メッセージを込めたコンセプト・アルバムとして
1987年にリリースしたRoger Watersの2ndソロ
架空のラジオ局" Radio KAOS "を舞台としたコンセプト・アルバムで、前作同様かなり難解な
ストーリーになっていて、アルバムを聴いただけでは内容が理解できないため、ウォーターズによる
" あらすじ "も書き添えられている
前作がエリック・クラプトン参加でジャケットも衝撃的だったことに比べると、本作はウォーターズの
作品の中でも地味な印象をもたれる作品で、シングル・ヒットもないが、アルバム全体的な出来としては
悪くないと思う
シングルになった" ラジオ・ウェイヴ "はキャッチーなメロディ、2ndシングルの"流れが変わるとき~
ライブ・エイドが終わって~ "はライヴ・エイドについて歌った曲である
§ Recorded Music §
1 Radio Waves - ラジオ・ウェイヴ
2 Who Needs Information? - 誰がそんな情報を必要としてるんだい?
3 Me or Him - 彼か、もしくは私が…
4 The Power That Be - 予知能力
5 Sunset Strip - サンセット通りにて
6 Home - ホーム~誰にでも国は存在する?
7 Four Minutes - 4分間のシミュレーション・ゲーム
8 The Tide is Turning ( After Live Aid ) - 流れが変わるとき~ライヴ・エイドが終わって~
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主人公のビリーは身体障害者という設定なのだが、ある日、世界中を漂うラジオ電波と交信するという
超能力を得る
さまざまな電波と交信している中で、電波を通じて人々をコントロールしようと企てている権力者の
動きに気づき、ビリーはこの動きをなんとか阻止しようと革新的な試みを行っているラジオ曲
" ラジオ・ケイオス "にコンタクトをとる
そして、DJのジムとともに世界に向けて平和のメッセージを投げかけていく
既存のメスメディアを批判するとともに" ラジオ・ケイオス "という独自の媒体を通してさまざまな社会的
メッセージが込められたアルバムになっている
ピンク・フロイド在籍時の" ファイナル・カット "に続いて、マーガレッド・サッチャーやロナルド・
レーガンが実名で非難されているほか、核兵器廃絶も中心のテーマになっている
ピンク・フロイドの" 鬱 "は大袈裟なつくりと豪華ミュージシャンで話題性を生み出したが、ロジャー・
ウォーターズの本作品がメジャーなヒットになるには無理があったと思う
昔の名声を期待したのか、それとも分かる人だけ分かってもらえればいいという感じだったのか…
昔ながらのファンには楽しめる部分も多い
例えば" 彼か、もしくは私が "には1979年のイランのアメリカ大使館占拠事件の懐かしいラジオ・
ニュース中継が挿入されていて歌詞にあるように" グッド・オールド・ディズ "と締められている
79年といえば" ザ・ウォール "の大ヒットの年であり、ウォーターズにとっては古き良き時代だったに
違いない
ベスト・トラックは" ホーム "で、女性コーラスが挿入された独特の緊張感が復活している
" LAの架空ラジオ局K.A.O.Sを舞台に描かれる現代への警告 "がコンセプトだが、歌詞をきちんと把握
しないと、全くそういうことが理解が出来ない…というのがホンネ
ピンク・フロイドの" 狂気 "などの場合、歌詞は分からずともそのサウンドの凄さが伝わってきたが
このアルバム意外とイメージよりポップな仕上がりで、平凡な印象が払拭出来なかったが、曲間の
SEなどは、まさにウォーターズならではであり、女性コーラスの使い方は文句なしに上手い
アルバム・リリース後にはツアーも開催されたが、デヴィッド・ギルモア率いる新生ピンク・フロイドと
日程が重なり、各地でバトルを展開するもアルバムの売上やツアーの観客動員ではピンク・フロイド側の
圧勝に終わった