ケヴィン・ゴドレイとロル・クレーム組脱退後の
初のアルバム" Deceptive Bends - 愛ゆえに - "
ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームが1976年に事実上バンドを離脱し、ゴドレイ&クレームを結成、
10ccのオリジナル・メンバーではなくなる
しかし、エリック・スチュワートとグレアム・グールドマンはデュオとしてのグループを存続させた
エリック・スチュワートは" イギリスのいくつかのメディアが丁寧に私たちに問い合わせてきたように、
私たちはただの5ccではないということをレコード界に証明するため、今までにない大きな挑戦があった
音楽は、以前の10ccのアルバムに比べてシンプルになり、さらにダイレクトに、現代的に、そしてポジ
ティブになった
アルバム全体は、非常に早く収録され、私はミッションの上に立たされており、今までよりも高く
そして速く飛び、我々が非常に強いアルバムを持っていることがそのときまでにわかった
我々がケヴィンやロルなしでもヒット・アルバムを書くことができるということを立証するコースの
重要な一要素となり、我々はそれを成し遂げた "と回想している
§ Recorded Music §
1 Good Morning Judge - グッド・モーニング・ジャッジ
2 The Things Do for Love - 愛ゆえに
3 Marriage Bureau Rendezvous - マリッジ・ビューロー・ランデヴー
4 People in Love - 恋人たちのこと
5 Modern Man Blues - モダン・マン・ブルース
6 Honeymoon with B Troop - ハネムーン・ウィズ・Bトゥループ
7 I Bought a Flat Guitar Tutor - フラット・ギター・テューター
8 You've Got a Cold - ユーヴ・ガット・ア・コールド
9 Feel the Benefit,Pt.1-3 - フィール・ザ・ベネフィット
§ Band Member §
Eric Stewart - エリック・スチュワート( Vo,G,Key,Per )
Graham Gouldman - グレアム・グールドマン( Vo,B,Per )
Paul Burgess - ポール・バージェス( Ds )
- with -
Del Newman - デル・ニューマン( String )
Jean Alain Roussel - ジーン・アレイン・ルーセン( Key )
Tony Spath - トニー・スパス( Pi,Oboe )
|
この作品では彼らの作り出す奇想天外なサウンドはほぼ無くなったが、それをカバーするかのごとく
極上のメロディがパッケージされている
サウンド的にも決してつまらないものではなく、彼らなりのアイディアがかなり生かされていると思う
演奏は無駄なものが排除されシンプルになり、曲そのものの良さが全面に出ている
特に1曲目から4曲目までの名曲の流れにはため息が出るほどだ
その中でも" 愛ゆえに "と" 恋人たちのこと "は、彼らを代表する曲であり正直なところ" アイム・ノット
イン・ラヴ "よりはるかに出来が良い
彼らにしてはほぼ最後の大作となる" フィール・ザ・ベネフィット "は前作の名曲" アイム・マンディ "を
彼らなりに目指したのか…" アイム・マンディ "には及ばないものの、極上のメロディを次から次へと
紡いだ感動的な1曲に仕上がっている
そもそも" 実験音楽大好きチーム "と" メロディメーカー・チーム "が合体してバンドとなっていた10cc
そこから前者のゴドレイ&クレームが離脱し、後者のスチュワート&グールドマンだけで制作された
初のアルバムで、アヴァンギャルドさとポップさとがいかにも英国人らしい諧謔性を軸として絶妙な
バランスを保っていたが、大ヒット曲" アイム・ノット・イン・ラヴ "で有名な前々作" オリジナル・
サウンド・トラック "や前作" びっくり電話 "における10ccの特徴であった
それに比べ、本作ではやはり大巾にポップ方面にに偏ったサウンドになり、ニヤニヤしながら聴く
部分は薄れてしまっている( 歌詞は充分シニカルだったりする )
しかしながら、CMでもフィーチャーされた" 愛ゆえに "をはじめ、かなりの名曲揃いなのはスチュワート
グールドマンコンビの面目躍如といったところである
10ccに残ったスチュワートとグールドマン、そしてツアーのサポート・メンバーだったドラムのポール
バージェスの3人でほぼ制作された大傑作、シングル" 愛ゆえに "が大ヒットし" 恋人たちとのこと "と
" グッド・モーニング・ジャッジ "もヒットを記録した
2人は曲作りの方法について" 曲にかぶせるコーラスの良し悪しでシングルになる曲が決まる "という
ような発言をしており、極上のコーラスを2人で追求したことが窺える
本作のすべての曲で印象的なコーラスが多用されており、まるでゴドレイとクレームが考えたのではと
思えるような独創的な変なコーラスも随所でみられる
グールドマンは当時スティーリー・ダンの" ハイチ式離婚 "にハマっていて、本作でもレゲエのリズムを
導入、次作ではレゲエの曲が全米No.1を記録している
スチュワートの正統派楽曲に比べるとグールドマンがヴォーカルをとる楽曲は実験的であり、特に
" マリッジ・ビューロー・ランデヴー "や" ハネムーン・ウィズ・Bトゥループ "で結婚をテーマにした
曲は出来が良い
" びっくり電話 "からわずか1年で、これほど高水準な作品を作れるとはすごいと思う…本作の制作に
対する強烈な緊張感と集中力が成功に結びついたと思う
これ以降の作品に本作のような緊張感と集中力がみられなくなったのは、本作のビッグ・ヒットで
緊張感が緩んでしまったからなのかもしれない