アルバム全編で1曲という大作となった
1973年のコンセプト・アルバム
" ジェラルドの汚れなき世界 "に引き続き大作を擁したトータル・コンセプト・アルバムだが、その内容の
難解さは前作の比ではない
キリストの受難劇をモチーフにした本作は、ポピュラー・ミュージックが本来的に持つ娯楽性を極力
廃しているにもかかわらず、1973年というプログレ全盛期と相まって全米1位という快挙を成し遂げて
いて、高い芸術性を志向した作品でもヒットするという格好の例となった
作詞、作曲、アレンジ、演奏技術とどれをとっても申し分なく、当時最高水準を保っていたプログレの
中でも傑作の部類に入る
前作を陽とすれば本作は陰、前作には1度聴き始めると最後まで心地良さに包まれているような極上の
体感音楽という部分があったが、本作は良くも悪くも精神的に訴えてくる部分が大きい
§ Recorded Music §
1 A Passion Play PartⅠ - パッション・プレイ
Ⅰ ACT1: Ronnie Pilgrim's Funeral - a winter's morning in the cemetery
a. Lifebeats - ライフビーツ
b. Prelude - プレリュード
c. The Silver Cord - ザ・シルヴァー・コード
d. Re-Assuring Tune - リ・アシューリング・チューン
Ⅱ ACT2: The Memory Bank - a small but comfortable theatre a cinema-screen ( the next morning )
a. Memory Bank - メモリー・バンク
b. Best Friends - ベスト・フレンズ
c. Critique Oblique - クリティック・オブリック
d. Forest Dance #1 - フォレスト・ダンス #1
Ⅲ Interlude: The Story of the Hare Who Lost His Spectacles
a. The Story of the Hare Who Lost His Spectacles - 眼鏡を失くした野ウサギの物語
2 A Passion Play PartⅡ - パッション・プレイ
Ⅰ Interlude: The Story of the Hare Who Lost His Spectacles
a. The Story of the Hare Who Lost His Spectacles - 眼鏡を失くした野ウサギの物語
Ⅱ ACT3: The business office of G.Oddie & Son ( two days later )
a. Forest Dance #2 - フォレスト・ダンス #2
b. The Foot of Our Stairs - ザ・フット・オブ・アワ・ステアーズ
c. Overseer Overture - オーヴァーシーア・オーヴァーチュア
Ⅲ ACT4: Magus Perde's drawing room at midnight
a. Flight from Lucifer - フライト・フロム・ルシファー
b. 10:08 to Paddington - 10:08 トゥ・パディントン
c. Magus Perde - マグス・ペルデ
d. Epilogue - エピローグ
§ Band Member §
Ian Anderson - イアン・アンダーソン( Vo,Flt,Sax )
Martin Barre - マーティン・バー( G )
John Evan - ジョン・エヴァン( Key )
Jeffrey Hammond - ジェフリー・ハモンド( B )
Barriemore Barlow - バリモア・バーロウ( Ds )
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1972年の" ジェラルドの汚れなき世界 "も大作で、このアルバムは長い弾き語りの間にさまざまな
仕掛けを盛り込んだ格好だったが、本作の方は始まり方からしてピンク・フロイドのようなSEとなって
いてプログレを意識していることが何となく伺える
内容が難解なため当時の評論家筋にはかなり不評だったらしいが、反面本作を彼らの代表作として押す
人も多く、賛否が非常に分かれている作品ではあるが、不評だったのは歌詞表現のほうであり、英語
表現の難しさが分からない日本人には充実した演奏面のほうが耳に入るため、評価が最もかと思う
さまざまな音楽を吸収したジェスロ・タルの音楽性をノンストップでダイレクトに伝えているという
のは、それだけで充分に楽しめる
イアン・アンダーソンのサックスもあってか、キング・クリムゾンやヴァン・ダー・グラフのような
重い雰囲気が支配していて、ほかのアルバムに比べ異色作ともいえる
これは死後の世界などを描いたといわれる重いテーマのコンセプトが影響しているわけだが、前作で
コンセプト・アルバムを批判する作品を作ったら、思いがけぬことに逆にそれがコンセプト・アルバムの
傑作とみなされてしまった
それならばということで作り上げた本作は前作を遥かに上回る難解な作品で、評論家たちからは激しい
批判を受けたが、この作品の完成度はやはり尋常ではなく、今では最高傑作のひとつという評価を受けて
いて、特にパート2の終盤、マーティン・バーの切れ味鋭いギター・リフが飛び込んでくる瞬間は何度
聴いてもカッコいい
A面B面とも" パッション・プレイ "組曲でまとめられたコンセプトで、ステージでも演劇的な要素を
盛り込むなど実験的で創造性に飛んだパフォーマンスをみせるが、これが全米No.1ヒットになってしまう
時代があったことが今では信じられない
プログレに興味がある人には是非勧めたいが、言葉でこの作品の素晴らしさをどのように伝えたらいいか
わからないので、まずこの難解さと音楽表現の世界を体感してもらいたい
時にオペラ的に展開したり、アコースティックになったりと非常に多面的に展開し、彼らのアルバムで
最もプログレッシブなアルバムである
ほかのロック・バンドにとって本作はさまざまなインスピレーションの源になったと思う
現代の音楽シーンからはこんな作品はまず生まれない、後の世代にも語り継がれるべき作品である