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Ultimate Music Album - 極 -


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Pink Floyd - Atom Heart Mother:原子心母 -

Pink Floydがメジャー・バンドへ脱皮するきっかけとなったアルバム
コンセプト・アルバム志向が" Atom Heart Mother "で確立される

 

プログレッシブ・ロック・バンドピンク・フロイドが1970年にリリースした5thアルバムで、乳牛の

ジャケットも強烈な1枚である

邦題は直訳の" 原子心母 "だが、この邦題もまた、日本におけるピンク・フロイドの認知度を飛躍的に

向上させた

この一見不可解なタイトルは1970年当時、原子力電池式心臓ペースメーカーが実用化され実際に妊婦に

埋め込まれた、というニュースに由来している…" 原子の心臓で生きる母親 "といったところか

メジャー・バンドへと脱皮はしたが、メンバー自身この作品に対する評価は低く、ロジャー・ウォー

ターズは" 二度と聴いてほしくない "、デヴィッド・ギルモアは" ガラクタの寄せ集め "と語っている

確かにこの後のピンク・フロイドの作品の圧倒的な完成度に比較すると統一感がなく、散漫な印象を

受けるが、ピンク・フロイドを代表する名作でもある

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§ Recorded Music §
1 Atom Heart Mother - 原子心母
 ⅰ Father's Shout - 父の叫び
 ⅱ Breast Milky - ミルクたっぷりの乳房
 ⅲ Mother Fore - マザー・フォア
 ⅳ Funky Dung - むかつくばかりのこやし
 ⅴ Mind Your Throats,Please - 喉に気をつけて
 ⅵ Remergence - 再現
2 If - もしも
3 Summer '68 - サマー'68
4 Fat Old Sun - デブでよろよろの太陽
5 Alan's Psychedelic Breakfast - アランのサイケデリック・ブレックファスト
 ⅰ Rise and Shine - ライズ・アンド・シャイン
 ⅱ Sunny Side Up - サニー・サイド・アップ
 ⅲ Morning Glory - モーニング・グローリー

§ Band Member §
Roger Waters - ロジャー・ウォーターズ( Vo,B )
David Gilmour - デヴィッド・ギルモア( Vo,G )
Richard Wright - リチャード・ライト( Key )
Nick Mason - ニック・メイスン( Ds )

 

Atom Heart Mother

Atom Heart Mother

 

 

プログレッシブのアイコンとして燦然と輝き続ける怪物作品

でも先悦すぎることはなく、金管によって演奏される主題部を作曲できたときにこのアルバムの成功は

約束されたようなものだった…主題部が登場するのは3回

しかも3回目の登場が巧妙で、金管は裏メロを演奏するのみなのだ

肝心な主題部は聴く側の脳に刷り込まれているので、あたかも自分が主役で演奏しているかの錯覚に陥る

主題部の消えた後をつないでいくのが、リチャード・ライトのオルガンとデヴィッド・ギルモア

ブルース・フィーリング

つまりフロイドはカタルシスの部分を管弦楽に任せ、自分たちは進行役に徹するという方法を思いついた

わけである

一つ一つの音の完成度を高める一方で、一曲一曲をわざわざ未完成に仕上げ、全体としてすべてがボヤ

ける仕組みになっている

 

 

Fat Old Sun

Fat Old Sun

  • provided courtesy of iTunes
 

 

タイトル曲の" 原子心母 "は、オーケストラと共演した20分以上にわたるインストゥルメンタルで、洗練

を欠いた金管の音が朴訥としていて、その鈍重さがいかにも乳牛の悠揚揺るぎない歩みを連想させる

そして幕開けの演奏が一段落すると、ロジャー・ウォーターズのベース、リチャード・ライトの温かい

オルガンを伴奏にしたチェロ・ソロ…つかの間の美しいトリオである

そして、チェロからデヴィッド・ギルモアへ移行、最初は優しく爪弾き、次第に歌うギルモアの

全キャリアの中でも屈指の名演を聴かせてくれる

男性・女性のコーラスが高らかに声を交わらせギターが朗々と響く

一貫してロジャーのベースとニック・メイスンのドラムは世界の屋台骨を支えている

終盤は再び冒頭のテーマが回帰し、楽団との絶頂を迎えて締めくくられる

24分間、最後まで飽きさせることがないピンク・フロイド屈指の名曲である

 

" If( もしも )"はロジャーの曲で、穏やかな弾き語り

ともにバンドを創設した同士でありながら、自分は決して追いつけない狂気の天才シド・バレット

対する思いが綴られている

" もし僕が善人だったら、これまで以上の君と話し合うだろう "とか" もし僕が狂っても頼むから君の

脳の回路を繋がないでくれ "という歌詞からは、シドへの嫉妬心や一線を引いた距離感など、常に背中を

追い続けてきた" 凡人 "ロジャーのさまざまな思いが垣間見える曲になっている

最後の" アランという男のサイケデリックな朝食 "…目玉焼きを焼いているようなジューッと香ばしい音

マーマレードを塗った食パンを頬張りむせ返る男の嘆き…どこかコミカルで、それでいて聴かせる名演を

さりげなくやってのける

シド・バレット脱退後、何枚かのアルバムを発表したもののアイディアは豊富にあるけど、たくさんの

人が楽しんでくれるバンドとしては今ひとつ足りない、という状態だったピンク・フロイドがメジャーへ

脱皮するきっかけとなり、次作以降に決定的になる

意外にファンキーでポップなコンセプト・アルバム志向がこの" 原子心母 "で確立された