Curved Airの第1期の最終作にして最高傑作との
定評があるサード・アルバム
多数のゲストミュージシャンを迎えて制作されていて、ブラス・サウンドをプラスしたバラエティに
富んだ音作りとなっているが、これまでのバンドのキャラクターも見失うことなく、紅一点の女性
ヴォーカルを全面に出したリリカルな曲は、美しくも素朴な味わいを醸し出している
ところが、インストゥルメンタル・パートをフィーチャーした曲でのインター・プレイの応酬は、ゲスト
ミュージシャンも交え、これまで以上にアグレッシヴで凄まじい様相を呈している
この大胆な表情の変わりようには、少なからず戸惑いを覚えるが、バンドの意欲を見事に表していて
最高傑作と評されるまでに押し上げる内容となっている
§ Recorded Music §
1 Marie Antoinette - マリー・アントワネット
2 Melinda ( More or Less ) - メリンダ
3 Not Quite the Same - 多少の違い
4 Cheetah - チーター
5 Ultra-Vivaldi - ウルトラ・ヴィヴァルディ
6 Phantasmagoria - ファンタスマゴリア
7 Whose Shoulder Are You Looking Over Anyway - 前にいるのは誰
8 Over and Above - ほかにもっと
9 Once Always a Ghost - 霊魂
§ Band Member §
Sonja Kristina - ソーニャ・クリスティーナ( Vo )
Darryl Way - ダリル・ウェイ( Vio,Key )
Francis Monkman - フランシス・モンクマン( G,Key )
Mike Wedgwood - マイク・ウェッジウッド( B )
Florian Pilkington-Miksa - フロリアン・ピルキントン・ミクサ( Ds )
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ベースがマイク・ウェッジウッドに代わって発表された作品だが、本作発表後にグループの中心人物で
あったダリル・ウェイ、フランシス・モンクマン、フロリアン・ピルキントン・ミクサの3人が脱退する
前半がダリル・ウェイ、後半がフランシスの曲という構成になっているが、非常に洗練された内容で
あり、楽曲もさらに締まった感じがある
シンセを中心に演奏していたフランシスも本作では時に非常に優れたオルガンをプレイしていて
彼の実力の高さを思い知らされる
" マリー・アントワネット "は非常にライヴ映えする彼らの代表曲にひとつで、洗練され尽くしたクリアな
演奏と美しいメロディが融合した屈指の名曲である
" メリンダ "はソーニャの歌声にダリルの美しいヴァイオリンとフルートが絡むトラッド風の曲、ダリルが
ジェスロ・タルのアルバムに参加する布石が既にここにあるように思う活き活きとしたヴァイオリンの
響きはそれだけで一聴の価値がある
" 多少の違い "はブラスを導入した宮廷音楽調の曲だが、ヴォーカルが入るとその雰囲気を引きづりつつも
アップ・テンポなポップ曲で、終盤のヴァイオリンとブラスの絡みも秀逸である
" チーター "はダリル・ウェイが直に結成するウルフそのままの雰囲気を持ったインスト曲で、いわゆる
速弾き曲であるが、官能的なメロディも共存させたなかなかの曲だと思う
" ファンタスマゴリア "はブルージーでなかなか渋いオルガンのプレイが光るフランシス咲の傑出した
曲のひとつ、" 霊魂 "はヴィブラフォンが登場するジャズ・ロック風の曲であり、キャラバンあたり
好きな人はお勧めである
カーヴド・エアの魅力は、演奏がどうのということではなくトータルなイメージの持ち合わせていた
ユーモアと冒険心に満ちた奔放さにあったと思う
本作ではその魅力が存分に発揮され、もの悲しさと得体のしれなさ、悪戯心のあるゴーストというテーマ
と上手く噛み合わさっている
特に" ほかにもっと "は、まさに風の強い夜に猛スピードで自分の魂が飛ぶような風景が目に浮かぶようで
心が浮きだつ
スピード感のあるリズム隊に弾きたい放題のダリル・ウェイ、フランシス・モンクマンの奇っ怪な
ウワモノ跳ねるサウンド、それに重なる« 隣のロック姉さん »ソーニャのシャンソン風のヴォーカルと
1人1人では正直大したことはないのだが謎のマジックが起きている