ヘヴィかつタイトな演奏の中でキャッチーで
ポップな感覚が光る隠れ名盤
デビュー作となる前作は超絶技巧の新星、アラン・ホールズワースを大フィーチャーした作品だったが
今作も" 唄える超絶技巧ギタリスト "オリー・ハルソールを全面に押し出して、負けず劣らずの力作に
なっている
このオリー・ハルソールのギターはもちろんだが声が非常によく、ジョー・コッカーをほんの少し軽めに
したようなハスキー・ヴォイスで男っぽさをフルに出して唄っている
しかも曲調がポップな作りのものが多く、1973年、74年という時代を考えても、なぜ売れなかったのか
と思えてきて仕方がないほどに素晴らしい出来栄えのアルバムである
§ Recorded Music §
1 Funeral Empire - 冥宮の葬列
2 Paperback Writer - ペーパーバック・ライター
3 Stargazer - 空想への旅
4 Dance to My Tune - ダンス・トゥ・マイ・チューン
5 Living in Fear - 眩暈
6 Yeah Yeah Yeah - イエー・イエー・イエー
7 Waiting for a Miracle - 幻の偶像
8 Turn Around - ターン・アラウンド
§ Band Member §
Ollie Halsall - オリー・ハルソール( G,Key,Vo )
Mark Clarke - マーク・クラーク( B,Vo )
Jon Hiseman - ジョン・ハイズマン( Ds )
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名の知られたジャズ・メンたちが突然おかしなロックン・ロールをやり始めた…そんなバンドで一番
おもしろいと思う作品、前作ではアラン・ホールズワースの超絶ギターが額面通りの美をもってほかを
圧倒するならば、ここでのオリー・ハルソールは超、超絶の美である
アラン以上の腕前の美にハルソールはあえて" 汚し "あるいは" 崩し "を加え、しかもそれを聴くものに
悟られぬよう素知らぬ顔でロック・ギタリスト然と高笑いしているフシさえある
パトウーでの彼もその意味で変態度は高いが、こういう彼のような高度な音楽好き、しかも加えて
楽器が上手い人は概して商業的成功はしないものだが、それはそう出来ないのではなく彼らがそう
" しない "のある
このアルバムで聴かれる必要最小限ともいえるトリオでの演奏はスピード感やダイナミクスという点に
おいても前作以上であり、スター・プレイヤーがいなくともまったく遜色のない演奏と素晴らしい曲が
出来るのだということを示しているかのようだ
一番の聴きものはハード・ロック化したビートルズ・ナンバーの" ペーパーバック・ライター "で
スリル満点のスピード感あふれる演奏が聴きものだが" 空想への旅 "のようなオリジナルもいい出来である
またハルソールの長いギター・ソロが聴かれる" ダンス・トゥ・マイ・チューン "も聴きもので
ホールズワースとは一味違った旨味のある速弾きは彼のギタリストとしての実力を思い知らされる
ホールズワース以上にうねりまくるナチュナル・ディストーションでダイナミックなギターは聴き応え
があり、最後の" ターン・アラウンド "もテクニカルなハード・ロックとしてヴァン・ヘイレンクラス
だと思う
このアルバムではアラン・ホールズワースとポール・ウィリアムズを擁した前作とはまったく別な
味わいのファンキー&ソリッドなロックン・ロール・バンドにヴァージョン・アップされている
トリオ編成になったぶん非常にシンプルかつコンパクトで引き締まったサウンドになっている
この作品は、とにかくバンドに異質で多彩な要素を持ち込んだ2代目ギタリストオリー・ハルソールの
活躍に尽きていて、当時複雑でテクニカルでありながらポップでノリノリに聴こえるモントローズを
想起していた
ムーグ・シンセを使ったハルソール作のシンフォニックな" 幻の偶像 "はユーモアと躍動感のある名曲、
そのハルソールは後に長らくあのカンタベリーの重鎮ケヴィン・エアーズの片腕になるが、そちらでも
異能派としてのユーティリティぶりを存分に発揮している
この作品はオリー・ハルソールの独り舞台かのように聞こえてくる時すらあるほどだが、やはり
ジョン・ハイズマンとマーク・クラークが居てでのこと…トリオ演奏は深い
結局テンペストはこのアルバムで解散し、小編成でのロック・バンドというジョン・ハイズマンの
思惑はこの最小限のトリオ編成ということで決着がついた