1984年発売、音楽史上にその名を残す通算7枚目のアルバム
ブルース・スプリングスティーン以外の人が歌っても、これほどインパクトは与えられないであろう
" ボス "のスピリットが込められた" ボーン・イン・ザ・U.S.A. "
ボブ・ディランやジョン・レノンをはじめ多くのミュージシャンが時代と向き合ってきたが、ブルース・
スプリングスティーンは、この作品で真正面に時代に向き合った
全世界で2000万枚のヒットといわれ、政治色が加わり尾ひれがついてしまったが、このアルバムは
タイトル曲以外にもほとんどがシングル発売され、ことごとくヒット・チャートを賑わしたブルース・
スプリングスティーンの代表作である
§ Recorded Music §
1 Born in the U.S.A. - ボーン・イン・ザ・U.S.A.
2 Cover Me - カヴァー・ミー
3 Daelington County - ダーリントン・カウンティ
4 Working on the Highway - ワーキング・オン・ザ・ハイウェイ
5 Downbound Train - ダウンバウンド・トレイン
6 I'm on Fire - アイム・オン・ファイアー
7 No Surrender - ノー・サレンダー
8 Bobby Jean - ボビー・ジーン
9 I'm Goin' Down - アイム・ゴーイン・ダウン
10 Glory Days - グローリィ・ディズ
11 Dancing in the Dark - ダンシング・イン・ザ・ダーク
12 My Hometown - マイ・ホームタウン
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アメリカ東海岸のアーティストとしてビリー・ジョエルと並び称される存在だったブルース・スプリング
スティーンを国民的英雄に仕立て上げた大ヒット作で、この人の作品は、はじけるロックン・ロールと
内省的なアコースティックがはっきりと対峙するのが特徴だが、この作品ではほぼはじけっぱなしで
バラードも乾いたロックの手触りである
1曲1曲が楽曲、演奏、構成などパワーを保ったままカッチリとまとまっているから、ヒット曲を排出
したのも納得の出来で、80年代のロックを語るには絶対に外せない1枚である
これまでのブルースのキャリアの初期から中期にかけて、まさにその集大成ともいえる傑作で、その後の
作品からは明らかに方向性を変えてきている現状から、ブルースの代名詞ともいえるロックン・ロール・
サウンドの頂点として今も輝いている
タイトル曲" ボーン・イン・ザ・U.S.A. "、この曲がヒット・チャートを賑わせたときは冷戦末期で
世界が新しい動きへと向かうのではないかという気分だった
折しも大統領選でタイトル曲が採用されたこともあり、何かが変わる…そんな雰囲気を象徴する音楽と
してNHKの「 ニュースセンター9時 」でこの作品が取り上げられるほどであった
その後の世界情勢の変遷を誰が予想したか…現在は、あの時よりも危機感と閉塞感が強まっている
" ダンシング・イン・ザ・ダーク " " グローリィ・ディズ " " ダーリントン・カウンティ "などの本格派
ロックの重量感、ラストを飾る" マイ・ホームタウン "の寂寥感、どれもこれも生き生きとしていて
必聴もの、そこには世代を超えて永遠に生き続けようとする歌の力をひしひしと感じることができる
1980年代でもっとも売れたロック・アルバムとして歴史に残る存在だが、その中身は内省的で決して
陽気なロックン・ロールではない
タイトル曲をはじめとして、キャッチーかつ耳に残る曲が続く
それまでの作品と比較してシンセサイザーが多用され、ギター・バンドとしての面影は薄くなっていて
印象的なリフを持つ最初のシングル" ダンシング・イン・ザ・ダーク "は信じられないことにディスコ・
チューンとして扱われていた
いずれの曲も歌われている内容は深く、そして重く暗い…薄っぺらい70年代が終わり、何もない80年代
前半が流れ、そして目を見張るような好景気が押し寄せていたあの時代に、ブルースが拳を振り上げて
伝えようとしたものは本当は何だったのか
それが我々には見えないまま、ブルース・スプリングスティーンのしわがれたシャウトもブルージーンズ
もまるで現実感なく時代のファッションとして消費されていった