ツイン・キーボード ギター・レスというバンド編成で
その分ベースとメロトロンが大活躍する
元コロシアム、キング・クリムゾン、サムライで活躍していた腕利きのプレイヤーによって結成された
英国出身のプログレ・バンドの1973年発表のデビュー作で、このバンドの特徴は何といってもギター・
レスのツイン・キーボードという特異な編成にある
ピアノ、オルガン、メロトロンといったヴィンテージ・サウンドを目一杯駆使し繰り出されるサウンドは
ときにはポップで軽快に、またあるときはけたたましくヘヴィに表情を変えながら縦横無尽に駆け巡り
構築されるスケール感はとにかく大きい
楽曲はクラシカルっぽさ、ジャージーっぽさを見せつつも、いかにも英国風で陰がかり、湿り気を
帯びながらも親しみやすくユーモラスなメロディにあふれている
最近のシンセサイザーではまず感じられないであろうアナログ・キーボードの魅力をたっぷり教えて
くれるユニークな作品だ
§ Recorded Music §
1 Feathered Friends - 翼のある友
2 An English Western - イングリッシュマン・ウェスタン
3 Drowning Man - ドロウニング・マン
4 Temple Song - テンプル・ソング
5 Melange - メイラーンジ
6 What Are You Doin' to Me - ホワット・アー・ユー・ドゥーイン・トゥ・ミー
7 Sundance - サンダンス
§ Band Member §
Dave Lawson - デイヴ・ローソン( Key,Vo )
Dave Greenslade - デイヴ・グリーンスレイド( Key )
Tony Reeves - トニー・リーヴス( B )
Andrew McCulloch - アンドリュー・マカロック( Ds )
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元コロシアムのデイヴ・グリーンスレイド、トニー・リーヴス、元キング・クリムゾンのアンドリュー・
マカロック、元サムライのデイヴ・ローソンというメンバーだが、出自から想像するスリリングな
インタープレイ応酬の複雑なプログレという音ではなく、割と耳障りの良いアンサンブルで聴かせる
メロディアスでリリカルなヴォーカル入りのプログレを演っているが、ところどころに各プレイヤーの
テクニックを感じさせる小技が効いていて、さすがに演奏レベルは高い
ツイン・キーボードということでピアノ、オルガン、メロトロンが鳴りまくるが、それぞれの鍵盤楽器の
音色自体の心地良さがまず耳に残る
鳴りまくりといってもゴチャッとしたカオス感はなく、役割が整理されてある種スッキリとした
アレンジで聴きやすい
EL&Pのようにテクニカルに弾き倒す感じではなく、あくまでも叙情たっぷりにメロディを重ねる感じで
オルガンやメロトロンといった温かみのある音色を上品にブレンドしていて、非常にイギリスらしい
音像、ドラムとベースも変拍子や難易度の高いキメなどをあくまでポップにまとめていて、小難しくなく
聴くことができ、演奏は基本的にハイテンションでジャズ・ロック風味はあまりなく結構ハード、
ギターがいないのにブルージーというのはこのバンド独特である
のっけからメロトロンとオルガンが気持ち良いポップかつドラマティックな" 翼のある友 "で幕を開け
叙情的な曲調とソロ・パート含めトニー・リーヴスのベースが非常に印象的な" メイラーンジ "、
ギター・レスながらオルガンがヘヴィな演出するいかにも英国らしい雰囲気でサビへの入りのグルーヴィ
な展開がいい" ホワット・アー・ユー・ドゥーイン・トゥ・ミー "など、ヴィンテージな鍵盤の音色が
気持ちいい70年代のプログレッシブ・ロックの良作である
ギター・レス、ツイン・キーボードという特異な編成を持っていて、それだけでも興味が沸くが、一見
地味そうでかなりの強者が揃った演奏は聴き応えがある
半分歌ものであり、インスト・パートよりもそちらのほうが印象が強く決してマニアックな感じはしない
インスト・パートはやはりキーボードが主体であり、メロトロンやオルガンなどこの時代のサウンドを
印象的な旋律を伴って披露している
トニーのベース・プレイも大活躍していて聴きどころとなっている
元コロシアムが2人もいるわけだが、ほとんどコロシアムの雰囲気はなく、そもそもジャズ・ロック的な
要素は少なくポップ寄りのプログレ的なグループと思ってもらっていい
サウンドは陽的な明るいものが多く、何やら賛美歌のような雰囲気が漂っている曲もある
キーボード2人というゴチャゴチャしたイメージを持つかもしれないが、役割がきちっと分けられて
いて、かなりムダのない洗練された曲、演奏になっている