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Ultimate Music Album - 極 -


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Pink Floyd - The Dark Side of the Moon:狂気 -

人間の内面に潜む" 狂気 "
" The Dark Side of the Moon "を描き出すというコンセプト

 

" 狂気 "…このアルバムがこれほどまでに驚異的なセールスを記録し、未だに支持され続けているのかと

いえば、それはひとえに人々の音楽に対する価値観を気持ちよく転倒させてくれるからだ

ポップ・ミュージック、クラシック、ジャズ、民族音楽といったのスタイルの中で演じられる一定の

お約束によってのみ聴覚的快感を獲得できると人間は長い間信じてきたし、それはごく自然なことだった

しかしこのアルバムは、そうした確立された音楽への姿勢を転ばせてくれ、新しい感じを与えた

そして、それはただ単に前衛的な転倒というのではなく、人の本能に訴える説得力に満ちた転倒で、音に

対して人間が有史以前から潜在的に感じ、言語化も具現化できていなかった原始の昔から隠れて存在して

いた音のありようを、可能性をこのアルバムが現世に顕現させたのである

予感、夢想、可能性といった類のカテゴリーがピンク・フロイドによって実体化された

万人が納得できる前衛芸術などそうそうあるものではない

音への意識、音楽への態度を一新させてくれるという意味で" 狂気 "はプログレの真髄であるといっても

過言ではないし、" 狂気 "が提示した古くて新しい音、厳格なアートの風格は必須教養と呼んでも差し支え

ないだろう

 

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§ Recorded Music §
1 Speak to Me - スピーク・トゥ・ミー
2 Breathe - 生命の息吹き
3 On the Run - 走り回って
4 Time ~ Breathe ( Reprise ) - タイム~ブリーズ( リプライズ )
5 The Great Gig in the Sky - 虚空のスキャット
6 Money - マネー
7 Us and Them - アス・アンド・ゼム
8 Any Colour You Like - 望みの色を
9 Brain Damage - 狂人は心に
10 Eclipse - 狂気日食

§ Band Member §
David Gilmour - デヴィッド・ギルモア( G,Vo )
Nick Mason - ニック・メイスン( Ds )
Richard Wright - リチャード・ライト( Key,Vo )
Roger Waters - ロジャー・ウォーターズ( B,Vo )

 

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シド・バレットインプロヴィゼーションで抽象的なアバンギャルドを表現していたのに対し、脱退後

具体音楽( ミュージック・コンクレート )とシンセサイザーで、その先進性とポピュラー・ミュー

ジックに持ち込んだのはピンク・フロイドの大きな功績だと思うが、このアルバムがそのアプローチと

してもっとも完成度の高い最終系だろう、また具体音( 笑い声や心臓の鼓動など )は、彼らが徹底

して観察したシド・バレットの" 無意識 "を表現するのに必要だった

この具体音が左右に飛び交い、そこに笑い声や人の言葉が聴こえ定位の不安定さ、記憶の中から" ものに

対しての過剰な投影性同一視 "は無意識に犯された意識であり、シド・バレットの" 狂気に対する恐怖 "が

具体音とともに表現されている

シンセサイザーや具体音が定位が左右に動いて回るのは、単なる演出ではなくシド・バレット自身が

感じていた無意識の恐怖を残りのメンバーが再構成したものであり、そういう意味では彼の無意識を

かなりの部分正確に表現し、また音楽として抽象化している

ここには、具体音が虚仮威しやギミックではなく、かなりの部分忠実に無意識の具現化を再現していて

ドキュメンタリーに近いからこそ無意識の外にいる我々の共感を生んだものと思う

 

 

Time

Time

  • provided courtesy of iTunes
 

 

" 人間の内面に潜む狂気を描き出す "…曲間がほどんどなく、アルバム全体で1曲といった内容で非常に

高いレベルの芸術作品であると同時に、一般的なロックとして曲単位で楽しむことができるが、安易な

気持ちで手を出した聴き手を一気に冥府魔道のプログレ道へと摺り込む恐るべき魔力を秘めたアルバム

でもある

心臓の鼓動で幕を開け、そのまま" 生命の息吹き "へと続き、ものすごい鬱歌詞として一部で有名な

" タイム "、序盤のハイライト" 虚空のスキャット "と大河の流れのように穏やかに進行する

今となっては大変アナログ感あふれるレジスター音が印象的で、シングルとしてのヒットした" マネー "、

そしてアルバムのフィナーレであるラスト2曲" 狂人は心に "と" 狂気日食 "、この2曲は繋ぎが実に自然で

2曲で1つという印象である

ロジャーの心の中は未だシド・バレットが大きな比重を占めていて、この曲で聴こえるような静かで

不気味な笑い声を響かせているのか…

" 狂気日食 "の最後は" すべては太陽の下、調和を保っている けれどのその太陽は徐々に月に侵食されて

いく "という詞で終わり、アルバム冒頭と同じ心臓の鼓動、さらにその後、歌詞カードには載って

いないが、Gerry O'Driscollによる" There is no dark side of the moon really.Matter of fact It's all dark

( 本当の月の暗い側なんて存在しない 実のところ、すべてが闇そのものだから )"というセリフで

締められる

 

このアルバムのすごいところは世界観、空気感であり絵巻物のごとくすべてが連結している点であり、

その滑らかさ、連結の強靭さがほかの追随を許さない点である

世界観を構成するピースの緊密かつ流麗な調和性によって展開される世界観の壮大さは1曲の中で表現

しきれるものではない

音一つ一つの威力であると同時に、提示される空間の存在感、文章に例えるなら行間からにじみ出る

ものの威力でもある…一度聴き出したら止まらない、止めてはいけない、最後まで聴き通してこその

空気感の全容と真価を味わうことができる

その意味では聴き手に一定の体力と音楽的耐性が要求されるが、そういったスパルタな側面に多少の

忍耐を要したとしても味わう価値のある世界がそこにある

メロディ、リズム、歌詞だけでない音楽がそこにある

 

The Dark Side of the Moon

The Dark Side of the Moon