Marc Bolanの人気が頂点に達した
T.REX名義のサード・アルバム
マーク・ボランがもっとも輝いていた時代、グラム・ロックの全盛期でシングル・ヒットを連発して
いた時期に発表されていて、多くにヒット曲を含んでいないのにもかかわらずギラギラに派手さと
キャッチーな楽曲をぎっしりと満載した彼らしい作品である
T.レックスの場合、シングルとアルバムは連動して作られてなく、前作と次作では内省的な部分が
目立っているが、本作ではそれよりも派手さのほうが目立っていて、上昇気流に乗ったかのような勢いの
ようなものも感じさせる
アルバムの内容は、ほぼ前作を踏襲しているのだが、イメージがまったく異なるのはそういった時代の
流れのようなものもあるのだと思う
" クラム・ロックとは何か "の入り口と回答が本作であり、グラム・ロックの作品で素晴らしい作品である
§ Recorded Music §
1 Metal Guru - メタル・グゥルー
2 Mystic Lady - ミスティック・レディ
3 Rock On - ロック・オン
4 The Slider - ザ・スライダー
5 Baby Boomerang - ベイビー・ブーメラン
6 Spaceball Ricochet - スペースボール・リコチェット
7 Buick McKane - ビューイック・マッケイン
8 Telegram Sam - テレグラム・サム
9 Rabbit Fighter - ラビット・ファイター
10 Baby Strange - ベイビー・ストレンジ
11 Ballrooms of Mars - ボールルームス・オブ・マーズ
12 Chariot Choogle - チャリオット・チューグル
13 Main Man - メイン・マン
§ Band Member §
Marc Bolan - マーク・ボラン( Vo,G )
Steve Currie - スティーヴ・カーリー( B )
Mickey Finn - ミッキー・フィン( Per )
Bill Legend - ビル・レジェンド( Ds )
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ヒット曲を連発し時代の寵児となった、まさしくその全盛時に発表されたアルバムで、当時のグラム・
ロック・ブームを象徴する作品であり、前作" 電気の武者 "と双璧を成す彼らの代表作であるといっても
よく、作品の内容的には前作での方向性をそのまま踏襲したものと思ってもらっていい
ルーズ&レイジーなエレクトリック・ブギー/ブルースをベースに、マーク・ボラン自らの出自を改めて
明かすようなフォーク・ロックの要素も随所に散りばめた楽曲を中心に収録されている
先行リリースされたとともに全英チャートで1位を獲得した" テレグラム・サム " " メタル・グゥルー "と
いった楽曲にも特徴的なように、抜群のポップ・センスもまた同様に注入されている
とにかく当時におけるもっとも旬で最先端のポップをまるっとそのままパッケージングした作品であり
ある意味この時代のロック・サウンドのスタンダード、基本フォーマットを形成したものといっていい
ベテランから若手まで、皆んなこぞって彼らのこのスタイルにインスパイアされていたのは間違いない
そういった意味では、この秀逸すぎるカバー・アートのフォト・グラファーとしてリンゴ・スターの
名前がクレジットされているのが本当に象徴的である
彼らと関わりを持つこととがある種のステイタスであったということを、そこはかとなく今に伝える
エピソードであると個人的に感じさせられた
また、この時期のボランの特徴的な歌唱法のも注目で、ウィスパー・ヴォイスを巧みに駆使し、とにかく
スウィートに歌い上げているのが印象的である
フォーク時代の彼、そして今後目指されていくことになあるファンク/ソウル期の彼とは、一味も
二味も異なる" アイドル・ヴォイス "がこの全盛期のT・レックスの魅力のひとつでもある
1972~72年のイギリスのアーティストとその周りを取り巻くプロデューサーやエンジニアの音楽表現に
対する探究心と自己表現に対する向上心、またロック・ファンのレベルの高いニーズなど当時の環境が
生み出したといえるアルバムで、この時代のアーティスト、EL&Pの" タルカス "、第2期ジェフ・ベック・
グループの" ラフ・アンド・レディ"、ディープ・パープルの" マシーン・ヘッド "なども同様に
生み出された印象があり、アーティストの" 力 "以上のものが内に入れ込まれていて絶対的な存在意義を
感じることができる
T・レックスはシングル制作に対するコマーシャルな方向性と、アルバム制作での音楽表現の追求と
方向分けが明確にコントロールされていて、アルバム作りに真摯に取り組んだ結果がそのままアルバムに
反映されている
単純なブギーのリズムとコード展開で巾広い音世界を作り出している本作は、とてもシンプルで
心地よく感じる