ブルージーかつヘヴィな英プログレッシブ・ロック
文句なしの大名盤
ドラマー兼ヴォーカリストの中心的人物ピーター・ダントンは、B級ハード・ロック界御用達ギタリスト
のエイドリアン・ガーヴィッツ率いるガンへ参加、それから1970年初頭にベーシストのバーナード・
ジンクス、並びにギタリストのキース・ロウを誘いこのT.2を結成するに至っている
冒頭のオープニング曲から強烈なインパクトを誇り、決めのリフとハードなインプロヴィゼーションの
応酬は、エッジの効いた硬質なギターと唸りを上げる重低音ベース、兎にも角にも手数の多い驚異的な
ドラミングが炸裂し、大音量で聴くほどに躍動する8分30秒を一気に押し切る
§ Recorded Music §
1 In Circles - イン・サークルズ
2 J.L.T. - JLT
3 No More White Horses - ノー・モア・ホワイト・ホーシズ
4 Morning - モーニング
§ Band Member §
Keith Cross - キース・クロス( G,Key )
Peter Dunton - ピーター・ダントン( Ds,Vo )
Bernard Jinks - バーナード・ジンクス( B )
T.2というバンドはハード・ロックに分類されることが多いが、ハード・ロックとだけ言い切ってしまうと
なにか言い足りないような、このバンドの音を充分に説明できないような気がする
確かにディープ・パープルばりの疾走感ある演奏は魅力であるが、そうかと思うと、そこへ冷や水を
浴びせかけるように寂しげな展開がフッと現れたりする
手数の多いドラマーのピーター・ダントンがボーカルを兼任しているが、その唱法は決してシャウト
することのないものだ
ギターのキース・クロスは火の出るようなプレイを披露するも、一方でメロトロンなどの鍵盤楽器も
兼任しており、哀感をたたえたフレーズをポツリポツリと紡ぎ出している
ハードの攻めてきたかと思うとアコースティック楽器による静的な場面が現れ、しだいに強くなっていく
ドラミングとともに動的なパートが入り乱れるといった展開には、定型にとらわれたところがない
T.2の演奏を聴いていると、ハード・ロックの要素は含みつつも決して熱くならない非常に冷めた印象を
受け、どこか虚ろな感じさえする
アルバム全体のトーンを支配しているのは、このひんやりとした理性のようなものではないかと思う
1970年に発表されたT.2唯一のアルバムで、ギター、ベース、ドラムスのトリオ編成であるが、
多重録音によると思われるキーボードやプラスがかぶさっている
クリーム時代のエリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスが好きな人にはお勧めのアルバムで、
70年代のイタリアン・ロックが好きな人には、オザンナを彷彿させるギター・テクニックが満載している
ちょうど1970年代は、ブリティッシュ・アンダーグラウンド・シーンの要が続々とデビューしていて
ジェントル・ジャイアントやクレシダなど独特のブリティッシュ節を展開している
T.2はハード・ロックでもあるし、プログレッシブ・ロック、ジャズ・ロックのエッセンスを含んでいる
デビュー当時は酷評されていたが、今現在、聴き直してみると70年代のロック魂を感じさせる元気よさを
感じさせ、改めて良き時代を再確認できるアルバムであり貴重である