クラシカルかつファンタスティックなアイルランドの名バンドFRUUPP
放題" 当世仮面舞踏会 " 1975年リリース
1975年発表の4作目で" 当世仮面舞踏会 "の放題でも親しまれている彼らの代表作にしてラスト作
前作を最後にソングライティングの中心メンバーだったステファン・ホストンが脱退し、新たに
ジョン・メイスンが参加、元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドがプロデュースを担当し
サックスも演奏していることもあって本作の人気はかなり高いといえるが、内容的にも彼らの最高傑作
として申し分のないものである
ただし前作まで印象的なオーボエや各種鍵盤の演奏ほか、楽曲の大半を手掛けていたステファンの参加が
ないため、本作でのみこのグループのすべての魅力を理解できるとはいい難い
従って、もし本作に魅力を感じたのであれば順に過去の作品を辿っていくことも面白いと思う
§ Recorded Music §
1 Misty Morning - 朝もやの小径
2 Masquerading with Dawn - 夜明けのマスカレード
3 Gormenghast - ゴーメンガースト
4 Mystery Might - ミステリー・マイト
5 Why - 何故
6 Janet Planet - ジャネットの惑星
7 Sheba's Song - シェバの歌声
§ Band Member §
Peter Farrelly - ピーター・ファレリー( Vo,B )
John Mason - ジョン・メイソン( Key )
Vincent McCusker - ヴィンセント・マッカースカー( G )
Martin Foye - マーティン・フォイ( Ds )
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本作はいわばプログレの総本山であるキング・クリムゾンの事実上の創始者であるイアン・マクドナルト
が手掛けていることもあってか冒頭からいかにもなフレーズが連発されるが、これは本来の彼らの
持ち味とはやや違うものであり、また新メンバーのヴィブラフォンなどサウンド面でも大きな変化が
感じられる
本作においても彼らの持ち味とも欠点ともいえる素朴さはそのままに、少しだけ洗練された演奏は
日本人が絶対に好むであろう哀愁のメロディを奏で続ける
" ゴーメンガースト "では初めてカンタベリー・ミュージック的なサウンドも登場していて、時代を
考えればその後の展開もあり得たと思うが、本作で最後になってしまった
" 当世仮面舞踏会 "は、前作" 太陽の王子 "とともにバンドの代表作として名高い名作で、冒頭の泣きの
ギター・メロディからしてもうたまらない
アコースティカルな響きにかぶさるメロトロンやソリーナのシンセ、この繊細な叙情美には、ただ
もう涙あるのみである
初期の2作に比べるとずいぶん洗練されてきて、メロディを活かすコンパクトな楽曲アレンジが全体と
しての聴きやすさにつながっている
素朴な田舎っぽさを残しつつ、たおやかなピアノの音色やキャッチーなコーラスなどには、70年代
ロックの柔らかなメロディアスさがあり、耳心地の良さも抜群である
このバンドの持ち味である素朴さの魅力というのは充分に発揮されているが、今までのアルバムに比べ
シリアスさが増した印象である
地味すぎて合わないという人もいるかもしれないが、日本人にはぴったりな染み入るようなサウンドだ
一聴してプログレッシブ・ロックと分かるサウンドだが、複雑にも派手にも感じられない
その要因は英国の伝統的なフォーク、トラッド・ミュージックを基盤としていて、それを大切にした
素直な手法でプログレッシブ・ロックのアプローチを施しているからであろう
ただ、その方法に終止しているあまり、大人し過ぎる嫌いがあり、後半の元気な曲も、その単調さの中で
浮いてしまっている感がある
イアン・マクドナルドのプロデュースがプンプンと香ってくるが、グループの個性であるなんとも
英国チックで繊細なサウンドは継承されているが、クリムゾンの初期には似ているがどこか違う
プログレ・ファンなら持っていて損のないアルバムで、特に" ゴーメンガースト "は何ともいえない
ジャージーな名曲、穏やかに嫋やかに心地よい