コンパクトな編成のハード・ロック・バンドのデビュー・アルバム
後のスーパー・ギタリスト Allan Holdsworthの実質デビュー作
1973年発表のファースト・アルバム、コロシアムのジョン・ハイズマンが6人編成という大所帯の
グループに限界を感じて結成されたといわれるハード・ロック・グループ
当初は同じコロシアムのマーク・クラーク、デイヴ・クレムソンのトリオ編成を計画していたものの
トラブルによって崩壊、コロシアム解散後デイヴはハンブル・パイへ、クラークはユーライア・ヒープへ
移籍、ハイズマンは再度トリオ編成のグループを計画しクラークを呼び戻し、ギタリストとしてアラン・
ホールズワースという布陣でリハーサルするものの、クラークのヴォーカルが弱かったため、ポール・
ウィリアムスというコロシアム時代のクリス・ファーロウと同格ともいえる名ヴォーカリストが参加
テンペストの結成と至った
全体的にはポールのヴォーカルをメインにおいたハード・ロックだが、このメンバーから察するように
ときにジャズ・ロック/クロスオーヴァー的なプレイも聴かれる
もちろんそれもコンパクトに抑えられているため特にジャズ・ロック的に聴く必要はないが、その匂いが
本作の強い魅力になっていることも間違いない
§ Recorded Music §
1 Gorgon - ゴルゴン
2 Foyers of Fun - フォイヤーズ・オブ・ファン
3 Dark House - 暗黒の家
4 Brothers - ブラザーズ
5 Up and On - アップ・アンド・オン
6 Grey and Black - 灰色と黒色
7 Strangeher - ストレンジハー
8 Upon Tomorrow - アポン・トゥモロウ
§ Band Member §
Paul Williams - ポール・ウィリアムス( Vo )
Allan Holdsworth - アラン・ホールズワース( G )
Mark Ckarke - マーク・クラーク( B,Vo,Key )
Jon Hiseman - ジョン・ハイズマン( Ds )
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その奇妙なギター奏法は、当時のギター・キッズの脳天をカチ割り、何をどうやっているのか訳が
わからず、しかし、どんどん深みに嵌っていく、そんな度肝を抜かれる衝撃的で何ともいえない魅力を
発するものだった
このテンペストは、ミディアム・テンポの曲が多いが、その音空間をジョン・ハイズマンのスピード感
あふれるフィルインとホールズワースの流麗なフレーズが絡み合う至福の時間帯を満喫させてくれる
将来を予感させるテンションの効いた和音が不気味なモンスターの出現を彷彿させる
後のヘヴィ・メタル系ギタリストにも多大な影響をももたらした偉大な作品で、この後メンバーになる
もうひとりのギタリスト、オリー・ハルソールよりホールズワースは、アーミングの影響を受ける
ことになり、そのギター・プレイはエベレスト級に発展することになる
結成当時のテンペストの音楽はとてもユニークで、まずリーダーのジョン・ハイズマンのドラミングは
手数が多いタイプで、今の耳で聴けばもう少し抑えてもいいのにと思えるが、技術水準はかなり高い
トニー・ウィリアムスやジャック・ディジョネット、ビリー・コブハム、レニー・ホワイトなどの
ジャズ系のテクニック・ドラマーたちがジャズサイドからビート、ビート的アプローチを始めた頃、
ロック・ミュージックからジャズ的アプローチへの接近、その先駆者の一人がこのジョン・ハイズマンで
あったといえる
このアルバムでも、まるでエルビン・ジョーンズのようなフレーズが聴けたりする
そして、テンペストの音楽をもっとも特徴づけているのは、ギターのアラン・ホールズワースの
とんでもないプレイで、ホールズワースの最高のプレイが聴けるのはこのアルバムだと思う
ホールズワースはプリング・オン、プリング・オフを多用したとてつもなく早くて流麗なフレージングを
組み立てるので高名なギタリストだが、このアルバム以外のホールズワースは、流麗すぎて引っ掛かる
ものがないというか、なにかかけているように感じられピンとこない
でも、このアルバムでのホールズワースは違って、よく唄い、よく盛り上げている