カンタベリー派ロックの最高峰
前人未到の偉大な挑戦が見事に実を結んだ大傑作
ソフト・マシーンは60年代後半のイギリスのプログレッシブ・ロック・バンドの中でも最もジャージー
なバンドで、この1970年の作品を集めたアルバムはスケールの大きな傑作で、ヒッピー時代における
究極の詰め込みレコードでもあり、2枚組で4曲という大作である
ジミ・ヘンドリックスの1968年のツアーの前座を務めたときは3人組だったが、" サード "のレコー
ディング時には、管楽器やヴァイオリンの担当など5人が新たに加わった
キーボードのマイク・ラトリッジが見事にアレンジした" スライトリー・オール・ザ・タイム "は
激しい管楽器とドラマーのロバート・ワイアットによる素晴らしいパーカッションが特色で、硬派な
ジャズ・ロック的側面とサイケがかったアヴァンギャルドな要素が交錯した濃密な作風で聴かせる
エルトン・ディーンのサックスがメロディを重ねると、シリアスな構築型ジャズ・ロックとしての
整合感が現れる
フリー・ジャズ的な緊張感がサウンドの硬質感をひとつ高めていて、18分以上の大曲が4曲という
ものすごい構成も含めて聴く手をグイグイ惹きつける

§ Recorded Music §
1 Facelift - フェイスリスト
2 Slinghtly All the Time - スライトリー・オール・ザ・タイム
3 Moon in June - 6月の月
4 Out - Bloody - Rageous - アウト - ブラッディ - レイジャズ
§ Band Member §
Mike Ratledge - マイク・ラトリッジ( Key )
Elton Dean - エルトン・ディーン( Sax )
Hugh Hopper - ヒュー・ホッパー( B )
Robert Wyatt - ロバート・ワイアット( Ds,Vo )
Rad Spall - ラヴ・スパール( Vio )
Lyn Dobson - リン・ドブソン( Flt,Sax )
Nick Evans - ニック・エヴァンス( Trom )
Jimmy Hastings - ジミー・ヘイスティングス( Flt,Clar )
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キース・ティペット・グループからエルトン・ディーンを含む複数の管楽器奏者を加えて、精力的に
演奏をこなしていたその合間を縫ってレコーディングされたのがこのアルバムで、1,2作目のサイケで
ダダ的なポップから本格的なジャズ奏者へと向き合っていた時期の大作であり、2ndと並んでグループの
最高傑作に挙げられることも多い
ヒュー・ホッパー作の" フェイスリフト "は当時としては珍しい別々の場所で録音されたライヴ音源を
編集したもので、オルガンがポツリポツリとアブストラクトなフレーズを刻み、突如軋みを上げ始める
オープニングの鮮烈さは、何度聴いても色褪せることがない
次第に湧き上がってくるブラスの混沌、各パートが多面的/重層的に広がっていく構成である
" スライトリー・オール・ザ・タイム "のメドレーも浮遊感にあふれていて素晴らしい
全体的には硬派なインスト中心だが、ロバート・ワイアットのヴォーカルをフィーチャーした
" 6月の月 "だけは唯一1,2作目らしい雰囲気が感じられ、アルバム全体の多様性を高めている
純粋なジャズ・ロックとしては、この後の2作のほうが洗練されているが、本作を特別なものにして
いるのは60~70年代の音楽開拓時代のマグマのようなエネルギーが凝縮されているところにあると思う
ロック、ジャズ、現代音楽の間の際どい領域を切り開いていこうとする姿を実にリアルに写し出している
そしてジャズ的な即興の妙技というより、緻密な構成や感覚的な心地よさに焦点をおいた本作は、むしろ
クラブ系リスナーにこそ聴いてもらいたい
もしもソフト・マシーンのファンが1,000人いたとしたら、おそらく千通りのソフト・マシーン像が
あるはずで、ソフト・マシーンとは、そのような多様な解釈を受け入れる" しなやかさ "に満ちたバンド
だと思うし、フランク・ザッパの" アンクルミート "やピンク・フロイドの" ウマグマ "などの名作同様
音楽的な要素よりも自由で実験的な雰囲気がとてもいい
この作品の段ボールに手書きでタイトルを書いたようなジャケットはいかにも地味だが、楽曲が
みなアナログ盤片面分あり、実験的なプログレ・ジャズ・ロックの真髄をたっぷり聴かせてくれる
正直なところソフト・マシーンの生み出す音楽は万人に受けるとは思わないが、好きな人には応え
られないものがあり、この作品はそんな彼ら独特の音楽が完成された重要な作品である

