強盗のショットガンに倒れ、一時は再起不能かと
危ぶまれたGuitar Specialistの復帰作
いつものラリー・カールトンの音とは違った音を聴かせてくれていて、このアルバムはラリー・
カールトンが銃で撃たれ復帰したときの作品である
まさに" オン・ソリッド・グラウンド "で地に足をつけた曲で編成されたアルバムである
ハード・ロック調のギターの音がとても聴いていて思わずその音にノッてしまう
ラリー・カールトンの数あるアルバムの中でも秀でたアルバムの1枚だと思う
ラリー・カールトンの特徴といえば、何といってもギタリストとしての表現力、具体的にいうと歌心
あふれるフレージングの見事さといえる
ムダのないアドリブラインの組み立て方は速弾きの必要性をほとんど感じさせないというか、もちろん
速弾きもあるが、シンプルなフレーズにこそラリー・カールトンのオリジナリティが発揮される
§ Recorded Music §
1 Josie - ジョシー
2 All in Good Time - オール・イン・グッド・タイム
3 Philosopher - フィロソフィー
4 Layla - いとしのレイラ
5 On Solid Ground - オン・ソリッド・グラウンド
6 The Waffer - ワッファー
7 Bubble Shuffle - バブル・シャッフル
8 Chapter Ⅱ - チャプターⅡ
9 Honey Samba - ハニー・サンバ
10 Sea Space - シー・スペース
§ Personnel §
Larry Carlton - ラリー・カールトン( G )
Terry Trotter - テリー・トロッター( Key )
John Robinson - ジョン・ロビンソン( Ds )
Kirk Whalum - カーク・ホェイラム( Sax )
Abraham Laboriel - エイブラハム・ラボリエル( B )
Nathan East - ネイザン・イースト( B )
David Foster - デヴィッド・フォスター( Key )
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暴漢に銃撃されギタリストとしての生命が危ぶまれたが、見事に音楽シーンに戻ってきた復帰作、一時は
指が動かなくなるとまでいわれた状況を懸命のリハビリにより克服している
アルバムの印象としては、暴漢事件による影響はまったくといっていいほどみられず、心配された
演奏面もまったく問題はない
彼のアルバムの優れているところは楽曲とサウンドの素晴らしさで、スーパー・ギタリストにありがちな
無意味で無機質な速弾きフレーズやダラダラとした部分はまったくない
ギターにフレーズのひとつひとつに表情、意味がありとても深く、特にこのアルバムについては楽曲の
粒がそろっていて、カールトンの作品の中でもベストの部類に入る
後の" レネゲイド・ジェントルマン "ほどのハードさはないが、初期の" 夜の彷徨 " " ストライクス・
トワイス "とは確実に違い、一つ一つの作品、演奏に大人の余裕が感じられる
内容は、ラリー・カールトンらしいひたすら上質なフュージョン・ギター作品で、特にカールトンの
ギターは1音1音にエモーションが込められたようである
一命を取り留めた喜びや、生きていることへの感謝など正気を感じさせられる演奏である
スティーリー・ダンのカバー" ジョシー "、カールトンのギターが心地よく歌う" オール・イン・
グッド・タイム " " ハニー・サンバ "、デレク&ザ・ドミノズの名曲カバー" いとしのレイラ "、スローに
哀愁、叙情を奏でるギター・バラード" オン・ソリッド・グラウンド " " チャプターⅡ "など、全編に
わたって心地よいアルバムになっている
円熟を感じさせる音楽&フィーリングの込められた演奏が楽しめる好盤で、グラミー賞にノミネート
された作品、ラリー・カールトン・ファン、フュージョン・ギター・ファンにとっては満足度の高い
1枚だと思う
バックアップ・ミュージシャンが若返ったためか、この手の演奏を何事もなくプレイしてしまうのは
1980年代後半を感じさせる
1970年代後半には新鮮味のあった技巧派スタジオ・ミュージシャンたちは脚光を浴びたが、味のある
プレイヤーにはなれず流行りで早々にフュージョンは終了してしまう
それは音楽産業の衰退をも意味していた
ラリー・カールトンは、独自のプレイ・スタイルがあり存在感のあるギタリストだと思う
このアルバムは、今までのプレイとこれからのプレイというのを示している
多少ギタリストにありがちな独りよがりなところはあるが、わりと客観的な面もあっておもしろい