英国出身のプログレッシブ・ヘヴィ・ロック・バンド
Porcupine Treeの2002年に発表されたアルバム
本作レコーディング前にドラマーのクリス・メイトランドが脱退、当時セッション・ドラマーとして
活動していたギャヴィン・ハリソンに急遽声がかかり、そのままツアーにも同行して正式加入した
キング・クリムゾンとパイナップル・シーフに在籍するだけでなくソロ・アーティストとしても活動
する彼が参加したことに加え、バンドの音楽性はプログレッシブ・メタル方面へと向かい、さらに
メジャー参加レーベルであるラヴァ・レコードに移籍したことでポーキュパイン・ツリーは本作から
さらなる飛躍を遂げることになる
ヘヴィで攻撃的なギター・リフと前作" ライトバブル・サン "から継承される繊細でメロウなサウンドが
交錯し、ダイナミックな起伏が聴く者を飽きさせない
§ Recorded Music §
1 Blackest Eyes - ブラッケスト・アイズ
2 Trains - トレインズ
3 Lips of Ashes - リップス・オブ・アッシェズ
4 The Sound of Muzak - ザ・サウンド・オブ・ミューザック
5 Gravity Eyelids - グラヴィティ・アイリッズ
6 Wedding Nails - ウェディング・ネイルズ
7 Prodigal - プロディカル
8 .3 - .3
9 The Creator Has a Mastertape - クリエイター・ハズ・ア・マスターテープ
10 Heartattack in a Layby - ハートアタック・イン・ア・レイバイ
11 Strip the Soul - ストリップ・ザ・ソウル
12 Collapse the Light Into Earth - コラプス・ザ・ライト・イントゥ・アース
§ Band Member §
Steven Wilson - スティーヴン・ウィルソン( Vo,G,Key )
Richard Barbieri - リチャード・バルビエリ( Key )
Gavin Harrison - ギャヴィン・ハリソン( Ds )
Colin Edwin - コリン・エドウィン( B )
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彼らの音はいうなれば現代にマッチした憂鬱なメロディアス・ロックで、プログレ・メタルというほど
テクニカルでもないし、厳密にいえばプログレでもない音だが、クールな情感とやや暗鬱な叙情を醸し
出すサウンドには不思議な魅力もある
内的世界の描写を淡々とした演奏で表すところなどはポスト・ロック的で、そういう点は現代版
ピンク・フロイドと表現されるのも頷ける
柔らかだが冷たい質感と、しっかりとロックとしてのビートを感じるし、メロトロン的なキーボードの
使い方などは北欧的で、アネクドン、さらにはオーペスなどの静寂部分に通じるものもある
メロディアスでメランコリックな雰囲気が気に入れば心地よく聴ける音楽である
ポーキュパイン・ツリーでは比較的乾いたサウンドで奏でていて、また楽曲もコンパクトになっている
から、入門としても最適、次作" デッドウィング "につながる音作りだが、ここでは初期の頃からの
ネオサイケ的音楽性のほうが勝っていてスティーヴン・ウィルソンが盛んに口にするミクスチャー度は
次作ほど目立たたない
懐の深さは本作でも際立っているが、一曲ごとの作りはシンプルで次作を面白く聴けなかった人には
退屈かもしれないが、" ブラッケスト・アイズ " " ウェディング・ネイルズ " " .3 "あたりの展開はいかにも
1970年代を席捲した暗黒ブリティッシュ・ロックの現代版といった風情で、職人ドラムとメロトロン的な
音作りを多用するキーボードも魅力である
一連のジャケットの薄気味悪さは、本作でもそこらのデス・メタルを凌駕している
これぞプログレだと言わんばかりの勢いで、すべての曲において変拍子が効いているが、ロックの
要素もあるので親しみやすいプログレだと思う
雰囲気でいえばネガティブで、激しさはあるけどどこか切なくて奥深い
そこはおそらく、ヴォーカルやギターなどのメロディ構成が聴きやすいから、かつリズム隊の演奏能力が
高いからかもしれない…安心して聴くことができる
完成されすぎていてBGMになりがちというか、逆に物足りなさを感じる場合もあるが、ハード・ロックに
飽きた人や、プログレッシブ・ロックとはどんな感じなのかを知りたい人などにはお勧めである