UFOがMichael Schenker加入後の1974年にリリースした
クリサリスからの第1弾アルバム
当時若干19歳であったマイケル・シェンカーのギター・プレイが圧巻、超絶であり、彼のここでの
スタイルは世界各国の数えきれないほどのギタリストたちを強烈にインスパイアするものとなった
一般にメタルの範疇で括られる彼らではあるが、この時期のサウンド・アプローチは明らかに
アメリカン・ロックを意識したものであり、本作においてもそういった側面は強く、ブルースマナーを
その根幹に据えつつ、例えばオールマン・ブラザーズやレーナード・スキナードといったサザン・ロック
風味な楽曲が多くなっている
これはヴォーカルのフィル・モグの歌唱スタイルが、一般的なHR/HMのものとはかなり異なったもので
あるという点からも容易に理解できると思う
§ Recorded Music §
1 Too Young to Know - トゥー・ヤング・トゥ・ノウ
2 Crystal Light - クリスタル・ライト
3 Doctor Doctor - ドクター・ドクター
4 Space Child - スペース・チャイルド
5 Rock Bottom - ロック・ボトム
6 Oh My - オー・マイ
7 Time on My Hands - タイム・オン・マイ・ハンズ
8 Built for Comfort - ビルト・フォー・コンフォート
9 Lipstick Traces - リップスティック・トレーシス
10 Queen of the Deep - クィーン・オブ・ザ・ディープ
§ Band Member §
Phil Mogg - フィル・モグ( Vo )
Andy Parker - アンディ・パーカー( Ds )
Pete Way - ピート・ウェイ( B )
Michael Schenker - マイケル・シェンカー( G )
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この時期の彼らが遺した影響力というのは、本当に計り知れないものがある
後のNWOBHM( ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル )ムーヴメント、アイアン
メイデン、デフ・レパードなど完全にUFOのスタイルを叩き台にして作られていると思われる作品は
多々存在していて、そしてそれはUSメタルもしかりである
特に、マイケル・シェンカーのギター・プレイやそのアティテュードに関しては、もはやハード・ロック
ギタリストのスタンダードとも呼べるものとなった
優しい雰囲気の曲もあり、バリバリのハード・ロックを期待すると肩透かしを喰らうかもしれないが
繊細なマイケル・シェンカーのプレイもたまにはいいじゃないかと思う
まだ中音域に鼻を摘んだような癖がついていなかった初期型マイケル・シェンカーの素晴らしい演奏が
どこか唐突で不似合いな印象すら与えるこの時期のUFO、後のアメリカ侵略作戦すら想像がつかない
ような英アングラ・シーンに通ずる謎っぽいモコモコした音作りと、マイケルの直球勝負との組み合わせ
が聴く側を刺激する
名曲" ロック・ボトム "のリフは彼の逸品中の逸品で、一音一音を探りつつ自我の闇深くに降りてゆく様を
聴くにつけ、彼は本物だと思わざるを得ない
ロック・ギタリストの花形でありながら、何者にも縛られなく自由であることが、どこか不安なもので
あることをも、彼は音で表現できる逸材で、彼の仕事は楽観的な職人芸や名人芸ではない
マイケル・シェンカーが移籍したら、移籍したグループと元のグループがイノヴェーションを遂げると
いう不可思議なことが起こった
ひとつの理由はディープ・パープルという成功例が起きたからだと思う…でもディープ・パープルの
フォロワーに無条件にお金を払うほどユーザーは甘くはない
UFOが獲得したのは、マイケル・シェンカーのギターを中心としたドライヴ感で、同じくリフの名人の
ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックと違うのは、流れるようなフレーズを弾いてしまうと、それが
リフになってしまうマイケルの魔術である
曲作りにおいては、まだまだ試行錯誤だが" ドクター・ドクター " " ロック・ボトム "に対してのユーザー
の反応が、この後の彼らの道を指し示したことに疑いはない