Atomic Roosterの1970年発表のデビュー・アルバム
ブリティッシュ・ロック・バンド、アトミック・ルースターのファースト・アルバムで、オルガンを
中心にしたギター・レスのトリオ編成ながらEL&Pのようなテクニカル志向ではなく、あくまでもハード
ロック、そしてブルース・ロック的な質感で聴かせるサウンドである
ドラムを叩くのは後にEL&Pに加入するカール・パーマーで、手数の多いドラミングはこのサウンドの
核になっている
朗々とした歌声とほのぼのとしたオルガンの音色のギャップがある意味個性的で、フルート入りの曲も
この直後、ニック・グラハムが音楽性の相違から、そしてカール・パーマーがEL&P結成のため脱退、
後任として元アンドロメダのギタリスト、ジョン・カンと、ドラムスのポール・ハモンドが加入した
§ Recorded Music §
1 Friday 13th - 13日の金曜日
2 And So to Bed - アンド・ソウ・トゥ・ベッド
3 Broken Wings - 傷だらけの翼
4 Before Tomorrow - ビフォア・トゥモロウ
5 Banstead - バンステッド
6 S.L.Y. - S.L.Y.
7 Winter - ウィンター
8 Decline & Fall - ディクライン・アンド・フォール
§ Band Member §
Vincent Crane - ヴィンセント・クレイン( Key )
Carl Palmer - カール・パーマー( Ds )
Nick Graham - ニック・グラハム( B,Vo,Flt )
John Du Cann - ジョン・カン( G,Vo )
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基本ナイス、EL&Pやクォーターマス同様のキーボード・トリオだが、ニック・グラハムはかなりの曲で
ギターも披露していてブルース・ベースのハード・ロック的感触が強く、グラハムがギターを操るときは
ヴィンセントがベース・ペダルを踏んでいるようだ
音楽的中心はヴィンセントで、クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン時代から直結する
メロディが出てきたりする
ジョン・メイオールのアンニョイな歌" 傷だらけの翼 "がおもいっきりダイナミックにカバーされていて
" いざ出陣のとき、今城門は開かれる "な巨編スペクタクルなブラス群に導かれ、グラハムは野獣のように
ブルースをがなり立て、ゆっくりと高揚する展開が圧巻である
カール・パーマーが本作発表後に脱退しEL&Pを結成させることから、その流れでのみ有名なグループと
いう印象もあるが、このグループを中心に捉えてみるとカール・パーマーの存在はさほど重要ではなく
活動は80年初頭まで続く中堅のグループであり、90年末には再結成もしている
クレイジー・ワールドでも大半の曲を手掛けていたヴィンセントが中心になっているため楽曲そのものは
その延長線上であり、彼のヴォーカルもクセは少ないもののかなりいい線をいっている
どうしてもキース・エマーソンの両グループと比較されてしまうので分が悪くなってしまうが、比較的
洗練されたオルガン系アート・ロックという意味ではかなり楽しめる作品である
先のグループと比較すれば小さくまとまっている印象だが、大袈裟なところがない分だけストレートな
印象があり、作品としても上質な部類に入る
カール・パーマーが在籍していたことでプログレで語られているが、実際はヴォーカル入りのブルース・
ジャズ・ロックといった趣で、若干実験的な要素もあるが曲調は" 俺らこれでいくぜ "的で基本ロックを
感じる…今聴くと古臭さは否めないが
カール・パーマー・ファンやブリティッシュ・ロック好きの人は聴いておいて損はないと思う
このグループもメンバーの変動が激しく、メンバーの変化によって大きく音楽性を変えるのでどれが
一番かは判断が難しいが、本作は間違いなくベストのひとつであって、宮廷音楽風のブラスも入った
ブルース調の" ウィンター "やポコポコ鳴り響くパーカッションの上をフルートが鳴り響くエキゾチックな
" ディクライン・アンド・フォール "などのオルガン・ロックと言い切るには躊躇するような多彩な一面も
みせている