ソロ・アーティストとしても数々の良質な作品を世に送り出し
キーボーディストの第一人者として認知されている
今でこそシンセサイザー群や音源モジュールを積んでプレイするのは当たり前だが、このスタイルこそ
リック・ウェイクマンが作り出したといっても過言ではないだろう
数多のキーボードを次々にとっかえひっかえ弾きまくるあたり、イエスなどのバンド・スタイルの楽曲
での短いソロとは違い、こういったリーダー作ならではの大きな魅力がある
楽曲は全体的にお決まりのクリシカルだが、ビル・ブラッフォードやアラン・ホワイトのドラムや
クリス・スクワイアなどのイエス組と、フォーク・バンドのストローブス時代の面々も揃い、曲ごとに
編成が変わっているため、それぞれの曲によってイメージが変わってくるところなんかも面白い
イエス・オンリーの人もこのアルバムでリック・ウェイクマンの魅力をさらに知ることができる
§ Recorded Music §
1 Catherine of Aragon - アラゴンのキャサリン
2 Anne of Claves - クレーヴのアン
3 Catherine Howard - キャサリン・ハワード
4 Jane Saymore - ジェーン・シームーア
5 Anne Boleyn / That Day Thou Gavest Load Hath Ended - アン・ブーリン
6 Catherine Parr - キャサリン・パー
このソロ・アルバムはリック・ウェイクマンがA&Mレコードとの契約を残したままイエスに加入して
しまったため制作を余儀なくされたものだった
1曲目の" アラゴンのキャサリン "は当初" Handle with Care "というタイトルで、本来は" こわれもの "の
ソロ作品として収録される予定だった曲にいくつかのパートを追加したものである
リック・ウェイクマンがソロ・アルバムのテーマとして" ヘンリー八世の六人の妻 "を採用したきっかけは
彼のツアーの移動中に多くの書籍を飛行機の中に持ち込む習慣があり、その中のひとつにナンシー・
モリソン著の『 ヘンリー八世の私生活 』という本があって、6人の妻の一人ひとりを題材にした楽曲を
作ろうと閃いたからだそうだ
ジャケットの1番左の女性の背後には、このアルバム発売当時のアメリカ合衆国大統領リチャード・
ニクソンの横顔が写っているが、これはロンドンの蝋人形館でジャケットの撮影をした際にカーテンの
閉じ方が不十分だったためだそうだ
その他ジャケットにはメロトロンやエレクトリック・ピアノ、ニミ・ムーグなどの当時の最先端の
キーボードのクレジットがあり、音の博覧会としても楽しめる( " ジェーン・シームーア "ではパイプ
オルガンも登場 )
曲は上述したようにクラシックをベースにした中世的な雰囲気の漂う曲が多く、全曲がインストゥル
メンタル・ナンバーとなっている
中世的といっても、同じく中世的な音楽を得意とするアンソニー・フィリップスあたりとはまったく
毛色が異なり、かなり動的でロック色が強く、またジャズ的な要素も強いのが特徴だろう
イエスからはクリス・スクワイア、スティーヴ・ハウ、アラン・ホワイト、ビル・ブラッフォードらが
参加、イエスの亜流になっていない独特の世界観をもった傑作アルバムであり、ドラマティックな曲調と
流暢な鍵盤弾きが満喫できる
1973年発表のファースト・ソロ・アルバムで、ヘンリー8世の6人の妻たちをコンセプトにし、6人の
名前をタイトルにした全6曲の作品となっている
イエスの全盛期に制作されたもののため、制作はイエスの作品への参加やツアーの合間を縫って制作され
かなり煮詰まったようで、後の異常なほどの多作ぶりからしてもこの作品はかなり難産だったようだ
しかしながら出来上がった作品は彼のキャリアで1、2位といってよいほどのクオリティの高いものに
なっていて、イエスのライヴ盤でもその抜粋が収録されているが、そのライヴ盤のハイライトのひとつに
なっていた
時代を反映した要塞のような鍵盤群を操る彼は、あの時代の鍵盤奏者の神の一人であり、この作品には
その証がギッシリと詰まっている気がする