メタル、パンクなどジャンル分け不要の
ロックン・ロール・アルバム" Ace of Spades "
ヘヴィ・メタル・ファンよりも、ひょっとするとパンク~ハードコア・ファンの方に高い評価を得ている
かもしれないモーターヘッドの1980年発表の大名作" エース・オブ・スペーズ "
1975年に元ホークウィンドのレミー・キルミスターを中心に結成されたイギリスのヘヴィ・メタル・
バンドの4thアルバム( 全英アルバムチャート4位 )、ヘヴィ・メタルとパンクを融合させたラウドで
ヘヴィなロックン・ロール
レミー・キルミスターのダミ声ヴォーカルとパンク的な疾走感が特徴である
スラッシュ・メタルやスピード・メタルの先駆のような音、ヒット・シングル" エース・オブ・
スペーズ収録、プロデュースはヴィック・メイル
§ Recorded Music §
1 Ace of Spades - エース・オブ・スペーズ
2 Love Me Like a Leptile - ラヴ・ミー・ライク・ア・レプタイル
3 Shoot You in the Back - シュート・ユー・イン・ザ・バック
4 Live to Win - リヴ・トゥ・ウィン
5 Fast and Loose - ファスト・アンド・ルース
6 ( We Are ) the Road Crew -( ウィ・アー )ザ・ロード・クルー
7 Fire,Fire - ファイアー・ファイアー
8 Jailbait - ジェイルベイト
9 Dance - ダンス
10 Bite the Bullet - ハイト・ザ・ブレット
11 The Chase is Better Than Catch - ザ・チェイス・イズ・ベター・ザン・ザ・キャッチ
12 The Hammer - ザ・ハマー
§ Band Member §
Ian 'Lemmy' Kilmister - レミー・キルミスター( Vo,B )
'Fast' Eddie Clarke - エディ・クラーク( G )
Phil 'Philthy Animal' Taylor - フィル・テイラー( Ds )
もうこれは" バイカーズ・アンセム "としかいえない…革ジャンとバイクが好きな人は必聴だ
マフラーの外されたモーター・サイクルが爆音を発生しながら通過していくようなサウンドが全編に
わたって炸裂している
しかもハードコア・パンクとは違って非常に優れたロックン・ロールであって彼らの音楽はとてつもない
音圧で迫ってくるノイズでありながら非常にプリミティヴなロックン・ロールの遺伝子を有している
滅茶苦茶バイオレントな激音を奏でつつもチャック・ベリーの子孫であるのがモーターヘッドだ
それでいてリーダーであるレミー・キルミスターの出自はサイケデリック・ロックなのである
このなんとも不思議な超絶のパワー・ロックン・ロール・バンドの最高傑作は間違いなく本作で、本作
ではパンクでもヘヴィ・メタルでもない彼らならではの暴走サウンドが炸裂、この鞭打つように暴走する
唯一無二のサウンドはヴェノムの名作" ブラック・メタル "などとともにスラッシュ・メタルの元祖と
されることもある
ジャケットからウォー・ピッグが消え、メンバーのワイルドな写真が採用された本作こそ、パンキッ
シュでヘヴィでメタリックなロックン・ロールで世界を蹂躙してきた
今やロック界のアンセムと化しているタイトル曲" エース・オブ・スペーズ "は、" 勝つために生きる "
という屈強の精神が投影された不朽の名作で、今日に至るまでどれだけの人間が彼らと同様の方法で
自己を表現してきたかわからないが、彼らを凌駕したバンドが未だ皆無であることは間違いない
そのほか"( ウィ・アー )ザ・ロード・クルー " " ザ・チェイス・イズ・ベター・ザン・ザ・
キャッチ "など無慈悲なまでに暴力的なのに、一切の不快感を与えることなく爆走し続けるスタイルが
メタリカを筆頭に多くの米国産メタルを生み出したのは当然の結果だが、そんな彼らがブラック・サバス
やジューダス・プリーストなどと同じイギリス・バーミンガム出身というのは非常に興味深い事実
モーターヘッドの音楽的特徴はブルースを基調とした伝統的ロック・サウンドにヘヴィ・メタルと
パンクのよいところを取り合わせたようなサウンドである
よって一概にはヘヴィ・メタルともパンクともいえない不思議なサウンドであり、同時に" 男 "の美学を
思わせる魅力が放出されている
このアルバムもそれらが反映されてスピード感と男気にあふれた爆音ロックを聴かせてくれる
理屈を超越して君臨するバンドやミュージシャンというのは少ない
AC/DC、ラモーンズ、ジョーン・ジェットなど彼らに共通するのは音楽性にまったくブレがないマンネ
リズムで、モーターヘッドもそのひとつである
彼らはメタルなのか、パンクなのか…そんなことはどうでもいい
ジャンルの垣根など意味をなさない力があるということで、確かなのは" ロックン・ロールである "と
いうことだけ、しかもとびきりの轟音爆走ロックン・ロールである
そんなモーターヘッドの最高傑作といわれている本作、悪いワケがない