1970年発表の再デビュー・アルバム
クラシカルなオルガンとホーンの織りなすサウンドが印象的
1970年発表のセカンド・アルバムで、前作" エアゾール・グレイ・マシーン "はもともとピーター・
ハミルのソロ・アルバムとして制作されたものだったため、本作が実質的なヴァン・ダー・グラフ・
ジェネレーターのデビュー作といっていいと思う
プロデューサーのジョン・アンソニーはジェネシスの" 侵入 " " 怪奇骨董音楽箱 "もプロデュースした人物
ファースト完成後にVDGGは解散したが、新ベーシストにニック・ポンター、サックスのデヴィッド・
ジャクソンを加え、ピーター・ハミルとガイ・エヴァンス、ヒュー・バントンという5人編成で本作を
制作した
§ Recorded Music §
1 Darkness ( 11/11 ) - ダークネス
2 Refugees - レフュジーズ
3 White Hammer - ホワイト・ハンマー
4 Whatever Would Robert Have Said? - ホワットエヴァー・ウッド・ロバート・ハヴ・ゼット?
5 Out of My Book - アウト・オブ・マイ・ブック
6 After the Flood - アフター・ザ・フラッド
§ Band Member §
Peter Hammill - ピーター・ハミル( Vo,G )
David Jackson - デヴィッド・ジャクソン( Sax )
Hugh Banton - ヒュー・バントン( Key )
Nic Potter - ニック・ポーター( B )
Guy Evans - ガイ・エヴァンス( Ds )
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病的、狂気スレスレの神秘性を持つヴォーカルを軸に、火花散るようなノイジーなサックスと、
クラシカルで荘厳なおかつ暴力的なオルガンとが邪悪に渦巻き、怪奇、文学的な詞も相まって
あまりに暗く重苦しいカオスの世界を形成しているが、リリカルな部分は痛いくらいに美しい
" ダークネス "は初期の代表曲のひとつでありライヴの定番曲、新加入のデヴィッド・ジャクソンの
サックスが爆発したキング・クリムゾンにも共通するジャズ・ロックである
" レフュジーズ "は弦と絶妙に絡むメランコリックなフルートが美しい佳曲で賛美歌のような壮大な
展開をする曲だが、ピーター・ハミルの繊細で優しいヴォーカルが光る
" アウト・オブ・マイ・ブック "は非常にメロディアスな曲で、この曲もフルートが幻想的で美しい世界を
生み出している
静と動のコントラストを活かしたドラマティックな曲構成と、サックスの迫力ある演奏が強く印象に残る
初期の名作である
特に幕開けを飾る" ダークネス "はあまりに素晴らしく、ピーター・ハミルにヒュー・バントン、そして
デヴィッド・ジャクソンの3人が同じバンドにいたこと自体が誇張ではなく奇跡としか思えない
ピーター・ハミルの内面からほとばしる知性の輝きと、内に秘めたさざめきを無変換に咆哮する
ヴォーカルや、これ以上なく磨く抜かれたヒュー・バントンのヴィルトゥオジティ、そしてデヴィッド・
ジャクソンのダブル・ホーンによるすべてをなぎ倒すが如くの壮大さと強烈なパッカーシブトーン、
動の曲調も静の曲調も本当に輝いている
それなのにダークな雰囲気、この鮮烈な黒さはほかでは味わえない
派手さはないが通好みのバンドとして評価が高い彼らの初期の傑作、緩やかなベースのグルーヴ感に
ピアノやサックス、メロトロンが重なり薄暗い叙情をも醸し出すサウンドに、ピーター・ハミルの
歌声が乗り、インスト部分はジャズ・ロック的な質感もあるが、軽やかでテクニカルでもなくもっと内的
表現的な穏やかな柔らかみがあるのが特徴である
ピーター・ハミルの歌声はときに実に繊細に、優しく詞を歌い上げるかのようで、クリムゾンの宮殿にも
通じる叙情美は実に耳に心地よい
バロック調のオルガン、管楽器と神々しいヴォーカルらによる崇高なムードの横溢する大傑作となった
1960年代末、オルガンを用いクラシックの主題を求めたアート・ロックが出現するが、本作がそれらと
一線を引くのは知的にして扇動的な詞と綿密に練られた演奏によるオリジナリティの存在である