SANTANA初来日の大阪公演( 1973年7月3日~4日 )の実況録音盤
司会者の声" ただ今からサンタナ・グループは1分間の黙祷をします… "
黙祷が終わると" ゴーイング・ホーム "でプログラムが始まる
ニュー・サンタナのメンバーは7人のはずなのに、ステージに立っていたのは8人、" ブラック・マジック
ウーマン "を歌う不思議なヨーデルでレオン・トーマスとわかった
カルロスがニュー・サンタナのために強力なヴォーカルを求めていたようだが来日直前、それも出発
間際になってレオン・トーマスの同行が決定となる
ステージは呪術の秘儀のような色調で怪しい美しさにすっかり塗りつぶされている
" 魂の兄弟たち "を支配した禁欲主義への傾倒や、抑制された美しさは微塵もその痕跡をとどめていない
野生の神が音楽に短絡を起こしたとしか、ほかに形容する言葉がなかった
§ Recorded Music §
1 Meditation - 瞑想
2 Going Home - ゴーイング・ホーム
3 A-1 Funk - A-1・ファンク
4 Every Step of the Way - 果てしなき道
5 Black Magic Woman - ブラック・マジック・ウーマン
6 Gypsy Queen - ジプシー・クィーン
7 Oye Como Va - 僕リズムを聞いとくれ
8 Yours is the Light - 輝ける光
9 Batuka - バトゥーカ
10 Xibaba - シババ
11 Stone Flower ( Introduction ) - ストーン・フラワー( イントロダクション )
12 Waiting - ウェイティング
13 Castillos De Arena Part1 ( Sand Castle ) - 砂上の楼閣 パート1
14 Free Angela - フリー・アンジェラ
15 Samba De Sausalito - ソウサリートのサンバ
16 Mantra - マントーラ
17 Kyoto ( Drum Soro ) - 京都( ドラム・ソロ )
18 Castillos De Arena Part2 ( Sand Castle ) - 砂上の楼閣 パート2
19 Incident at Neshabur - ネシャブールの出来事
20 Se a Cabo - すべては終わりぬ
21 Samba Pa Ti - 君に捧げるサンバ
22 Mr.Udo - ミスター・ウドー
23 Toussaint L'Overture - 祭典
§ Band Member §
Carlos Santana - カルロス・サンタナ( G )
Leon Thomas - レオン・トーマス( Vo )
Tom Coster - トム・コスター( Key )
Richard Kermode - リチャード・カーモード( Key )
Doug Rauch - ダグ・ローチ( B )
Armando Peraza - アーマンド・ペラーザ( Per )
Jose 'Chepito' Areas - ホセ・チェピート・アリアス( Per )
Michael Shrieve - マイケル・シュリーヴ( Ds )
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カルロスにとって、ラテン・パーカッションの響きにはソウル・リズムのあのしつこい繰り返し、黒い
バッソ・オスティナートが黒人たちの底知れぬ郷愁を掻き立てるのと同じように、血を騒がせる刺激剤
以上のなにものかである
アメリカに住むメキシコ人たちにとっては、それは民族意識を支えるリズムともなる
全員がリズムを叩き、手当たり次第の楽器を打ち鳴らしながら" 僕のリズムを聞いとくれ "と声を
合わせるのを聴いて、もしメキシコ流の宗教的法悦があるとすれば、これなんだと頷くことができる
メキシコでカトリック信仰がヨーロッパのそれとずいぶん異質な肌合いをしていることは事実だし
メキシコのカトリック信仰は非常に官能的にみえる
このリズムの乱舞こそカルロスの素地をむき出しにした世界ではないか
いうなれば" 魂の兄弟たち " " ウェルカム "では、カルロスが晴衣を着てきちんと行儀よく改まった感じを
出そうと少し無理をしているのではないか
このライヴ盤を聴くまでは抑制された裏側には気づかなかった
サンタナ・グループの性格は、かなり複雑である
アルバム" ウェルカム "とこのライヴ盤がほぼ同じ時期の制作であるといわれても、おいそれとは信じられ
ないくらい音楽の作り方の向きが違っている
その深いギャップをスタジオ録音とライヴ盤との相違というだけで説明はできない
" ウェルカム "は" 魂の兄弟たち "の、そしてあるいは" キャラバンサライ "の新局面だと仮定すれば
このライヴは" カルロス・サンタナ&バディ・マイルズ!ライヴ "の新展開とみてもいいような視覚が
開ける
オールド・サンタナに聴き取れるような、つまり彼らの3作目までのアルバムまでに共通している
ような特色は、一口にいえばリズム中心主義ということである
しかし" キャラバンサライ "ではまったく対象的に、もっと徹底的に" 歌い上げること "を重視した
サウンドへの方向転換が鮮明に打ち出されている
お祭り的な賑やかさと、しっとりと感傷にうるおった歌のロマンの世界と、サンタナは2つの対象的な
性格を打ち出そうとしていたのではなかったか
ブルースの哀しみとラテン・ビートの陽気さとを両極に振り子のように揺れ動いているサンタナという
ふうに考えればいい
カルロスのギターが悩ましげにうめき声をあげるとき、ドラッグの力を借りないでもトリップの状態に
ひたれる
それは決して、ジョン・マクラフリンのように涼しくて透明な音楽ではない
カルロスの信仰は、演奏にどう反映しているのか…
このライヴ盤にはカルロスの崇拝するのが例えば交合する男女の姿を借りたような神であればうまく
馴染むのではないか