LAメタルの雄 Mötley Crüeの5枚目で全米No.1アルバム
前作までドラッグでメタメタだった状態からクリーンになり作り上げたアルバムは年齢的にも、肉体的
にも彼らのキャリアのピークと重なり、彼らの最高傑作にしてロック史に残る名盤となった
円熟の域に達したヴィンス・ミールのヴォーカル、ミック・マーズの独特なリフ、トミー・リーの
爆発的なドラム、そして天才ニッキー・シックスのソングライターとしての才能が遺憾なく発揮された
内容はバラエティーに富み、全曲シングル・カットに耐えうるクオリティで、実際5曲がシングル・
カットされた
§ Recorded Music §
1 T.nT. - TNT
2 Dr. Feelgood - ドクター・フィールグッド
3 Slice of Your Pie - スライス・オブ・ユア・パイ
4 Rattesnake Shake - ラトルスネイク・シェイク
5 Kickstart My Heart - キックスタート・マイ・ハート
6 Without You - ウィズアウト・ユー
7 Same Ol' Situation - セイム・オール・シチュエーション
8 Sticky Sweet - スティッキー・スウィート
9 She Goes Down - シー・ゴーズ・ダウン
10 Don't Go Away Mad ( Just Go Away ) - ドント・ゴー・アウェイ・マッド
11 Time for Change - タイム・フォー・チェンジ
§ Band Member §
Vince Neil - ヴィンス・ニール( Vo )
Mick Mars - ミック・マーズ( G )
Nikki Sixx - ニッキー・シックス( B )
Tommy Lee - トミー・リー( Ds )
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メンバーのドラッグ/アルコールへの依存具癖が悪化、メンバー全員がドラッグ/アルコールが原因で
心身共にボロボロの状態、ニッキー・シックスに至ってはドラッグのやり過ぎで仮死状態に陥るまで
問題は深刻化し、そして約1年間に渡りバンドは沈黙を続けていたが、そのドラッグ/アルコールと
きっぱり決別、心機一転プロデューサーもトム・ワーマンから、かの天才プロデューサー、ボブ・ロック
に代えて制作されたのが1989年発表の本作である
曲調は前作の路線を踏襲しているが、ギター・サウンドや楽曲のヘヴィ・メタリックな部分が強調され
麻薬の密売人がテーマのタイトル曲、未だこの楽曲をモトリー・クルーの代表曲とファンを言わしめる
ほどの必殺の名曲である
1980年代の作品であるが、このサウンドは1990年代以降のヘヴィ・ロック的であり、当時の煌びやかな
シーンの中では少し異質といえるが、結果的にLAメタルという枠から抜き出て名実ともにモンスター・
バンドとなった
ただ、グランジ・オルタナティブが少しずつ勢いをつけてきた80年代後半のロック・シーンにおいては
絶対に必要な変化であり、このタイミング、サウンドを見逃していたらモトリー・クルーもほかのLAの
バンドたちとともに消えてしまっていたかもしれない
そんな危機を遥か前にスルリとかわし、金字塔となり得たこのアルバムに、天才が集まって起きた
本物のマジックと、勢いに乗り切ったバンドのパワーを感じる
前作までイケイケ路線まっしぐらだったモトリー・クルーが心機一転、禁欲生活の中で作り上げた快心の
1作で、前作までも曲作りの上手さはあったが1曲1曲の作り込み不足というか、もっと良くなりそう
みたいな曲がいっぱいあったが、本作はすべての曲が見事なまでの完成度で作られている
彼らの最高傑作であるとともに、当時LAメタルといわれたブームの頂点に位置するアルバムだと思う
ボブ・ロックのプロデュースも見事
それまでド派手なルックスやパフォーマンスばかり注目されていたが、このアルバムによってキッスや
エアロスミスなどアメリカのロック・バンドのレジェンドとも肩を並べるレベルになった