イギリスの叙情派プログレッシブ・ロック・バンド
CAMELのファースト・アルバム
1973年当時日本でのキャメルは不遇だった…デビュー・アルバムでありながらレコード会社のプッシュが
弱く、音楽雑誌での評価も低かった にもかかわらず内容はこれである
何回も聴いていくうちに段々と良くなっていくという類のものではなく、誰が聴いてもその瞬間に一発で
解るクオリティを持った内容である
このアルバムもピンク・フロイドやキング・クリムゾンのパクリとまでいわれていたが、これを
パクリといわれては何もできなくなってしまう…ハッキリいってまったく違う
キャメルはプログレでありながら、あくまでもアコースティックなサウンドをベースに構築され、特に
アンドリュー・ラティマーのギターは氷のように硬くどこまでも透明である
このアプローチは独創的でその後のカンタベリー・ロックやフュージョン系バンドにも繋がるものだ
楽曲も後のキャメルっぽいファンタジックな作風が目立ち、各々のインター・プレイも滑らかでとても
デビュー作とは思えない完成度だと思う
このファーストは現在まで脈々と続くサウンドが原形というよりもほぼ完成した形で披露されている
§ Recorded Music §
1 Slow Yourself Down - 二人だけの旅
2 Mystic Queen - 秘密の女王
3 Six Ate - 六つの神罰
4 Separation - 別離
5 Never Let Go - ネヴァー・レット・ゴー
6 Curiosity - 好奇心
7 Arubaluba - アルバルーバ
§ Band Member §
Peter Bardens - ピーター・バーデンス( Key )
Doug Ferguson - ダグ・ファーガソン( B )
Andy Ward - アンディ・ワード( Ds )
Andrew Latimer - アンドリュー・ラティマー( G,Vo )
当時、イエスやEL&Pなど凝ったジャケットが氾濫していた時代に、機関車に乗ったラクダが泣きながら
疾走しているシンプル過ぎるジャケットから飛び出すファンタスティックなキャメルの音は本当に至福で
しかも周りのほとんどの人がその存在すら知らないという妙に心地よかったのを覚えている
ピーター・バーデンス、アンドリュー・ラティマー、ダグ・ファーガソン、アンディ・ワードの4人の
メンバーが一番キャメルらしいからか…
彼らの本領は緩急自在でスリリングなインスト・パートの応酬にあったこと実感できる1枚で、それと
初期のキーマンはやはり1960年代初頭から百戦錬磨のマルチ・キーボーディストであるピーター・
バーデンスの存在である
ピーター・バーデンスのキーボードなくしてキャメルの成功はあり得なかったと思う
まず" 二人だけの旅 "で幕を開け、この曲こそまさにキャメル" 独自 "サウンドだ
響きはシンフォニックなのにビートはナチュラルという相反する要素が無理なく融合していて、最初
聴いたときは戸惑うが慣れればクセになる
続いて" 秘密の女王 "は繊細なアコースティック・ギターのバッキングが印象的なメロディアスな曲で
アンドリュー・ラティマーの湿っているギターの音色が特に泣ける…まるでオーディオから水滴が滴る
ようなそんな音色だ
次はインスト・ナンバーの" 六つの神罰 "、この曲もキャメルらしくてシンフォニックでファンタジーな
仕上がり、RPGで流れている雰囲気である
" 別離 "は前半はラティマーのギターリフを主体としたブリティッシュな流れで後半はバーデンスの
テクニックが光るシンフォニックな展開にと実に巧い作りになっている
そして大目玉、キャメル初期の代表作" ネヴァー・レット・ゴー "、心の深層部まで到達する実に感動的な
名曲、ラスト1分のラティマーのギター・ソロは感涙の極み
" 好奇心 "はメンバー4人それぞれの楽器がバランスよく自己主張している佳曲、ラスト" アルバルーバ "は
お気に入りのナンバーというか中毒ナンバーで、多分このアルバムで一番繰り返し聴いた1曲、この
インスト曲はとにかくエキセントリックでめくるめくような展開である
疾走感と緊迫感は凄まじい、なのにキャッチーで叙情的、これもキャメルならではの味わいだ
全般に意外とドラマティックでハードな仕上がりだが、ラティマーのフルートが印象的な" 秘密の女王 "
など後のキャメルの真骨頂が培われた名盤、次作、次々作もそれぞれに奥深くスゴイがそれもこの
アルバムでの試行があったらばこそである…初期キャメル・ファンは必聴