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Ultimate Music Album - 極 -


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Miles Davis - In a Silent Way:イン・ア・サイレント・ウェイ -

Miles Davisが本格的に電気楽器を取り入れた最初のフル・アルバム
夜を飛び越えてもはや宇宙と交信するかのような音楽" In a Silent Way "

 

1960年代後半はロックのパワーが炸裂、その勢いにジャズが飲み込まれとしていた時代だった

そんな時代に敢然と立ち上がったのがマイルス・デイヴィス

マイルスは別にロックを演奏したわけではなかったが、エレクトリック楽器を取り入れロック・ファンも

魅了する新しい形のジャズを提示したその金字塔ともいえる作品が1969年録音の" ビッチェズ・ブリュー "

なわけだが、本作はその半年前に録音した作品である

ハービー・ハンコックチック・コリア、ジョー・サヴィヌルとキーボード奏者が3人、さらにギター

ジョン・マクラフリンを加えた8人編成による演奏は非常に牧歌的で、そのサウンドはどこかデビュー

当時のウエザー・リポートに近い感触、ホントは複雑だけどシンプルに聴こえるリズムと各人のスケッチ

的なソロが微妙に絡み合い、まるで絵画を見ているような気分になる作品だ

 

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§ Recorded Music §
1 Shhh / Peaceful - シュー/ピースフル
 a) Shhh
 b) Peaceful
 c) Shhh
2 In a Silent Way / It's About That Time - イン・ア・サイレント・ウェイ/イッツ・アバウト・ザット・タイム
 a) In a Silent Way
 b) It's About That Time
 c) In a Silent Way

§ Performance §
Miles Davis - マイルス・デイヴィス( Trp )
Wayne Shorter - ウェイン・ショーター( S.Sax )
John McLaughlin - ジョン・マクラフリン( G )
Chick Corea - チック・コリア( EP )
Herbie Hancock - ハービー・ハンコック( EP )
Joe Zawinul - ジョー・サヴィヌル( Key )
Dave Holland - デイヴ・ホランド( B )
Tony Williams - トニー・ウィリアムズ( Ds )

 

 

 

 

" ネフェルティティ "を最後に旧来のアコースティック・ジャズからの脱皮を考えたマイルスは" マイルス

イン・ザ・スカイ "で実験的にエレクトリック楽器を導入、そして前作" キリマンジャロの娘 "から加入

したチック・コリアデイヴ・ホランド、本作でマイルスと初共演となるジョン・マクラフリンとジョー

サヴィヌルといった新顔を迎え、より本格的にエレクトリック・ジャズ路線を押し進めた

1970年代のフュージョン・シーンを担うプレイヤーたちが一同に一堂に会した作品である

レコードA面を占める" シュー/ピースフル "は、ハイ・ハットによる16ビートの繰り返しと、Dのコード

だけで演奏されるベースにのって、各メンバーが即興演奏を繰り広げていく曲、B面は、ジョー・

サヴィヌルが書いた静かな曲" イン・ア・サイレント・ウェイ "と、マイルス作の" イッツ・アバウト・

ザット・タイム "のメドレーになっている

 

 

 

 

ジョー・サヴィヌルが1967年にオーストラリアへ帰省した際に書いた曲がこのタイトル曲である

サヴィヌルはオーストラリア生まれであり子供のころは電気も来ていない田舎で育ち、そこでアコー

ディオンを弾いていたそうだ

このあたりは想像の世界だがちょうどTVドラマ『 バンド・オブ・ブラザース 』に描かれた戦争の荒廃に

中にある美しいオーストリアの風景、こんなところでサヴィヌルは多感な時代をすごしたのだろう、

これがおそらく曲想の根底にあると思う

これをピアノで聴かされたマイルスは" その曲はいただきだ、オレが録音する "と叫んだという

しかしサヴィヌルが丹念に編曲したアレンジを捨て( 和音を捨て )、ひたすらベースとメロディだけを

演奏した…これがマイルス流であり、これがこのアルバムの核を成している

ちょうどリズムに対するアプローチの変革期にあったマイルスに、一服の清涼剤的な役目を果たした

名曲でもある

 

そもそも本作は上述したように" マイルス・イン・ザ・スカイ "から導入したエレクトリック・サウンド

推し進めた形であるわけだが、この形はアイディアそのもののそれ自身になって息衝き、内心の緊張感

をにじませながら生きているようだし、その張り詰め方は癒やしでさえある

目に見えて、耳で聴こえる以上の霊的な含意、それぞれに求められた慎み深い内省…しかし恭順とは違う

確かな相互作用、でも混じりけのないこの音楽…どこまでもシンプルなものだが、それゆえにこの

メンバーじゃなきゃ成立し得ないものかもしれない

言わずもがなだが、ウエザー・リポートを結成するウェイン・ショーターとジョー・サヴィヌル、

リターン・トゥ・フォーエヴァーを結成するチック・コリアマハヴィシュヌ・オーケストラを結成

するマクラフリン、存在そのもので常にリードしジャズ・ファンクの名盤" ヘッド・ハンターズ "を

発表することになるハービー・ハンコックと後のシーンにおける立役者が勢揃いしている1枚であり

いわゆる" フュージョン "の先駆けとして知られる名作、緊張感のある演奏が素晴らしい

 

In a Silent Way

In a Silent Way