ソロ・アーティスト名義のインストゥルメンタル・アルバム
David T.Chastainの" Elegant Seduction "
" HR/HMのフランク・ザッパ "と呼んでしまうほど、彼の創作活動はすごかった
ちょうど1980年代といえば、イギリスのニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルの
ムーヴメントが始まり、L.A.メタル・ブームがあり、イングヴェイ・マルムスティーン、トニー・
マカパイン、ポール・ギルバートらのシュラプネル・パワーが目立ち、シメにボン・ジョヴィという
HR/HM最大のメガ・ヒットが生まれた
そんな状況の中でチャステインは大いに創作意欲に刺激され、かつその作品をHR/HMをファンを始めと
した音楽ファンに受け入れてもらおうということで、精力的ににアルバムを発表し続けた
バンド、チャステイン名義のほかにもC.J.S.S.というバンド名義のアルバムも発表、加えて、デヴィッド
T.チャステイン名義のソロ・アルバムまで発表していた
いずれも残念ながら世界的ヒットまでは至らなかったが、それだけの作品を継続して発表し続けられたと
いうことは、彼のホーム・グラウンドであるアメリカ中西部オハイオ州シンシナティ近辺やロード
ランナー・レーベルのあるオランダを中心としたヨーロッパ、そしてFEMSの日本ではそれなりの
セールスを上げたということであろう
§ Recorded Music §
1 Schizophrenia - スキッゾフリーニア
2 Elegant Seduction - エレガント・セダクション
3 Trapped in the Void - トラップト・イン・ザ・ヴォイド
4 7 Hills Groove - セヴン・ヒルズ・グルーヴ
5 Pompous Rompous - ポンポス・ロンポス
6 Blitzkrieg - ブリッツクリーク
7 Menage a Trois - メジーナ・ア・トロイズ
8 Fortunate Happenstance - フォチュネイト・ハプンスタンス
9 No Repeat Discourse - ノー・リピート・ディスコース
10 Images - イメージズ
11 Positional Strategy - ポジショナル・ストレティジー
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ポール・ギルバートがビリー・シーンと討手つけのベーシストと組みながらミスター・ビッグという
ソング志向のバンドに落ち着き、カコフォニーのジェイソン・ベッカーはデヴィッド・リー・ロスの
サポート、そしてカコフォニーのもう一方の雄マーティ・フリードマンは中堅メタル・バンド、メガデス
に参加というそれぞれいうまでもなく立派な形で発展した活動をみせながらも、多少残念ながら
イングヴェイを筆頭にマカパイン、ヴィニー・ムーア、ジョーイ・タフォーラ、カート・ジェイムス
それからこのチャステインらによって明確なパワーをみせつけていたシュラプネル軍団というモノの
存在感が明確ではなくなってきた
アルバム制作をペース・ダウンしたチャステインが発表したこの" エレガント・セダクション "はソロ・
ギタリスト・デヴィッド・T.チャステインの3作目で、全曲自身のギターをフィーチャーしたインストゥル
メンタル・アルバムになっている
" ミュージシャン・アーティスト "の中でもとりわけロック系には募作の人が目立つ
どちらかというと根がロックン・ロールだけに、特にヒットが出て大金を把んでしまうと創作意欲が低下
するというか…だが、広くみて歴史に残るミュージシャン・アーティストというと驚異的なほど多才な
人が目立つ
例えばバッハ、ハイドン、モーツァルト…ジョン・マクラフリンやチック・コリア、ジョン・コルト
もちろん" プロ "であるからして、少なからず収入のことも考えて仕事するわけであろうが、それだけでは
ないと思う
何より音楽が大好きで、抑えようとしても創作意欲が湧き続けるからこそ、そういった多作が可能になる
ちなみに" プロ "として多作しているということは、それなりの需要があるからこそ成り立つということを
忘れてはならない
チャステインの創作意欲は、プロ・アマ問わぬミュージシャン・アーティストとしてこの上なく健全で
" 結果的にどれも大ヒットしていないからこそ "というウガッた見方もあるだろうが、実際には一貫して
自身のスタイル・個性を常に発揮しつつ、アルバムごとに自身の創作意欲を満たしているように感じる
このアルバムでは" スキッゾフリーニア " " ポンポス・ロンポス " " セヴン・ヒルズ・グルーヴ " " ノー・
リピート・ディスコース "とともに、アルバムの核になっていると思うのは" イメージズ "で、アコース
ティック・ギター2本( リードとリズム )とドラムスというアンサンブルがユニークだ
前作" ウィズイン・ザ・ビート "では" マイナー・モードにおけるギター・アルバムの可能性 "を追求した
かのように"ドリアン " " フリージアン " " ナチュラル・マイナー/エオリアン " " ハーモニック・マイナー "
を見事に使い分けた内容だった
この" エレガント・セダクション "は、ギター・インストとしての楽曲性を充分に高めた上でのギター・
トリオ( ギター・ベース・ドラム )の可能性の追求といったところか