ジャズ、ブルース、R&Bなどさまざまなスタイルの音楽を
Donald Fagenの歌という縦糸でまとめた佳作
スティーリー・ダンがバンドの形態を保持した最後のアルバム( それ意向は、ベッカー・フェイゲンの
コンビにスタジオ・ミュージシャンを呼んでアルバムを制作するようになり、ライヴ活動も90年代まで
中止する )
スティーリー・ダン史上最高のヒット曲である" リキの電話番号 "が収録されていることで知られるが
このアルバムはブルージーなタイトル曲はもちろんであるが、ほかの曲も極めて高いクオリティを
有していて、本当に捨て曲がない素晴らしいアルバムである
まだ方向性を模索していた感のある1作目と2作目と比べると、これがスティーリー・ダンの音楽だと
いったような個性が光る
意味不明のジャケットとこれまた意味不明の邦題" さわやか革命 "に当初は困惑したが、一度聴くと
これがギャップになってアルバムの印象を高めるので不思議である
§ Recorded Music §
1 Rikki Don't Lose That Number - リキの電話番号
2 Night by Night - 夜ごと歩きまわるのさ
3 Any Major Dude Will Tell You - 気どりや
4 Barrytown - バリータウンから来た男
5 East St. Louis Toodle-Oo - イースト・セントルイス・トゥードゥル・オー
6 Parker's Band- パーカーズ・バンド
7 Through with Buzz - いけ好かない奴
8 Pretzel Logic - プレッツェル・ロジック
9 With a Gun - 銃さえあればね
10 Charlie Freak - チャーリー・フリーク
11 Monkey in Your Soul ー 君のいたずら
§ Band Member §
Donald Fagen - ドナルド・フェイゲン( Key,Vo )
Walter Becker - ウォルター・ベッカー( B,G,Vo )
Jeff Baxter - ジェフ・バクスター( G )
Denny Dias - デニー・ダイアス( G )
Jim Hodder - ジム・ホッダー( Ds )
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" リキの電話番号 "は前述のようにヒット曲だが、ジャズっぽい雰囲気で転調を繰り返すかなり難解な
作りながら、手応えは爽やかで聴きやすい
" 夜ごと歩きまわるのさ "は前作にあったクロス・オーバー色をさらに深化させたかのような重圧な佳曲、
" 気どりや "はアコースティック・ギターが活躍するよく聴くとフォークぽい" バリータウンから来た男 "
はメロディアスで明るいポップな曲、" イースト・セントルイス… "はそのままジャズのインスト
" パーカーズ・バンド "はチャーリー・パーカーに捧げられた曲だが比較的ストレートなロック・ナンバー
" プリッツェル・ロジック "も彼らしいクロス・オーバー的なポップな曲
バンド形態のスティーリー・ダンは本作を持って最後となり、次作以降はドナルド・フェイゲンと
ウォルター・ベッカー+αのようなレコーディング・グループとなる
このアルバムは初期とそれ以降の過渡期ともいえる時期の作品だが、もっとも聴きやすくて楽しめる
" リキの電話番号 "…おそらく日本の洋楽界で彼らが一般に意識され始めたのもその頃だった
そういう意味で一種記念碑的な作品だといっては語弊があるか…当時、純然たるポップスでもなく
ロックでもない不思議なカテゴリーの音楽という印象だったが、後に発表された彼らの名作群から遡って
本作を聴いてみるとドナルド・フェイゲンのヴォーカルがその頃ほど丸くないのが返って新鮮、コーラス
の導入も後の作品に比べて少なく、緻密さよりはザクッとした手触りが面白い
" 上 "があるだけに世間一般の" 名盤追い "には勧めにくいが、原石の秘めた魅力は充分に感じられ
スティーリー・ダンが" 彩( エイジャ )"や" ガウチョ "への助走を開始したことが伝わってくる
このアルバムがよく知られているのは冒頭の" リキの電話番号 "がテイクされているからだが、全体と
してもコンパクトにまとまり、非常に完成度が高い
フェイゲンとベッカーの2人は前作でスタジオでの完璧を求め始めたが、ここでは自前のメンバーでは
限界がある、超一流を入れないと…という考え方を明確に示している
曲やパートにより演奏者を変え、最適化しようと試みている
どうしても" リキの電話番号 "や" 気どりや "が目立ってしまうが、ジャズを聴くきっかけを作ってくれる
曲がいくつか含まれている