1974年発表のサード・アルバム
全英4位、全米38位を記録したSupertrampの出世作
スーパートランプは1970年代に活躍したグループでプログレッシブ・ロックの範疇に入るかもしれないが
親しみやすく、しかも格調の高い音作りで未だに日本でもファンの多いバンドである
ポップでありながらも深遠さも内包した曲想は、21世紀に聴いても少しも古さを感じさせない
本作では" スーパートランプの声 "といわれるロジャー・ホジソンがフルに活躍している
壮大なタイトル曲" クライム・オブ・センチュリー "や" 貝殻のひとりごと "など時代を超えた名曲
ぞろいで、ヨーロッパ的な音づくりが楽しめる傑作だと思う
§ Recorded Music §
1 School - スクール
2 Bloody Well Right - ブラッディ・ウェル・ライト
3 Hide in Your Shell - 貝殻のひとりごと
4 Asylum - アサイラム
5 Dreamer - ドリーマー
6 Rudy - ルーディ
7 If Eveyone Was Listening - ピエロになるのは誰
8 Crime of the Century - クライム・オブ・センチュリー
§ Band Member §
Rick Davies - リック・デイヴィス( Vo,Key )
Roger Hodgson - ロジャー・ホジソン( Vo,G )
Jhon Helliwell - ジョン・ヘリウェル( Sax )
Dougie Thomson - ダギー・トムソン( B )
Bob Siebenberg - ボブ・シーベンバーグ( Ds )
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それまで鳴かず飛ばずだったスーパートランプが、このアルバムでブレークして全英4位の売り上げを
記録、スーパートランプといえば" ブレックファスト・イン・アメリカ "が有名であるが、これは
本国では全英3位までしか上がらなかったが、日本のオリコンではなんと2位まで上がった
そういう意味では日本人好みのミュージシャンなのかもしれない
ドライではなくウェットな情緒性、フィギュアスケートでいうとテクニックよりも芸術点で稼ぐような
詩情あふれる音楽性が日本人の感性とあっていたのかもしれない
その" ブレックファスト… "に勝るとも劣らないのが、この" クライム・オブ・センチュリー "である
ほとんど外れ曲がないクオリティの高さ、録音の素晴らしさ、どこをとっても欠点が見当たらない
大傑作である
" ブレックファスト・イン・アメリカ "の影に隠れて地味な位置づけになっている作品だが、その大ヒット
作に至るまでの諸作も非常に優れていることはファンなら周知のことであり、本作も" スクール "などは
極めて人気の高い1曲であるし、" 貝殻のひとりごと "も英国伝統のメロディ、ハーモニーを聴かせる
屈指の名曲である
リズム隊がタイトになり、またサックスやハーモニーなどのリード楽器、そして彼らのイメージ通りの
エレピ/ピアノなど演奏面でのスケールアップが一聴してわかる
またそれに伴って楽曲もより引き締まった印象があり、ポップさは倍増して前作までの散漫な部分は
ほぼ払拭されている…バンドは見事な再出発を遂げたといっていい
プログレかつポップな音作りで一斉を風靡したスーパートランプ、彼らがアメリカで大成功する前
初期の大傑作がこのアルバムで、冒頭の" スクール "とラストの" クライム・オブ・センチュリー "
この2曲だけでもこのアルバムの価値は充分にある
特に後者の美しさと深遠さ、聴き手の精神をブラックホールに呑み込むような吸引力はロックの奇跡の
ひとつとも思う
ピンク・フロイドの" 神秘 "やキース・ジャレットのソロにも、この手の魔力を感じることがあるが
これをたかが5分間でやってのけるところが凄いわけで、その後よりポップになっていくスーパー
トランプではこれを超える作品はないと思う
当時のイエスがSF的空間を創造したとすれば、ここでの彼らは精神的宇宙を描いているようで、
今思っても確かに70年代のロックはひとつの頂きを極めていた
その証拠のひとつを示してくれるのがこのアルバムだと思う