イギリスのパンク・バンド、Sex Pistolsの
唯一のスタジオ・アルバム
ロンドン・パンク・ロックの象徴的存在だったセックス・ピストルズの衝撃的なデビュー・アルバムで
1977年リリースの本作は、音楽はもちろんやること成すこと存在そのものがパンクだった
それまでの太りすぎて更年期障害的なロックに対して正面からノーを突きつけ、ロックとは本来何だった
のかを考えさせるきっかけとなっただけでなく、ロックの新たな表現を生み出す源となったのは間違い
なく、怒鳴っているだけの下手なヴォーカルと勢いだけの下手な演奏に当時はかなり抵抗があったが
今聴いてみると、結構ポップなところもあって意外と聴ける
今や名盤となったパンク・ロックの記念碑的なアルバムである
§ Recorded Music §
1 Holidays in the Sun - さらばベルリンの陽
2 Bodies - ボディーズ
3 No Feeling - 分かってたまるか
4 Liar - ライアー
5 Problems - 怒りの日
6 God Save the Queen - ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン
7 Seventeen - セブンティーン
8 Anarchy in the U.K. - アナーキー・イン・ザ・U.K.
9 Submission - サブミッション
10 Pretty Vacant - プリティ・ヴェイカント
11 New York - ニューヨーク
12 E.M.I. - 拝啓EMI殿
§ Band Member §
Johnny Rotten - ジョニー・ロットン( Vo )
Steve Jones - スティーヴ・ジョーンズ( G,B )
Paul Cook - ポール・クック( Ds )
Glen Matlock - グレン・マトロック( B )
Sid Vicious - シド・ヴィシャス( B )
|
パンク・ロックと称されたこの音楽には、高度な演奏テクニックもリリカルなメッセージや内省的な
視点も当然のことながら存在しない
しかし、音楽だけでなく行動やファッションも含め、当時のイギリスの政治的、社会情勢に対する明確な
意義申し立て、そしてレコード会社による既存のスター・システムを否定して世に出てきたこと
こういったジョニー・ロットンたちが我々の見せつけた当時としては型破りな行動とスピリットが
本来ロックン・ロールが持っていたはずのエネルギーを世間に思い出させたのだと思う
70年代のロックの歴史を知り、80年代以降分裂していくロック・ミュージックを知るには欠かせない
作品であり、アーティストであると思う
カート・コバーンが" 新しい音楽が受け入れられるにはポップスのフォーマットを踏襲する事が必要だ "
と語っていたが、これはピストルズにも当てはまる
あの激しいメッセージと奇抜なファッションでもし難しい音楽をやっていたとしたら誰も見向きしない
" アナーキー・イン・ザ・U.K. "はボブ・ディランの" 風に吹かれて "のように簡潔で、ちょうど時代も
魂の抜けたレッド・ツェッペリンやザ・フーにロック・ファンが背を向け始め、ロックン・ロール戦艦
モット・ザ・フープルも空中分解、U.K.ロックに凋落が見えた時期、マルコム・マクラーレンに作られた
感はあるが、まさに救世主的な存在だった
イギリス国歌と同タイトルで「 この国に未来はない 」と叫ぶ" ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン "、体制に
対しての反逆を煽動する" アナーキー・イン・ザ・U.K. "、宗教批判の" 分かってたまるか "、妊娠中絶を
生々しく歌う" ボディーズ "、楽曲的にはもっと激しい曲があるが、この辛辣で過激なメッセージだけは
あり得なく、この恐れ知らずで捨て身な姿勢こそがパンクだったんだと思う
ストーンズ、ドアーズと時代の標的にされたバンドは数多くあれど、このバンドほど世間を敵に回した
バンドはいないんじゃないだろうか
今にして思えば、この無謀とも思えるほど自分らしさを全うした彼らのスタンスが愛しく思える
本作は彼らのどこか胸を熱くする狂おしいほどの優しさが伝わってくる1枚で、言いたいことだけ
言い放ち、たった1枚のアルバムである本作を残して消滅していった潔さも実にかっこよく、バンドの
歴史に華を添える結果となっている
もっとも汚くてもっとも美しく、永遠に鳴り続け、やんちゃな光を放ち続ける花火のような作品といった
感じの1枚である