1973年に発表されたオリジナル・メンバーによる
リユニオン・アルバム
あまり評価されていないバーズの末期の諸作は、当時耳の肥えたプロを目指すミュージシャンには
新鮮さがあったと想像できる
この再結成アルバムは70年代ウェスト・コーストのシンガー・ソング・ライター系の牙城になる
アサイラム・レコードでたった1枚残され発売当初は大きな話題を呼んだアルバムである
バーズの面々が自分たちが60年代にやってきたことを、再結成当時の音楽シーンに重要な背景だと自覚し
集まり世に問うたという姿勢を感じる
全体に地味だが爽やかで、一部で酷評されたような気の抜け方はなくて穏やかに活気がある内容だと思う
§ Recorded Music §
1 Full Circle - フル・サークル
2 Sweet Mary - スウィート・メアリー
3 Changing Heart - チェンジング・ハート
4 For Free - フォー・フリー
5 Born to Rock 'n' Roll - ボーン・トゥ・ロックン・ロール
6 Things Will Be Better - シングス・ウィル・ビー・ベター
7 Cowgirl in the Sand - カウガール・イン・ザ・サンド
8 Long Live the King - ロング・リヴ・ザ・キング
9 Borrowing Time - ボロウイング・タイム
10 Laughing - ラフィング
11 ( See the Sky ) About to Rain - アバウト・トゥ・レイン
§ Band Member §
Roger McGuinn - ロジャー・マッギン( G,Key )
Gene Clark - ジーン・クラーク( G )
David Crosby - デヴィッド・クロスビー( Vo )
Chris Hillman - クリス・ヒルマン( B )
Michael Clarke - マイケル・クラーク( Ds )
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1960年代アメリカを代表するザ・バーズの1973年まさかのオリジナル・メンバーで再結成で、鳴り物
入りで発表されたことが影響してか一般評価こそ低いが、バーズらしいエゴの衝突も各メンバーの成長も
記録した好盤だと思う
デヴィッド・クロスビーとジーン・クラークの曲はよく合い、" フル・サークル " " チェンジング・
ハート "の完成度、ロジャー・マッギンの" スウィート・メアリー "は" 霧の5次元 "ぽいし、後期
フライング・ブリトー・ブラザーズの雰囲気に近いクリス・ヒルマンの" ボロウイング・タイム "も
ほのぼのしていて良い出来である
クロスビーの" ラフィング "は、彼の1971年のデビュー・ソロ盤のほうが好まれる傾向だが、マッギンの
サイケ調のリッケンバッカーとヒルマンのメロディアスなベースに絡むここでの演奏は" 昨日より若く "に
収録されていそうなバンドとしての名演である
ラストの" アバウト・トゥ・レイン "が曲調でいうとオリジナル・バーズのフィナーレ、ニール・ヤングの
作品だがジーン・クラークの泣き節がたまらない
ここでのロジャー・マッギンは、ほかのメンバーに華を持たせている感じがする
アルバムの中心は大御書のデヴィッド・クロスビーで、ほかも別のグループで活躍している頃、クリス・
ヒルマンはマナサスからサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドへ向かう時代、マイケル・クラークは
ファイアーウォールのメンバーになる
やはり、オリジナル・バーズのブランドは強力で奥が深い
ロジャー・マッギンがメンバーの変遷の激しいバーズというバンド末期に、オリジナル( デビュー時の )
メンバーでの再結成をして二つのバーズを並行活動させようとした…結果、本家末裔のメンバーが反発し
本家が解散してしまう…オリジナル・メンバーの編成でやり残したことは、とても多かった
各メンバーが楽曲を持ち寄って民主主義的な作りになっているが、そのへんの" オトナな人間関係 "が
クリエイティヴィティを刺激しなかったのかもしれない
ぶつかりあって相手をねじ伏せるような緊張感は残念ながら無い
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの灰汁を抜きまくったようなウェスト・コースト・ロックだ