクトでどんな音楽を作り出してくれるか、そんな期待を嫌が上にも盛り上げてくれた
中身の濃いソロ・アルバムであった