代表曲" White Room "を含むスタジオ盤と彼らの
本領でもあったライヴ盤を2枚組にして発表
発売時期から近年までほとんど狂信的な絶賛があったためか、最近では却って酷評をする批評家も多いが
その批判は主にライヴのほうが多く" 冗漫 "という表現を散見する
しかしながらクリームのライヴ音源は、出回っているもののほとんどが、当時としてはもちろんのこと
現代の耳で聴いても充分に聴き応えがあり、本作においては彼らの本質であったインタープレイを充分に
聴かせてくれる内容となっており、このライヴを聴かずして彼らの音楽性などわかるはずもない
彼らの数分のコマーシャルな楽曲という意味でも素晴らしい成果を上げているが、それだけのグループ
ではなくクリームは後のジャズ・ロック系のグループの源流のひとつという側面もあり、そこを
見落としてはならない
§ Recorded Music §
1 White Room - ホワイト・ルーム
2 Sitting on Top of the World - トップ・オブ・ザ・ワールド
3 Passing the Time - 時は過ぎて
4 As You Said ー おまえの言うように
5 Pressed Rat and Warthog - ねずみといのしし
6 Politicain - 政治家
7 Those Were the Day - ゾーズ・ワー・ザ・ディズ
8 Born Under a Bad Sign - 悪い星の下に
9 Deserted Cities of the Heart - 荒れ果てた街
-- Live --
10 Crossroads - クロスロード
11 Spoonful - スポーンフル
13 Traintime - 列車時刻
14 Toad - いやな奴
§ Band Member §
Jack Bruce - ジャック・ブルース( B,Vo )
Ginger Baker - ジンジャー・ベイカー( Ds )
Eric Clapton - エリック・クラプトン( G,Vo )
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" 喧嘩セッション "といわれたら彼らの演奏
この1968年3月にサンフランシスコで行われたライヴでもエリック・クラプトンとジャック・ブルース
の主導権争いには、観客も度肝を抜かれたことだろう
おまけにスーパー・ドラマー、ジンジャー・ベイカーがリズムキープに徹するわけでもなく、フロント
2人を押しのけてまで存在感をアピールするから、聴く側は全員の自己主張を受け止めることになる
しかし、テクニックが凄いだけにその3人に自己主張は違和感なく受け入れられ、アルバムは2枚組にも
かかわらず全米ナンバー1に輝いた
スタジオ作はクリームとしては最も充実した内容が揃っていて、前作にみられた微妙な演奏の固さは
完全になくなり、スムーズかつ自然になった
さらに弦やアコースティック・ギターなどを導入した楽曲が目立ち、彼らの新生面も強調されている
オリジナル曲はジャック・ブルースとピート・ブラウンの共作と、ジンジャー・ベイカーとミック・
テイラーの共作となっており、特に名曲" ホワイト・ルーム "を手にしたジャックのソング・ライティング
にはもう少し高い評価があっていいと思う
スタジオ面では代表曲" ホワイト・ルーム "など前作" カラフル・クリーム "同様、手の込んだアレンジや
多彩な曲、古典と先鋭を融合したような実験性の高い曲が充実していて、ジャズやクラシックの要素を
バンドに持ち込んだジャック・ブルースの貢献が非常に高い
ライヴ面では" クロスロード "など、後のクラプトンの重要レパートリーとなる曲や、ライヴならではの
3人によるインプロビゼーション・バトルで、怒濤のドラムスにブンブンうねるベース、もちろん
クラプトンのギターも凄まじくテンションが高い
しかしながら、こういった10分以上ある長いインプロバトルを聴くというのは少々気合がいる…
というか疲れる部分も多分にある
解散間際のクラプトン自身も、こういったインプロバトル続けることに嫌気がさしたとか…
後のブリティッシュ・ハード・ロックへとつながる3人の激しい演奏は" クロスロード "と" スプーン
フル "で最高のハイライトを迎える
クラプトンの2度にわたるギター・ソロが冴え渡った" クロスロード "はクリームの、クラプトンの
最高傑作で、ワクワクさせ、そして見事に打ちのめしてくれる
" ホワイト・ルーム "はもちろん、" トップ・オブ・ザ・ワールド " " おまえの言うように " " 政治家 "
" ゾーズ・ワー・ザ・ディス " " 荒れ果てた街 "と、ブルースを基調にプログレッシブ、ドラッド風
クラシックな趣も取り込み、ハードなだけではないクリームの多面性、応用力をしっかりと見せつけ
クラプトンのギターが何度も鋭く切り込めば、ジャックのベースも流れるようにうねり、波打ち
ベイカーのドラムは正確無比の激しいリズムでギターとベースをしっかりと支えている
この3人の超絶技巧のアンサンブルは最高で、アルバム・タイトル通り正に" 素晴らしき世界 "
そして楽曲提供という観点からいってもクリームの一番の貢献者は間違いなくジャック・ブルースで
この人の優れた楽曲の数々とベースがなければクラプトンのギター・パフォーマンスも磨かれなかった