Jazz、Soul、Rockといった要素を独自の解釈でモダンにアルバムする
フェイゲン節をより高いクオリティの高い音質で提示した作品群
1993年リリースで日本語の" カマキリ "とギリシャ古典文字" イリアス "の英語表記である" イリアッド "
を掛け合わせたというタイトルが印象的な本作は、ザ・ニューヨーク・ロック・アンド・ソウル・
レビューのプロジェクトで久々に共演を果たしたことをきっかけに、ドナルド・フェイゲンとウォルター
ベッカーがスティーリー・ダン活動休止後初となる共同制作を行った作品でもあるドナルド・フェイゲン
のソロ2作目、ランディ・ブレッカー含む総勢11名のホーン・セクションの仕事ぶりも必聴である
この後フェイゲンはスティーリー・ダンを再結成してライヴ活動をはじめ、以後のアルバムはライヴでの
演奏性を反映したものになっていくので、計算され尽くしたような緻密なサウンドという面では後退する
§ Recorded Music §
1 Trans-Island Skyway - トランス-アイランド・スカイウェイ
2 Countermoon - カウンタームーン
3 Springtime - スプリングタイム
4 Snowbound - スノウバウンド
5 Tomorrow's Girls - トゥモローズ・ガールズ
6 Florida Room - フロリダ・ルーム
7 On the Dunes - オン・ザ・デューンズ
8 Teahouse on the Tracks - ティーハウス・オン・ザ・トラックス
§ Personnel §
Donald Fagen - ドナルド・フェイゲン( Key,Vo )
Walter Becker - ウォルター・ベッカー( B,G )
Randy Becker - ランディ・ベッカー( Trum )
Comelius Bumpus - コーネリアス・バンパス( Sax )… etc
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スティーリー・ダン=ドナルド・フェイゲンのアルバムの中ではそれほど人気がないアルバムだが
彼らは" 彩( エイジャ )"以後、緻密に計算された完成度の高いサウンドに磨きをかけてきたが、その
磨き方が極限まで達し、このアルバムになると参加ミュージシャンにはすべてコンピュータに匹敵する
ほどの正確さが要求され、まるで打ち込みのようにも聴こえる演奏になっている
メロディが後退し人間的な情緒の面がバッサリと切りさられているようにも聴こえる
だいたい" 彩 "あたりを彼らの最高傑作とする人が多いのは、" ガウチョ "以後のサウンドの磨かれ方に
ついていけず、まだ人間的な暖かみが残っていた" 彩 "あたりが一番好みに合うという人が多いからだろう
楽曲はスティーリー・ダンの変態的コード進行から、前作でもみられたレゲエのようなシンプルなノリの
曲に興味が移っているようだが、それでもフェイゲン節は健在で、声の調子がよかったらと思わせる
メロディの佳曲がそろっている
ひねくれ度が薄まり開放的になった曲に合わせて演奏もリラックス感あるものになり、前作のように
人間がマシーン化しているような超精確な演奏は息が詰まるので、この作品のほうが聴きやすい
ウォルター・ベッカーのレイドバック感ある演奏も全体の雰囲気に寄与していて、スタジオ・ミュー
シャンのビッグ・ネームに頼らなくても、彼の出番が増えた
AORの大名盤" ナイトフライ "から11年を経ての作品で、プロデュースはウォルター・ベッカー、楽曲
アレンジ・サウンド、いずれについても完璧主義的、潔癖、職人的なドナルド・フェイゲン、この作品は
11年のブランクといい、収録曲といい良くも悪くもドナルド・フェイゲンの完璧主義的な志向が極限まで
出ているし、アレンジやサウンドについては完璧だと思う
古き良きソウルを現代風にしたような" カウンタームーン "、メロウなグルーヴとジャージーなギターが
心地よい" スノウバウンド "、ゴスペル風コーラスが絡むソウル風な" トゥモロウズ・ガールズ "
ジャージーな雰囲気の心地よいスローチューン" オン・ザ・デューンズ "などが気に入っっているが
楽しめるようになるまで期間を要した手強い作品でもある