Jan Akkerman脱退後に発表された
FOCUSのアウト・テイク集
" シップ・オブ・メモリーズ "はフォーカスの7枚目のオリジナル・アルバムとして1976年に発表された
作品で、日本でも同年の秋にポリドールから東芝EMIへの移籍第1弾アルバムとしてほぼリアルタイムで
リリースされた
しかし、この時期のフォーカスはヤン・アッカーマンが脱退するなど、バンドにとってはまさしく結成
以来の大転換期にあり、そんな時期に出された本作もオリジナル・アルバムではあるが、実際には
契約消化のためにリリースされた未発表楽曲をコンパイルした作品である
したがってレコーディング時期も、ほとんどが73年の" フォーカス・アット・ザ・レインボー "が
リリースされた時期から75年の" マザー・フォーカス "のレコーディングに入る時期の楽曲になっている
§ Recorded Music §
1 P's March - Pの行進曲
2 Can't Believe My Eyes - 信じがたき出来事
3 Focus Ⅴ - フォーカス Ⅴ
4 Out of Vesuvius - ヴェスヴァイアス火山を抜けて
5 Glider - グライダー
6 Red Sky at Night - 夜に燃える空
7 Spoke the Load Creator - 創造主は語る
8 Crackers - クラッカーズ
9 Ship of Memories - 美の魔術
§ Band Member §
Thijs Van Leer - テイス・ファン・レール( Vo,Flt,Key )
Jan Akkerman - ヤン・アッカーマン( G )
Bert Ruiter - ベルト・ライテル( B )
Pierre Van Der Linden - ピエール・ファン・デル・リンデン( Ds )
David Kemper - デヴィッド・ケンパー( Ds )
Martijn Dresden - マーティン・ドレスデン( Ds )
Hans Cleuver - ハンス・クルフェール( Ds )
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1972年にアルバム" ムーヴィング・ウェイヴス "がイギリスでリリースされ、シングル" 悪魔の呪文 "が
スマッシュ・ヒットし、イギリス以外のヨーロッパから出てきた本格的なロック・バンドが世界的に
活躍したのは彼らが最初だった
そんな勢いを2枚組というスケールで展開してみせた" フォーカス Ⅲ "を1973年に発表、ここでもポップで
典雅がサウンドのシングル" シルヴィア "がヒットし、イギリスのメディアでも本国のアーティストを
押さえて人気投票でベスト・アクトを軒並み独占するなど、この当時まさしく最先端のサウンドを
聴かせるロック・バンドとして不動の地位を築いていた
しかし、イギリスも含めたヨーロッパのバンドがワールド・ワイドに活動する際、必ずといっていい
ほどぶち当たるのが、長期に渡るツアーからくる疲弊という問題である
70年代中盤から後半にかけて、プログレッシブ・ロックが急速に衰退していった時期があったが、むしろ
そんなふうに肥大していくバンド活動にバンドそのものがついていけなくなったというのは、そこそこ
メジャーなバンドであれば多かれ少なかれあったことで、フォーカスの場合もその例外ではなかった
" フォーカス Ⅲ "に続く新しいマテリアルが思うように進展しなかったことから、穴埋め的にリリース
されたのが" フォーカス・アット・ザ・レインボー "で、結局この時期を境にしてバンドは不安定な状態に
なり、1978年の解散までメンバー・チェンジを繰り返しながら、音楽性を徐々にソフィスティケイト
させていくことになる
ときに美の結晶ともいえそうなクラシックの伝統美を持ちつつ、同時にまったく裏腹なブルース・ロック
やヨーデルやキャバレー・ソングなどの大衆的なサウンドを惜しみなくぶち込んだフォーカスの音楽性の
特異さ、このアクの強さは明らかに英米の音楽シーンからは生まれ得ないものであることはもちろんだが
いわゆるユーロ・ロックの文脈からも確実に逸脱している
しかもフォーカスが結成されるきっかけがスティーヴ・ウィンウッド率いるトラフィックに憧れて
というのだからまったくわからないものである
そしてそれが短い期間であれ、世界でもっとも評価されたロックであったというのは、まさに奇跡だった
いささかイレギュラーな出自を持つ作品ではあるが、本作にもその奇跡は確実に存在している