ロンドン、アドヴィジョン・スタジオにて録音
YESのセカンド・アルバム" Time and a World "
オーケストラをバックにしているとは思えないほどロックしているが、ピーター・バンクスのギターが
オフ気味されている点はマイナスの面もある
それでも攻撃性が溢れ出ているのは、逆にピーター・バンクスの音がもっと前ならと想像すると
このアルバムこそ黄金期プログレ・バンド、イエスとは異なるロック・バンド、イエスと再評価しても
いいアルバムである
特に" ゼン " " スウィート・ドリームス " " 星を旅する人 " " 時間と言葉 "の4曲は黄金期イエスに匹敵する
名曲である
このアルバム後、ピーター・バンクス、そして次のアルバムを残してトニー・ケイがバンドを去るが
このセカンドにオーケストラを使いたくなかったバンクス、キーボードに多くを求めオーケストラ化
するバンドに拒否反応があったケイが次々にバンドを去ったあとの2人の音の系譜を見れば、シンプルに
" ロック・バンド = イエス "を求めていたと思えてならない
そう考えてアルバム・ジャケットを見れば、上半身はバンクスとケイ、下半身の広がりがほかの3人の
求めるイエスへの変革のトンネルに思えてしまう
§ Recorded Music §
1 No Opportunity,No Experience Needed - チャンスも経験もいらない
2 Then - ゼン
3 Everydays - エヴリディズ
4 Sweet Dreams - スウィート・ドリームス
5 The Prophet - 予言者
6 Clear Days - 澄みきった日々
7 Astral Traveller - 星を旅する人
8 Time and a World - 時間と言葉
§ Band Member §
Jon Anderson - ジョン・アンダーソン( Vo )
Peter Banks - ピーター・バンクス( G )
Chris Squire - クリス・スクワイア( B )
Tony Kaye - トニー・ケイ( Key )
Bill Bruford - ビル・ブラッフォード( Ds )
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ロックとクラシックの融合を掲げたグループはたくさんあったが、その中でもイエスはムーディ・
ブルースやディープ・パープルなどと比べると後発組ということになる
これらのほかのグループも含めてアート・ロック的な作風を志すグループは、その作品のあとに大きく
化けることが多いが、イエスもご存知のとおりだと思う
" 経験なんかいらない "はイントロは圧巻のひとこと、ヴォーカルの面にやや難があるものの、アレンジの
面白さは充分に感じられ、この作品を如実に表した佳曲だと思う
" ゼン "は既に後のイエスの雰囲気が充分に感じられ、この時点でイエスは完全にプログレ・バンドに
なっていたとみていいと思うし、" エヴリディズ "も渋いプログレ曲に仕上げられていて、これを嫌いな
プログレ・ファンはいないだろうと思う
カバーなども含まれるため、前作の延長線上にみられる傾向があるが、中身はかなり違った作品である
ここまでのイエスはジョン・アンダーソン&クリス・スクワイアの2枚看板はもちろんのこと、ギターの
ピーター・バンクスがすごく良く、あまり知名度はないがいいギタリストで、こういった人たちが雨後の
筍状態だった当時の英国シーン、ロックというジャンル以上にまだまだ黎明期だった電子楽器を最大限
駆使して繰り広げられる小宇宙には、後のイエスでの完熟状態とはまた違った未完のエネルギーが
感じられ、アイディアやソフトが圧倒的にハード面を上回った結果、閃きのあるザックリとした切れ口が
ポカンとした空間に開いているといった印象である
ハイレベルな構築美を誇るイエス・サウンドが完成に向かうのは次の3rdアルバムからで、この2ndは
まだまだ未完成で荒削り、どこかに向かおうとしてもがいている印象もある
" こわれもの "や" 危機 "などで聴かれる全盛期の研ぎ澄まされたサウンドとは違うが、その格好悪さが
逆に愛おしく、まだ未完成故の無骨なパワーが感じられる
どうなるか分からないけど、小さくまとまるより自分たちの大きな可能性に賭けてみたい…この冒険心が
なければ後の名盤群は生まれず、彼らが世界を驚かすこともなかったであろう
ただ、未完成ではあるが断じて駄作ではなく、イエスの魅力のひとつでもあるモダンで美しいメロディは
このアルバムで聴くことができるし、サウンドには未完成だからこそのユニークさがある
ゴリゴリ鳴るベース、古臭い音色のオルガン、流麗なストリングスというアンバランスな組み合わせが
何ともいえない味を醸し出している