Frank Zappaには、この世に音楽で表現できないものはないと
いうほどの勢いとあふれる想像力を感じることができる
1975年発表でザ・マザーズ・オブ・インヴェンション名義の作品、フランク・ザッパのギターを中心に
なめらかな音の印象とは裏腹な堅固としかいいようのないアンサンブルを作り上げている
超絶変拍子アンサンブルは1曲目から全開で、さらにはポップな聴き心地すらある隙きの無さ、
ナンセンスな歌詞にのせてとびきりのギター・ソロやハイテク・アンサンブルの競演が惜しげなく
繰り広げられる
豊かな音楽が生き生きと繰り広げられる大傑作で、古びることのない豊穣なるロックであり、遊んで
いるのに隙がないという達人の技である
§ Recorded Music §
1 Inca Roads - インカ・ローズ
2 Can't Afford No Shoes - キャント・アフォード・ノー・シューズ
3 Sofa No.1 - ソファ No.1
4 Po-Jama People ー ポ・ジャマ・ピープル
5 Florentine Pogen - フロレンティン・ポーゲン
6 Evelyn,a Modified Dog - エヴェリン,ア・モディファイド・ドッグ
7 San Ber'dino - サン・ベルディーノ
8 Andy - アンディ
9 Sofa No.2 - ソファ No.2
§ Personnel §
Frank Zappa - フランク・ザッパ( G,Vo )
George Duke - ジョージ・デューク( Key )
Napoleon Murphy Brock - ナポレオン・マーフィー・ブロック( Flu,Sax )
Ruth Underwood - ルース・アンダーウッド( Marimba )
Chester Thompson - チェスター・トンプソン( Ds )
Tom Fowler - トム・ファウラー( B )
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本作にはジョージ・デュークを始めとしてルース・アンダーウッド、ナポレオン・マーフィー・ブロック
チェスター・トンプソンなど、歴代のマザーズの中でも一流のプレイヤーたちの共演により比類ない
緊張感と完成度を擁しているので、ただ単にザッパらしさが好きな部分とは違う
上記のメンバーの演奏能力は見事なもので、とりわけジョージ・デュークはやはりすごく、この人には
本当に独特の音空間認識能力たるものがあるんだと思う
パズルとピースを埋め込むように( 枠のないフィーリング上のパズル )、絶妙すぎるタッチで曲自体を
一段も二段も上のハイセンスなものにしてくれる
そして紅一点ルース・アンダーウッド、彼女の弾力的で創造的なマリンバが本作にもたらす貢献度は
計り知れない
フランク・ザッパという人物の音楽へ対するあくなき追求心には本当に限りなく、そしてそんな人の
周りにはやっぱりすごい人達が集まると強く思える1枚である
冒頭のオープニングから変拍子とポリリズムが病みつきになるオリエンタル調の" インカ・ローズ "に
始まり、ブルージーなインストゥルメンタル曲にドイツ語で歌入りのオーラスを締める" ソファNo.2 "
までフランク・ザッパ・ワールド満載の全9曲、流麗でフリーキーに展開する" ポ・ジャマ・ピープル "も
聴きどころのひとつといえる
しかし、本作中で特筆すべきは間髪入れずに連続演奏される2曲目" キャント・アフォード・ノー・
シューズ "と対を成し、独特のブレイクと黒っぽさ加減に緊張感とも文句ないブギー・ナンバーであり
地元警察の囮捜査にまんまと引っ掛けられて猥褻物制作の容疑( 無罪 )で御用となった1962年
その名もサン・バーナディーの刑務所で10日間勾留刑に服した想い出をここで歌にしている
" フリーク・アウト " " アンクル・ミート "などのサイケな側面をジャズ・ファンク編成でごった煮状態
にし、どんどん煮詰めてしまった奇跡のポップ・アルバムで、コンパクトで聴きやすいという面も
ありつつ、圧縮された時間の中にいつもの奇想天外な音世界が詰め込まれていて、ジェットコースターに
乗せられているような感覚に陥る
70年代中盤にありながら、60年代サイケを堂々とビルドアップさせたような" 空気読めない感 "が
フランク・ザッパの真骨頂、1曲目のラウンジ感は現代のポストロックにも通ずる
現代音楽とロックとビバップとクラシックとアメリカン・エッセンスをザッパの頭にぶち込み、そこから
ほとばしるザッパ・ワールドは完全に五線譜の中からあふれ出る
さまざまなミュージシャンへの影響とその卓越したテクニックはまさに音楽そのものを背後から混濁
ティングしながら片髭を上げながらほくそ笑んでる姿が見える
1973年から1974年はロックがもっとも創造的でエネルギッシュな時代だった