シド・バレットがレコーディング中に脱退
バンドにとって危機的な状況で制作されたアルバム
前作のデビュー・アルバム" 夜明けの口笛吹き "が高い評価を得たものの、ソング・ライティングで
中心だったシド・バレットは、過剰なドラッグ摂取のためにまともな状態ではなかった
そこでバンドは新ギタリストとして旧友のデヴィッド・ギルモアを迎い入れた
シド・バレットはソング・ライティングに専念し、デヴィッド・ギルモアをライヴ用のギタリストと
して起用する構想であったが、結局アルバム制作段階でシド・バレットはバンドを離脱する
§ Recorded Music §
1 Let There Be More Light - 光を求めて
2 Remember Day - 追想
3 Set the Controls for the Heart of the Sun - 太陽讃歌
4 Corporal Clegg - コーポラル・クレッグ
5 A Saucerful of Secrets - 神秘
6 See - Saw - シーソー
7 Jugband Blues - ジャグバンド・ブルース
§ Band Member §
David Gilmour - デヴィッド・ギルモア( G,Vo )
Nick Mason - ニック・メイスン( Ds )
Richard Wright - リチャード・ライト( Key )
Roger Waters - ロジャー・ウォーターズ( B,Vo )
Syd Barret - シド・バレット( Vo,G )
全体的には、前作に引き続きサイケデリック路線を継承している形であるが、アルバム収録曲ごとに
レコーディング参加メンバーが異なっている
しかし、シド・バレット脱退という事態のとおり、シド・バレット抜きのピンク・フロイドの方向性を
示したアルバムでもある
シド・バレット脱退後のバンドは、シド・バレット在籍時にヒットした" シー・エミリー・プレイ "の
ようなシングルを作り続けるが、いずれもヒットには程遠い失敗に終わっている
プローデューサーのノーマン・スミスはレコーディング終盤になり" レコーディングのご褒美に、
アルバムの12分だけ自分たちの好きなようにしてよい "と言ったという
そしてバンドが完成させたのがタイトル曲" 神秘 "であり、新加入したデヴィッド・ギルモアの貢献も
" 神秘 "であった
これはバンド全員によるクレジットであるが、実質的な曲作りはデヴィッド・ギルモアである
( 曲の構成はロジャー・ウォーターズとニック・メイスンの手による )
建築家出身の2人は、まるで何かを設計しているかのごとく、1枚の紙に盛り上がりや起伏といった
構成を書き上げていったという
12分近いインストゥルメンタルであるこの曲は" 起承転結 "が明快な曲で" 戦争 "を表現した4部構成の
作品になっている
" 太陽讃歌 "はロジャー・ウォーターズによる作品であり" Set the Controls for the Heart of the Sun "と
いう曲名はウィリアム・バロウズの小説から、歌詞は中国の詩からとっている
ピンク・フロイドで唯一、シド・バレットを含む5人のパートが録音されている曲であるが、完成は
シド・バレット脱退後である
宇宙的な何か、あるいは根源的な何か、そんな雰囲気に入れ込んでいたことが実にわかりやすく
作られている
シド・バレットからギターをバトンタッチしたデヴィッド・ギルモアは、またメロディやソロよりも
効果音的なプレイが多く、ロジャー・ウォーターズのベースとリチャード・ライトのピアノ、オルガン
がリードする展開が多い
シド・バレット主導の" 夜明けの口笛吹き "と比べると、カラフルさと危なっかしさが同居したギリギリ
の楽曲であり、ポップさは当然ながらない
このアルバムが貫いているテーマは" 鬱病の道化師 "とでも言い表せそうなダルさと虚無感…
早くもシンセサイザーを導入していて、アレンジが前衛的だったりするのも" らしい "
いずれにしても、女子ウケ度…0%
大メジャーなのに、本質は" コレッ "というのがこのバンドの面白いところ
狂気に陥る前の" 病気 "といった感じのアルバム…全英9位を記録している