爽やかなカントリー・ロックから、パワフルな
エレキ・サウンドへと移行が始まった作品
" オン・ザ・ボーダー "は1974年にリリースされたサード・アルバムで、これまでのファースト、
セカンド・アルバムと変わってカントリー調が少なくなり、ロック&ポップなテイストが全体に強調
されていて、イーグルスの音楽的志向性( 所謂" ウエスト・コースト・サウンド )を明確に打ち出し
確立したアルバムというべきである
このアルバムではドン・フェルダーが初めて参加し、そのまま正式メンバーとなった経緯があり、
このことも本アルバムに漂うイーグルスの音楽的志向性に影響しているように思われるが、より正確には
ロック志向を求めた故のドン・フェルダーの加入というべきだろう
§ Recorded Music §
1 Already Gone - 過ぎた事
2 You Never Cry Like a Lover - 恋人みたいに泣かないで
3 Midnight Flyer - ミッドナイト・フライヤー
4 My Man - マイ・マン
5 On the Border - オン・ザ・ボーダー
6 James Dean - ジェームス・ディーン
7 Ol' '55 - 懐かしき'55年
8 Is it True? - イズ・イット・トゥルー?
9 Good Day in Hell - 地獄の良き日
10 Best of My Love - 我が至上の愛
§ Band Member §
Glenn Fley - グレン・フライ( G,Vo )
Don Henly - ドン・ヘンリー( Ds,Vo )
Bernie Leadon - バーニー・リードン( G,Vo )
Randy Meisner - ランディ・マイズナー( B )
Don Felder - ドン・フェルダー( G )
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本作ではイーグルスにとって大きな転換点となり、前作でのワイルド・ウェストをイメージして極めた
叙情あふれるカントリー路線から一転、エレクトリック・ロック路線が鮮明になった
上述のようにギタリストとしてドン・フェルダーが参加し、アルバム制作当初は前2作同様
プロデューサー、グリン・ジョンズ、レコーディングはロンドンだったのが、途中からそれぞれ
ビル・ジムジック、ロサンゼルスに変更した点が大きな変化をもたらした
前作のようなアルバムを通してのメッセージ性はなくなっている
ドン・ヘンリー、グレン・フライがリード・ヴォーカルの曲がやはり多いが、ランディ・マイズナーも
2曲、バーニー・リードンも1曲リード・ヴォーカルを担当している
プロデューサーの交代などバンドの多難な時期に創作された曲の寄せ集めという見方もできるが
個々の曲の質は決して悪くなく、並のバンド以上の質を保っていることを指摘しておきたい
間違いなく" ホテル・カリフォルニア "に上りつめる道は本作の混沌の中にその出発点がある
The Best of My Love (2013 Remaster)
収録ナンバーでカントリー・テイストが漂うのは" ミッドナイト・フライヤー "くらいで" 過ぎた事 "
" 地獄の良き日 " " ジェームス・ディーン "などでは軽快なリズムとエレキ・ギターのリードを効かせた
ロック&ポップなサウンドに仕上がっており、まさにウェスト・コースト・ロックの誕生といえる
特にタイトル曲の" オン・ザ・ボーダー "は、本格的なロック・スタイルの8ビートを効かせ、エレキの
リードを被せながらのヴォーカルが特徴で、1st・2ndアルバムにはなかった構成である
またランディ・マイズナーが" ミッドナイト・フライヤー " " イズ・イット・トゥルー? "でリード・
ヴォーカルを担当、" マイ・マン " " 懐かしき'55年 " " 我が至上の愛 "のようにバラードで聴かせる
ナンバーもしっかりフィーチャーしていて、イーグルス・スタイルがみえてきている
70年代リンダ・ロンシュタットのアルバム・プロデュースに関わったJ.D.サウザーとの共作による
" 我が至上の愛 "は、後にシングル・カットされ全米トップ・チャートを飾っており、イーグルスの
カントリースタイルからの拡張を思考した作品といえる
イーグルスといえば" ホテル・カリフォルニア "になってしまうのが世の常であるが、たった6枚しか
出さなかったオリジナル・アルバムの質の高さは、ビートルズのそれに匹敵するものがある
この3rdアルバムは、楽曲や詞の良さは当然として、すでに彼らの作品作りに対するコンセプチュアルな
姿勢が開花している
プロデューサーの途中交代劇、よりハードなサウンド・アプローチなど彼らのその当時の生き様自体が
このアルバムにダイレクトに反映されている
前作" ならず者 "のようなトータル・コンセプト・アルバムではなく、個々の素晴らしい小品が並ぶ
作品であるが、" お前は星を眺めることはできても、その輝きまでは理解できない奴 だけどもう何もかも
過去の事 今は新たな日に向かって力一杯だよ "と始まる1曲目からとにかく勢いがよい
" 我が至上の愛 "で美しくまとめ上げるまで、人の生き様をハードに表現している
人生に悩んでいたり、自分の方向性が見えなかったり、今まさに岐路に立っている人は是非聴いてほしい