第2期Deep Purpleの幕開けを飾るハード・ロック・バイブル
1970年発表の5thアルバム" Deep Purple in Rock "
シングル" ハッシュ "がアメリカで大ヒットし前途洋々にみえたディープ・パープルであったが、本国
イギリスでは無名に近い存在であり前作のアルバム" ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ "
は大きくマスメディアに取り上げられ評判は上々だったものの、彼らをハード・ロック・バンドとして
認知しているものは少なかった
時を同じくして同国からデビューしたレッド・ツェッペリンが本国およびアメリカにて大きな成功を
収めており着々とその地位を築きつつあった
" ツェッペリンの成功で方向性がみえてきた 強力なリフとビートによるハード・ロックだ "…後に
リッチー・ブラックモアがインタビューで語るとおり、今までのキーボーディストのジョン・ロードが
主にもっていた音楽的な主導権がギタリストであるリッチー・ブラックモアに移行し、ギターを中心と
したハード・ロック色の強いアルバムの構想ができ上がっていった
§ Recorded Music §
1 Speed King - スピード・キング
2 Blood Sucker - ブラッド・サッカー
3 Child in Time - チャイルド・イン・タム
4 Flight of the Rat - フライト・オブ・ザ・ラット
5 Into the Fire - イントゥ・ザ・ファイア
6 Living Wreck - リヴィング・レック
7 Hard Lovin' Man - ハード・ラヴィン・マン
§ Band Member §
Ritchie Blackmore - リッチー・ブラックモア( G )
Ian Gillan - イアン・ギラン( Vo )
Roger Glover - ロジャー・グロヴァー( B )
Jon Lord - ジョン・ロード( Key )
Ian Paice - イアン・ペイス( Ds )
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いわゆるハード・ロックの教科書的な1枚であり、誰しもが一目をおかざるを得ない歴史的な名盤である
上述したように、リッチー・ブラックモアに主導権が移り、前作から参加したイアン・ギラン&ロジャー
グローヴァーを配しての大ハード・ロック大会を展開している
パープルが一介のハード・ロックに留まらないのは、ここぞというところで強力な存在感を発揮する
ジョン・ロードのオルガンとリッチー、ジョンの双方にみられるクラシック的なフレーズの導入だろう
すなわち本作に至るまでのアート・ロック的な志向を昇華し、ハード・ロックの血や肉にしているが
ブルースをベースにしたほかのグループとの違いであり、彼らの個性である
また同じアート・ロック的な手法からプログレへ移ったイエスやEL&Pと比べてみても興味深く、
リッチーのエゴなくしてパープルの現在の地位がなかったことは明らかである
ジョンとリッチーの曲芸的ともいえる凄まじいソロの応酬は、誰が聴いても生唾飲み込みものである
グループが一体となり重層に音の配列が迫る" スピード・キング " " ブラッド・サッカー "、イアン・
ギランのとどめの一撃、金切りシャウトが印象的な" チャイルド・イン・タイム "はヴォーカルだけでなく
中間のインスト・ソロのキーボードを追い越さんばかりのリッチーによる超高速神業ギター・ユニゾン
プレイが凄まじい
後の名曲" ミストゥリーテッド "のプロトタイプといえそうなギター・ソロと、後半ブンブン唸りを上げる
ベースがいい" リヴィング・レック "、キャッチーな" イントゥ・ザ・ファイアー "、またもやリッチーの
プレイが奔放に暴れまくる" ハード・ラヴィン・マン "など、最後まで高いポテンシャルを保ったまま
なだれ込むように完結するこのアルバムは、リッチーの常軌を逸した情熱により、音楽的にはもちろん
商業的にも見事な勝利を獲得した
テーマ演奏 > 各インストのソロ > テーマ演奏によるわかり易い単純明快な曲構成をまず確率したことなど
バンドのスタイルを決定づけた点でも重要なアルバムである
全体的に荒々しいが、それが逆に美点となっており芳烈するかのような音の勢いがあってスタジオ盤で
ありながら生の魅力に満ちている
ハード・ロックとして評価する場合、時や金に飽かしてじっくり制作された" マシーン・ヘッド "より
その点でこのアルバムに軍配が上がりそうだ
また、このアルバムのジャケットに描かれているのは、アメリカ・サウスダコダ州キー
ストーンに位置
しているラシュモア山の彫刻をパロディ化したもので、実際の像は4人の歴代大統領が彫られているが
アルバム・ジャケットにはメンバー5人が描かれている