KANSASというバンドが新たなる道、あるべき姿を
模索し始めたスタート地点にある重要な作品
未知の古代文明の謎とされるモノリスは、古代インカ帝国の遺産に登場する碑である
1枚の岩で作られたその碑には、高等天文学の技術や宇宙船のような図が記されていることでも知られて
いる
インカ帝国は中南米に住む先住インディアン種族が形成した文明で、学者デニケンはこの文明を
" 宇宙人文明 "だと提唱し話題を集めたことがある
カンサスは映画『 2001年宇宙の旅 』の大ファンだったらしいが、この映画の中に登場するモノリスは
やはり宇宙人文明説を基盤として、そのモノリスから特殊なウェイブが放射されて我々人類が文明を持つ
に至ったという歴史が流れ、猿人の時代から未来に向けて描かれていた
このアルバムのテーマは、そのモノリスにスポット・ライトを当てながら、現代文明の病巣をえぐると
いったカンサスらしい展開になっている
§ Recorded Music §
1 On the Other Side - オン・ジ・アザー・サイド ~ 謎の沈黙 ~
2 People of the South Wind - まぼろしの風
3 Angels Have Fallen - 堕ちてきた天使
4 How My Soul Cries Out for You - 遙かなる情念
5 A Glimpes of Home - 故郷への追想
6 Away form You - アウェイ・フロム・ユー
7 Stay Out of Trouble - ステイ・アウト・オブ・トラブル
8 Reason to Be - リーズン・トゥ・ビー
§ Band Member §
Steve Walsh - スティーヴ・ウォルシュ( Vo,Key )
Kerry Livgren - ケリー・リヴグレン( G )
Robby Steinhardt - ロビー・スタインハート( Vio,Vo )
Dave Hope - デイヴ・ホープ( B )
Phil Ehart - フィル・イハート( Ds )
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アルバム・カバーがまた強烈なインパクトを与えている
宇宙服を着たインディアンは、現代の白人文明が崩壊した近未来を描いているようにも見えるし、
見開きジャケットには崩壊した都市で生き続けるインディアンの姿が描か"Ghost Dance Chant "の詩が
記されている
インディアンたちが祖先の霊を呼ぶときにモノリスを前にして踊りながら歌う詩である
カンサスは迫害され続けるインディアンが破壊、崩壊された未来に再び平和な共存文明を築くという
テーマでこのアルバムを制作している
このアルバムが制作されたのは1979年だが、確かに1990年代には環境汚染、核の問題が深刻化して
いるわけで、カンサスの描いたストーリーは確実に現実化していた
" まぼろしの風 "に代表される本作の歌詞も神秘的で、なかなか興味深い
この" まぼろしの風 "はシングル・カットされて全米チャート23位まで上昇していたし、アルバムも
最高位は10位だった
" モノリスの謎 "はカンサスにとって初のセルフ・プロデュースとなったが、その後スティーヴ・
ウォルシュ、ケリー・リヴグレンがソロ・アルバムを制作することを考えれば、このアルバムの持つ
意味は大きい
また、カンサスとしての次のアルバムが" オーディオ・ヴィジョン "というテーマそのものがモダン化する
わけでカンサスの独自のファンタジーに満ちあふれたイデオロギーは、この" モノリスの謎 "を契機に
大きく変化することになる
サウンド的には全体的にコンパクトにまとめられていることも、カンサスの未来を暗示していた
ライヴ・アルバム前後の作品" 暗黒への曳航 "と" モノリスの謎 "を聴き比べてみれば、そのサウンドの
色合いの違いはよく分かる
しかし、コンセプト・アルバムとしての完成度は高い
カンサスが得意とした大作主義は完全に姿を消しているが、ヴァイオリンやキーボードをうまく使って
曲の中にドラマを作り出す手法には切れ味の鋭さを感じさせる
カンサスの伝統的な精神性を基盤にしながら、一方ではバンドの未来を考えて制作したアルバムとの
色合いを感じさせる