バンドのスター・プレイヤーから
孤高のソロ・プレイヤーになった歴史的名盤
イングヴェイ・マルムスティーンの中にある創造性、ギターによって出来ることを最大限に発揮出来て
いる素晴らしい作品で、ネオクラシカル、ドラマティック・ロックとも称され、後の音楽界に旋風を
巻き起こした彼の最高傑作のひとつといっても過言ではない
バッハやパガニーニを好む彼の楽曲は、その影響を色濃く感じるが、決定的に違うものが彼が選んで
いたアプローチがエレキ・ギターということ
ジミ・ヘンドリックスに触発され、リッチー・ブラックモアを敬愛する彼のその表現力たるや美しいの
一言で、音楽を聴く上で、まずはギター・サウンドに注目するという人はグッとくるものがある
元祖速弾き、ピッチ・ビブラートの魔術師とも呼称される彼のギター・ワークは一聴の価値がある
§ Recorded Music §
1 Black Star - ブラック・スター
2 Far Beyond the Sun - ファー・ビヨンド・ザ・サン
3 Now Your Ships Are Burned - ナウ・ユア・シップス・アー・バーンド
4 Evil Eye - イヴィル・アイ
5 Icarus Dream Suite op.4 - イカルスの夢・組曲 作品4
6 As Above, So Below - アズ・アバヴ、ソー・ビロウ
7 Little Savage - リトル・サルベージ
8 Farewell - フェアウェル
§ Personnel §
Yngwie Malmsteen - イングヴェイ・マルムスティーン( G,B )
Jens Johansson - イェンス・ヨハンソン( Key )
Jeff Scott Soto - ジェフ・スコット・ソート( Vo )
Barriemore Barlow - バリモア・バーロウ( Ds )
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当時、ロック・インストはフュージョン・ジャズというギター・テクニックで先を行くジャンルに
追いつけない感があった
そんな中で、メタル・インストという誰も聴いたことのない音楽をぶっ放した金字塔で誤魔化しがなく
管楽器を入れたり、ジャージーになったり、アコースティック・ギター中心の楽曲があったりインスト
とはそういうものという認識がひっくり返った
ほぼ全部同じ楽器構成で、イングヴェイが楽譜を埋め尽くす怒涛のメタル・インスト、攻撃性と哀愁のみ
が支配する楽曲で生ぬるさ一切なし
ヴォーカルはいただけないが、ドラム、キーボード、ベースも攻撃性と哀愁をバックアップしている
イングヴェイを嫌う人は当時から多かったが、このアルバムにある攻撃性がその答えだと思う
イングヴェイが単身アメリカに乗り込み2つのバンドを経たあとに、満を持して発表された初のソロ
アルバムで、当時の水準をはるかに上回るスピードの速弾き、オリジナリティの塊のようなギター・
フレーズはもちろんのこと、バッハなどのクラシックをベースにした作曲能力もすでに円熟といえる
ほど完成されていて、とても21歳の青年が作った作品だとは思えない
曲はインストが中心で、かなり練られたものばかりで完成度が高く、中でも" ファー・ビヨンド・ザ・
サン "は最初から最後まで息をつかせぬ圧巻の曲展開で、速弾きなどのテクニックを抜きにしても
素晴らしい作品、作曲者本人も障害の最高傑作としているようだが、それも頷ける
" ブラック・スター " " イカルスの夢・組曲 "も名曲で、どの曲からも悲哀、激情、荘厳といった
フレーズが思い浮かぶ
イングヴェイ・マルムスティーンは確実に人とは違うことをやっているという自覚があり、それが誇り
でもあり恐怖でもあったのだと思う
新しいことをやると周囲の凡人たちは寄ってたかって潰そうとするのが世の常で、そのプレッシャーに
打ち勝つためには、より一層上手くなる必要があった
本作には彼が世界に対してギター革命という戦いを挑んでいた時代ならではの緊張と不安が感じられる
それが張り詰める緊張や、咽び泣く哀愁や、狂おしい激情となって演奏から迸りででてくる
だからこそ本作は永遠のマスターピースであり、常に新鮮な息吹きを感じ取ることが出来る名盤で
後にイングヴェイはギターの大家として認知され、世界に対して限定的勝利を収めた
後期の作品が質はともかく緊張感にかけているのは、すでに戦う意味を見出し得なくなったからだと思う