ハイレベルなテクニックの応酬と、緊張感あふれる
テンションの高い演奏が堪能できる
1976年のロニー・スコッツ、1977年のハマースミス・オデオンとマーキー・クラブからのライヴ盤で
初のライヴ盤であり初期ブランドXの演奏が楽しめる
" -ISH "とラストの" マラカ・ヴィルゲン "の2曲以外が新曲であり、3曲でフィル・コリンズが参加など
聴きどころも多く、白熱のバトルというよりは淡々としたアンサンブル重視の演奏であり、曲そのものに
極端なジャズっぽさはないものの、姿勢としてはクールなジャズっぽい演奏をしている感じである
ギターがややオフ気味の曲があり、少しだけ輪郭がぼやけた印象の曲もあるが、逆にベースとドラムスは
エコー感が薄くて生々しい
§ Recorded Music §
1 Nightmare Patrol - ナイトメア・パトロール
2 -ISH - -ISH
3 Euthanasia Waltz - ユーサネイシア・ワルツ
4 Isis Mourning ( Part1 & Part2 ) - アイシス・モーニング( パート1、パート2 )
5 Malaga Virgen - マラカ・ヴィルゲン
§ Band Member §
John Goodsall - ジョン・グッドソール( G )
Robin Lumley - ロビン・ラムリー( Key )
Percy Jones - パーシー・ジョーンズ( B )
Phil Collins - フィル・コリンズ( Ds )
Kenwood Dennard - ケンウッド・デナード( Ds )
Morris Pert - モーリス・パート( Per )
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このバンドは、どの作品もハイレベルでインストのロックが好きな人には、すべてお勧めで、" ジャズ
ロック "という形容がこれほど相応しいバンドはないと思う
ジャズは楽曲よりも演奏が自由に全面に出ているという印象だが、各演奏者がやりっぱなしの感じがする
一方、ブランドXの場合は、非常に高度で緻密な演奏( ソロとアンサンブル )のみならず、統一された
ムードやフィーリング、知的な遊びやユーモアといった譜面にならない部分が凄いし、パフォーマンス
全体を作品としたときの一体感や調和がある
その辺の総合力が凡百なジャズ・フュージョン・バンドと違うところで、このアルバムでは参加メンバー
6人中、3人がパーカッション担当だが、ちっともやかましくなく、大変心地よくもクールで官能的な
サウンドをたっぷり聴かせてくれる
ポップに肥大化したフィル・コリンズが、超絶技巧ドラマーとして在籍していたなんて信じられない
そんな1枚で、スタジオ・アルバム自体の演奏も凄まじいものがあったが、ライヴになるとさらに
パワー・アップしていて各メンバーの演奏技術の高さを確認できる
冒頭の" ナイトメア・パトロール "のジョン・グッドソールのギター・ソロなどはエフェクターの選択
フレージングなどモロにアル・ディ・メオラのようではあるが、ここにおけるブリティッシュならではの
ウェット感には捨て難い魅力がある
フィル・コリンズのサイド・プロジェクトとして語られることの多いブランドXであるが、本作の
" ナイトメア・パトロール " " マラカ・ヴィルゲン "はフィル・コリンズではなく、ジャコ・パトリシアス
やギル・エヴァンスとの共演で知られるケンウッド・デナードがドラムスを担当していて、その他の曲で
のフィル・コリンズとの個性の違いが感じられるのも面白い
英国ジャズ・ロックの雄、ブランドXの生演奏集、その高度な演奏技術に脱帽であるが、もともと
スタジオ盤でも多重録音や音響効果をあまり使わず実力で聴き手を捻じ伏せるところのあるバンドだけに
ライヴではさらにノリの良さが加わった凄い演奏を行うが、どこか醒めた英国的屈折も忘れないところが
凄く、特に鬼才パーシー・ジョーンズの変態知性派的ベースとロビン・ラムリーのツボを心得たミニ
ムーグ・フェンダーローズが出色、未発表曲も入っていて得した気分である
英国ジャズ・ロック・バンドのパワーとその実力を十二分に堪能できるライヴ・アルバムで、底抜けに
明るいアメリカのフュージョン・バンドとはかなりムードが違い、ダークなムードと演奏者全員の高度な
技量がうまい具合にブレンドされたブリティッシュ・ジャズ・ロックの名盤である