結成10年目に見事な復活を果たしたCheap Trickの大ヒット・アルバム
彼らの長い歴史の中でも、先の大ヒット曲を含めて異色な作品であることは確かだが、違和感は
感じられないどころか代表作として認識されている作品である
彼らには不似合いな円熟味のようなものも感じられるが、それも味として昇華されている
ミックスのよさも特筆するもので、遠慮なくギターを一歩引かせてヴォーカルを全面に出している
演奏も文字通りシンプル・イズ・ベストが徹底されていて、グループ主導ならありえない音像、従って
ファンとしては物足りない部分もあるはずだが、これなくしてチープ・トリックの復活もなかったわけで
プロに徹した作品と捉えられると思う
§ Recorded Music §
1 Let Go - レット・ゴー
2 No Mercy - ノー・マーシー
3 The Flame - 永遠の愛の炎
4 Space - スペース
5 Never Had a Lot to Lose - ネヴァー・ハド・ア・ロット・トゥ・ルーズ
6 Don't Be Cruel - 冷たくしないで
7 Wrong Side of Love - ロング・サイド・オブ・ラヴ
8 All We Need is a Dream - 夢こそはすべて
9 Ghost Town - ゴースト・タウン
10 All Wound Up - オール・ワウンド・アップ
§ Band Member §
Robin Zander - ロビン・サンダー( Vo,G )
Rick Nielsen - リック・ニールセン( G )
Tom Petersson - トム・ピーターソン( B )
Bun E. Carlos - バン・E・カルロス( Ds )
|
石にかじりついても売れてやる…これが当時のメンバー全体合意ではなかったかと思う
彼らのユーザー層は大きく二つに分かれていて、ひとつがロック・クラシックのマニア的リスナーで
もうひとつがメロディ重視のヒット・チャート・ファン
器用に何でもこなせるせいで、60年代ビートと流行りのポップスを大きく振幅するのが彼らの特徴であり
言い換えると弱点でもあった
このアルバムは80年代の音楽制作システムを最大限利用しながら流行歌をつくろうとする強い意志が
あふれていて、ソング・ライティング・スタッフの作った曲、カバー曲を配置しながら最初と最後は
自作曲になっている
結局彼らは何れこの路線と決別することになるが、流行と距離を置き趣味的になることを選ばなかった
" レット・ゴー "はビートルズ直系の楽曲をハード・ロックに仕上げたような佳曲で、抜けの良いスネア
には80年代の残り香も感じられるが、総じてシンプルかつスッキリしたヴォーカル主体のミックスが
施されていて、前作のごちゃごちゃしたサウンドからの改善が図られている
" ノー・マーシー "は逆に前作の流れを感じさせるインパクトで、サウンド重視の曲ながらミックスが
別物なだけにかなり違った印象を受ける
" 永遠の愛の炎 "はいうまでもなく最大にヒット曲で、従来の彼らにない曲調で外部のソングライターを
使用してグループの巾を広げる結果となり、ヴォーカルもギターのフレーズもそのすべてが印象的な
名曲である
パワー・バラードという名称が一般化するきっかけにもなった" 永遠の愛の炎 "はグループとして初の
全米1位を記録、低迷しきっていたグループに再ブレイクの機会を与えるとともに、グループ自身の
記録までも塗り替えた
この曲は日本でもCMで使用され印象的なメロディ、ヴォーカルがテレビから頻繁に流れていた
この曲でチープ・トリックを知った人も多かったはずで、グループとしてもトム・ピーターソンが
復帰してオリジナル・メンバーに戻った体制となり、いろいろな意味でいい時代に大ヒットが生まれた
結果となった
半数以上の楽曲を外部のソングライターの手によるものにするなど、ほとんど背水の陣のような格好で
挑んだ作品であったが、前作からのハード・ロック志向も継続されていて、決して暗雲に作られた
ものではないことは理解できる